新入社員のみなさんが5月病になろうかというこの時期、「夏用スーツ」みたいなのが売り出されます。コロナ禍以降、スーツの売上は落ち込み気味だったのが、なんだかかんだ結構回復してきたという話も聞きますし、実際高価格帯のスーツが売れてるなんて記事も見かけました。

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▼「AOKIの1着8万円「金のスーツ」が好調 「計画比135%」も売れたワケ」(IT media news)
紳士服のAOKIが2023年10月に発売した「金のスーツ」の売れ行きが好調だ。1着8万円台の高価格帯商品でありながら、当初の計画比に対して135%で推移している。物価高などで支出を抑える動きもある中、なぜ順調に売り上げが伸びているのか。

ただ一方で、データ的にはそこまで好調でもないという話もあります。

▼「スーツ離れ加速の中で青山とAOKIが選んだ生き残り策は?」(集英社オンライン)
コロナ禍を経てスーツ離れが加速した。帝国データバンクによれば、上場紳士服7社のスーツ事業の売上高は3600億円。回復基調にあるとはいえ、コロナ禍前の水準に戻り切ってはいない。販売店の数は現在約2300で、ピークの2017年度と比較して700店舗も減少するなか、業界トップの青山商事とAOKIホールディングスの方向性に大きな違いが生じている。


「青山商事」は2024年3月期の売上高を1945億円と予想している。「AOKIホールディングス」は1877億円だ。その売上差は70億円を切った。コロナ禍前の2019年3月期は青山が2503億円、AOKIは1951億円だった。かつては550億円以上の差が開いていたのだ。

営業利益率においては、すでにAOKIに軍配が上がっている。第3四半期の時点で青山は3.3%。AOKIは5.4%。勢力図が塗り替わろうとしているのだ。

スーツ市場にも変化の兆しがある。既製品である “吊るし”からオーダースーツに注目が集まるようになった。

「ユニクロ」は2022年3月からオーダーメイド感覚でスーツを選べる「UNIQLO CUSTOM ORDER」をスタートしている。ニュースやインターネットでもオーダースーツに関する記事を頻繁に目にするようになった。

若年層向けのオーダースーツショップを展開する「KASHIYAMA」は、2022年の購入者数が2019年比で1.4倍に増加した(「コロナ禍におけるスーツ市場のトレンド変化」)。20代以下の購入比率は39.1%で、2019年は18.8%だった。20.3ポイントもの増加である。
ただし、オーダースーツがコロナ禍をきっかけとしてトレンド化したわけではない。インターネットの検索需要を調査するGoogleトレンドで「オーダースーツ」を調べると、2019年10月に検索数の天井を迎えている。

つまり、オーダースーツサービスが多数登場したことで競争が激化。手頃な価格になっていたために、すでに人気化していたのだ。そこにコロナ禍が加わって既製品の需要が減退し、相対的にオーダースーツが目立つようになったというのが正しいだろう。

Googleトレンドを見る限り、オーダースーツの需要は全盛期の7割程度で推移している。需要が右肩上がりで旺盛に伸びているわけではない点は、青山とAOKIの行く末を占う上で極めて重要だ。 

上記の記事は丁寧にデータを追いかけていて、かなり興味深いです。オーダースーツの売上も、この物価高の中最盛期の7割り程度ということですから、最近聞こえてくる「オーダースーツが流行っている!」というのも若干、業界のメディア戦略的なところがあるのかもしれません。

ただ、個人的には今の世の中、スーツを買うなら格安のオーダーにしたほうが良いと思っています。

理由として1番大きいのは、吊るしのスーツは身体にあわないことが多いから。

スーツはそもそも「誰が着ても見栄えがするように」、体型を隠しつつかっこよく魅せるような作りをしていると言われますが、肩幅、身幅、袖など細かなところで調整しないとシワが入って残念な感じになる、というのもまた事実です。既製品のスーツだとそのへん、どうしても手が回りません。

たとえば私は、身長に対して肩幅は狭く手が長いので、肩にあわせると丈が長くなりすぎるし、丈にあわせると肩がぶかぶかになります。そして、総丈や肩幅は、既成のスーツでもっとも弄りにくい。これが本切羽の袖なおしとかになると、少なくともスーツ量販店では絶対に直してくれないところです。

オーダースーツは、生地にさえこだわらなければ2万円~3万円くらいで作れる店が増えてきました。SADA、ビッグヴィジョン、DANKAN、ディファレンス、FABRIC TOKYO、Bref……。AOYAMAやAOKIのイージーオーダーラインもきちんとあります。吊るしのスーツでもこの辺の価格帯なら素材的には同クオリティですし、それなら身体に合うものを選んだほうが良いです。

2つ目の理由は、最終的に割安になるから。

既製品のスーツは、「直し」の価格無しで表示されています。たとえば19,800円のスーツがあるとして、AOYAMAならパンツの裾直しに800円くらい。ウェストで1400円、袖なおして2700円、ネーム入れて300円……。シック(パンツのあて布)や滑り止めをつけたりすると、プラス10,000円近く行くなんてことも少なくありません。

ところが、オーダースーツなら、まぁお店によりますが概ねこの辺の料金は無料です。そもそもウェスト、袖なんかはなおす必要がありませんし、着てみて合わないなと思ったら一定期間なら無料で再度なおせるところが多い。ネームはだいたい無料で入れてくれますし、シックなんかもそうですね。スーツを着用する際に有益なオプションをつけようとすると、生地が同程度のクオリティなら、オーダーのほうが最終的に安くなることが多いと思います。

最後に3つ目の理由。知識がつくから。

オーダースーツを作ると、いろいろな要素を自分で決めなければなりません。ベントをどうする、襟をどうする、ゴージラインどのくらいにする、タックは? ポケットは? ステッチは……。煩雑なように思われますが、こういうプロセスを通して、スーツの「見るべきところ」がどこなのか、ということを知れるわけです。自分が着ている服のデザインのポイントを知らないというのも、よくよく考えると恥ずかしい話じゃないですか。既製品のスーツだと、いくら購入してもそういう細かい部分を理解しづらい。オーダーしてみると、結構ちゃんとわかるようになります。

まぁそういうわけで、吊るし(既製品)のスーツよりオーダーしたほうが今はお得だよねという話でした。オーダーが既製品の2倍とか3倍するならまだしも、吊るしより安いくらいですからね……。時間がかかるという一点だけはどうしようもありませんが、それを除けば負けてるところは無い気がします。あえていえば、誰が見てもかっこいいと思えるデザインで作られている(貧相な体型にあわせちゃうとスーツがダサくなるかもしれない)のも欠点かな? でも、そこまで気にする人いないでしょ、たぶん……。