行きの電車の中のビジネスマンがスーツの話をしていて、「冬は総裏、夏は背抜き」みたいなことを言っていたんですね。ネット全盛期のいまは、ちょっと検索すればこの知識が微妙に違うということはわかるはずなのですが……みたいな蘊蓄でも良いのですが、この総裏と背抜きの話、スーツ店の店員さんに聞いたり、アパレル勤務の友人や、職人やってた叔父とその娘に聞いたりして得た知識をもとに、知っていると便利な必要最低限のことを書いてみます。自分のメモもかねて。(以前にも書いた記憶がありますが、アップデートされたので)

まず、背抜きと総裏とはどういうのかというと、見た目的にはこういうのです。

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要するに背中の裏地がついてるか否かですね。ついてれば総裏、背中の裏地がなければ背抜きです。わかりやすい。

で、これが「夏用・冬用」の目安にされるというのは、裏地=保温のため、という考え方によります。冬は暖かいほうが良いので総裏。夏は涼しいほうがいいので背抜き、というわけ。一説によれば、大丸のパターンオーダー「TROJAN」が大々的に取り入れて日本で流行したようです。まあ、夏にクソ暑くて湿気が高い日本にはあっていたのでしょう。見た目的にも涼しく見えますしね。

ただ、仕立屋さんからすると裏地というのは「生地を守る」のが第一。裏地がないと、生地が直接身体にあたるので傷みやすい。しかも汗も吸い込むから余計です。デリケートな生地であればあるほど裏地はつけた方が良い、というのが生地屋さん的な感覚なんだそうです。だから、夏でも冬でも総裏がおすすめだし、実際イギリスなんかでは総裏が基本であると。夏の気温が日本と全然違うイギリスと比べられてもなぁという感じはしますが。

他にも、「着心地を良くする」とく目的がある。まあ袖の裏地とかってあきらかに腕を滑らせるためにありますしね。ただ、それなら背中は関係ないんじゃないかなぁと思います。主な目的はやっぱり、生地の保護かな?

しかしそうなると、スーツを使っていて背中がどれほど傷むのかという問題が。ぶっちゃけ、袖や肘ほど傷まないんじゃないでしょうか。だとすれば、生地の保護というのは気休め程度と割り切ることもできそうです。

話はかわって、本来「総裏と背抜き」が夏冬の基準ではなかったのだとしたら、スーツの本場では何をもとに季節をわけているのか、気になりません? それがどうも、生地の目付(重さ)なんだそうです。目付が重い(280ぐらい~?)の生地が冬用。目付が軽いのは夏用、というわけ。目付って何やねんというと、要するに生地の打ち込みの密度のことで、目付が重い=生地の目が細かい(密度が高い)。そのぶん風を通さないし保温性も高いので、冬に向いているというわけです。

そして、日本のスーツメーカーは、おおむね夏用の生地で背抜きのスーツを作り、冬用の生地で総裏のスーツを作っています。だから、日本の既成スーツに関して言えば、背抜き=春夏向け、総裏=秋冬向け、という認識で間違っていないしそのほうがわかりやすいというわけですね。

ただ、以上のようなおおざっぱな知識があると、スーツをオーダーする際には少しバリエーションに変化をつけられます。

たとえば、目付が少し重めの生地(フランネルみたいなガチの冬用生地ではなく)を使って背抜きを作るとか、春夏の生地を使って総裏を作れば、オールシーズン行けるスーツができるでしょう。特に、質の良いウール100%生地を使っている場合は、春夏のつもりでも総裏にして生地を守る、という考えがよさそうです。

もっとも、見てる側に同じような知識がなければ、「あの人夏なのに冬用のスーツきてる……」とか「冬なのに背抜きのスーツとかバカじゃない?」みたいに、季節感がない人だと見なされる可能性もあります。ビジネスウェアとしてのスーツは「見られてナンボ」みたいなところもあるので、周囲がその辺気にするようなら、あんまり知識先行で「常識」から外れたことはしないほうが良いかもしれません。

というわけで結論。日本の既成スーツにおいては、春夏=背抜き、秋冬=総裏で間違ってないということで良さそう。そっから先のごちゃごちゃした話は所詮自己満足なので、スーツ屋さんに何を言われてもまずこれを基本として押さえておくと便利だと思います。