第3回です。今回は、おそらく初めての方が最も悩むであろう、スーツの各種オプションについて。私自身が最初に戸惑ったことや、「これはいらんかったな」と思った経験などをもとにしたあくまで「初心者向け」の(しかも割と安く済ませようという人に向けた)おすすめであって、オーダー中級・上級者の方からすれば「それはちょっと」というところもあるかもしれませんがご容赦ください。

このシリーズ、「スーツを買おう/作ろうと思っている人にはそれなりに有用な話にする」、というコンセプトで書いてきましたが、結構ご好評頂いているようで個人的には嬉しくε-(´∀`*)。個別メッセージとか久々に頂きました。ありがとうございます。

その1→こちら
その2→こちら

オーダースーツを作る気になった、店も選んだ。さあ行こう! と行ったあとで最も悩むのがスーツのディテールです。初めて、ないしはそれに近い状態でスーツをオーダーするときの基本的な考え方として、私が最もしっくりくるかなというものをご紹介しておきます。基本軸と知識があれば、あとはご自分の好みにあわせて微調整ができると思いますので。

最初に、オプションはほんとうにいろいろあるしお店によっても違います。ですから、最低限押さえておくべきこと+押さえておくとお得なことに絞って(それでも結構長くなりそうですが)ご紹介します。
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あと、初心者向けということもあるので、余計なものはつけません。たとえばベストつけて3ピースにするとか2パンツにするとか、そういうのはナシ。上下セットのスーツを1着、できるだけお安く、というコンセプトです。先に言っておくと、パンツの折り目加工以外有料オプションは考えていません。そして、こういうのを考えるのが面倒な人はONLYのミニマルオーダーかThe Suit Companyで仕立てると、選択肢が制限されているおかげで悩まずに済みます。

では、ざっくり見ていきましょう。


1.スーツの色・柄
ハッキリ言って用途に依ります。礼服としても使うつもりなら濃紺無地1択です(ただ、お葬式用ならまっ黒にしてください。柄ダメ、光るのもダメ。ここでいう礼服なりフォーマルなりというのは、どちらかというとハレの舞台を想定しています)。その他ある程度改まった場面での使用を想定しているなら、下のようになるでしょうか。

★5 :濃紺無地
★4 :紺無地(ちょっと明るめ。ライトネイビー)
★3 :紺のシャドーストライプ/シャドーチェック(いわゆる織柄)
★2 :チャコールグレー/ダークグレーの無地、紺のストライプ系
★1 :その他

一方、ビジネス等での普段遣いやお店でちょっと接客する、子どもの授業参観で人前に行く……みたいな用途で考えている場合はちょっと変わります。

★5 :紺のシャドーストライプ/シャドーチェック
★4 :紺のストライプ系
★3 :濃紺無地、紺無地、チャコールグレー/ダークグレーの無地
★2 :黒のシャドーストライプ/シャドーチェック
★1 :その他

要は、紺の単色系選べば間違いないということです。

なにせ日本のビジネスシーンにおいては紺(暗めの)が基本。世界でもこんなに紺が好き(ギャグじゃないですよ)なビジネスマンいるのかってくらい紺まみれです。シンプルで使っている糸の色は少ないほうがフォーマル感がありますが、織柄までは「無難なオシャレ」として許容される雰囲気があります。ちなみに「織柄」というのは、糸の色を変えるのではなく織り方を変えることで模様を作っているやつです。

こういうのが織柄(シャドーストライプ)
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下がふつうのストライプ。糸の色が変わっていますね。ストライプ柄はフォーマルなほうですが、色を多く使うぶん洒落っ気のある装いとみなされます。ちなみに線の太さによってペンストライプとかチョークストライプとか呼び方が変わりますけど、まあストライプで良いと思います。
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シャドーチェックのスーツとかは遠くで見るとちょっと光沢感があって、近づくと模様が入っているのがかなり小洒落た印象を与えてくれると思います。
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あと、これはちょっと余計な情報かもしれませんが、ガチの無地はかなり素材の質感が出ます。ポリ混紡で本当の紺無地にすると、化学繊維独特のテカリみたいなのがはっきりと見えて、まあそういうのが結構好みだという人もいるので一概には言えませんが、一般的にはちょっと安っぽさが出る、と言われています。

仕立てあがると生地の段階より光って見えるものが多いので、生地を見て「綺麗だなー」と思ったポリ混紡生地が、仕立ててみると思ったよりテカテカしてるのって最初の頃結構あったんですよね。ハッキリとした織柄を入れないタイプの無地を選ぶなら、素材はウール100%が無難かもしれません。まあ、私はあんまり気にしないんですけど(笑)。


2.生地の素材
これも用途によります。普段遣いで激しく使うなら、ウールポリ混紡が良いです。何ならちょっとポリエステルが多めのほうが丈夫ですね。もうこの時点で「スーツ通」の方々の好みからビンボール気味に外れてると思うのですが事実としてそう思うので。

お店(特に吊るしの)に行くとウール100%が高級なもの、「良い」スーツの証ということを言われます。あと、番手が上(super120'sとかいう表記です)のやつが「良い」と。ただ、その「良い」っていうのは誰にとってどんなふうに「良い」のかって話ですよ。少なくとも、初心者にとって使いやすくて良い、という話ではありません。

まあウール100%は高価だし、軽いし通気性も保温性も良い。あと見栄えも良くて分かる人には分かる高級感が出せる。そういう良さがあるのは間違っていないのですが、ポリ混紡にはまた別の良さもあるし、ウールの欠点というのもあります。

実際、リュックを背負う人はウール100%やめたほうが良いです。肩と、リュックのあたる腰の上がすぐ擦り切れます。いやこれホントにお店であんまり言われないんですけど、高品質のウールって擦れに弱いんですよ。価格と耐久性が反比例する感じ。糸が細いんだから当然といえば当然なんですが、super130'sの細番手のスーツ着てリュックとか背負ってるとワンシーズンでつるつるです。まあだから、いないと思いますけど、お高いスーツ着て性行為とかもやめたほうが良いと思います。

あと、ウールは連投にも弱いので1度着たら2、3日は休ませる。できれば週に1回か2回の登板にする。使うたびにクリーニングに出したりせず、1シーズンに1回くらいでとどめる(クリーニングに出すとスーツは熱で傷みます)。ついでに虫さんはウール大好きなので、きちんと管理しないとすぐ虫食いの被害に遭います。そういう管理がちゃんとできないなら、最初はポリ混紡のほうが向いていると思います。

一方、ポリ混紡の素材は丈夫な反面、重いし、硬いし、経年劣化も早いです。特に最後のが厳しくて、天然素材のウールは経年「変化」という感じで味わいが出てきますがポリ混紡は単純に色あせたり生地のコシがなくなってヨレヨレになり、場合によっては破れやすくなり、まあ3~5年でおさらばという感じですね。年に1~2回しか出番のない礼服をポリ混紡で作ると、全然使わないうちにおシャカということもありえるので、こういう場合はウール100%(もしくはウール・シルク混紡とか)をおすすめします。

あとは、ストレッチ素材とか抗菌素材とかありますが、ぶっちゃけいりません。抗菌素材なんて効果まったく見えないですし眉唾だと思います。ストレッチは、確かに動きやすいところもあるんですがやっぱり「伸びる」んですよ。フツーに。だから、せっかく身体にあわせて作ったのに何度か着ているうちにダボッとしてくる。特に肘とか膝周りですね。型くずれするとだらしなく見えるので、最初ちょっときつめに作るとかそういう工夫が必要になります……が、高いお金払って(ストレッチ系素材はちょっと料金高めになります)そんなことするくらいならストレッチ素材にしなけりゃいい話ですよね。

長くなったのでまとめると、普段遣いならウールポリ混紡、改まった場面のみの登板になるならウール100%。ただ、そこそこ登板数多くなりそうでも紺無地とかにしてちょっと高級感出したいならウール100%もありかなと思います。

あと、春夏用か秋冬用か3シーズンか、みたいな話がありますがこれはもうその時々ですね。私は3シーズンが好きなので(というか夏はクールビズでスーツ着ないから)そればっかり選んでますが。


3.スーツの型
スーツの型はぶっちゃけ自分の身体との相性が第一。あとはお好み次第だと思います。細かく見ればなで肩とかいかり肩とかでシルエットがだいぶ変わる場合もありますので、まずはお店の人に相談。これがベストです。お店によっては肩パットが最初から入っているところとか、逆にパットを入れられないところもありますので。

また、スポーツをやっていたとかで胸板がめっちゃ分厚いとか、二の腕が太いとか、ふくらはぎが発達しているとか、いろいろな特徴があると思いますので、最初からこれ、と決めていかずにフィッティングでお店の人に選んでもらいましょう。何度かオーダーチャレンジして、自分の好みが出てきたらそれに合わせてもらう、で良いのではないでしょうか。


4.ジャケットの仕様(ボタン)
まず前のボタンですが、シングルの2ボタンにしましょう。ふつうがいちばん。

シングルかダブルかについては、よほど改まった場面に出るのでなければシングルで良いと思います。ダブルブレストは安くない追加料金取られるところが多いですし、作ってもあんまり出番はありません。ふだんのビジネスにダブルのスーツはちょっと気取りすぎの感じがしますしね……。

んで、ボタン。1ボタンはかなり特殊です。かなりカジュアル寄りのはず。
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段返り3ボタンは、こういう、1番上の襟の裏に3つ目のボタンが入ってるやつ。
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左の襟のところにボタンホールが見えるので、段返り3つボタンのスーツだなと分かるようになっています。
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おしゃれだとは思うんですけど、アメトラの仕様です。いまの日本のスーツは基本、イギリスかイタリア仕様が多くてまわりのグッズもそういうののほうが揃えやすい(特に靴)ですし、あとアメリカ人のような高身長でガッチリした体型の人のほうが似合う仕様です。何か特別なこだわりがないなら、最初は2ボタンで参りましょう。

袖口は、フォーマルなら3つボタン。ビジネスなら4つボタン……と言われますが、まあどっちでも良いと思います。だいたい、他人の袖のボタンの数数える人なんてよほどの暇人です。
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参考画像:「【テーラーが解説】スーツの袖ボタンの数を変える、本当の意味とは?

本切羽(ほんせっぱ)という、実際にボタンを留めるかたちにするのがオーダースーツの証だ、などという説もありますが、個人的にはここらへんマジでどうでもいいと思います。悪く言うつもりはありませんが、本切羽にするのは追加料金がかかる場合がほとんどなので開き見せで良いでしょう。
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重ねボタンにするか並べボタンにするかは、並べボタンが良いと思います。理由は2つ。まず、一部の店舗では重ねボタンにすると追加料金が発生するから。もう1つは、重ねは「イタリア風のオシャレ」であってかなりカジュアルな感じになるのでフォーマルな場に適さないから。要するに、ビジネスなりフォーマルなりで使う時に制限がかかりやすくなります。結婚式の二次会専用のオシャレスーツとか作るときなら良いかもしれません。

あと、ボタンの種類についてですが、無料のボタンで構わないでしょう。色は、ジャケットが濃い色なら同系色のちょっと薄い色。逆にジャケットが薄い色なら同系色のちょっと濃い色か、黒。オーダースーツをすると、天然素材のボタン(主に水牛)を勧められますが、初心者が手を出すのはやめたほうが良いと思います。

まず、高い。ボタン10個とか15個で1000円とか1500円とか、払おうと思いますか? 次に、なくしたときが大変。天然素材なので換えが効きません。似たような色・模様のを探すだけで一苦労です。その店、プラスチックボタンだとまったく苦労がありません。最後に、これを言ったら身も蓋もありませんが、ボタンなんてほとんど誰も気にしません。果てしなく自己満足でしかない世界です。オプションセットとかで水牛釦にできるならして良いかもしれませんが、そうでないならわざわざ選ぶ意味は無いと私は思います。……ただ、私の友人は結構水牛釦好きで作っているんで、オーダー好きの人はこだわりたいところなんでしょうね。

私は水牛釦をあえて選択したことが一度もありません。ホントにフォーマル用に作ったやつだけ、下品な光沢を抑えるために水牛ボタンにしましたがあんまり効果は実感できてないですね……。


5.ジャケットの仕様(ベント)
ジャケットの後ろの切れ目のことを「ベント」と言います。一般的には三種類。センターベント、サイドベント、ノーベントです。

フォーマルな場面でしか使わないスーツならノーベントが良いでしょう。ただ、フォーマルと言ってもほんとうにパーティーとか式典とかそういうレベルのフォーマルです。ちょっと偉い人に会いに行く、とかだとノーベントは気取りすぎの印象があります。

センターベントとサイドベントは、まあどっちでも。好みの問題ですね。
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一応、センターベントがアメリカ流、サイドベントがイギリス流みたいなこと言われますが、いまそこまでハッキリした区別ないんじゃないかなぁ……。サイドベントのほうがちょっと動きやすくて、座るときとかにシワがよりにくいってのはあると思います。あと、既成のスーツはセンターベントが多いので、サイドベントだとちょっとだけオーダー感出るかな? というくらい。


6.ジャケットの仕様(襟とポケット)
ポケットは基本、フラップでまっすぐか斜め(スランテッド)かの選択になると思います。フタがついていないアウトポケットはかなりカジュアルになるので、「仕事用」で考えている今回は除外。
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角度がついたスランテッドのほうが、腰回りが細く見えやすいです。ただ、フォーマルな場面ではまっすぐなポケットが基本となります。あと、スーツの丈を短くすると斜めポケットは下が窮屈に見えてしまいますね。というわけで、原則まっすぐのポケットが良いと思います。ただ、ちょっとオーダー感が出せるのとさっき言った腰回りがスマートに見えることを考えると、スランテッドも悪くないんですけどね。

チェンジポケットは、有料ならまず却下。brefみたいに無料ならつけてもいいかなレベルですけど、知らない人からしたらポケットが増えてる変な服と思われかねないので、「イギリス風のトラディッショナルなスーツにしたい」みたいなテーマ的なこだわりがないならナシが無難です。

スーツの襟(ラペル)はノッチドラペル(ふつうの襟)でいいんじゃないかなと思います。下の画像の上側です。下側のラペルはピークドラペル、あるいは剣襟なんて呼ばれます。襟の切れ込み部分、デカいほうが上向きにとんがってますよね。
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ピークドラペルはもともと、フォーマルな場面とかダブルブレストとかそういうかなりかっちりしたスーツの襟だったようですが、最近は「オシャレ」としてシングルにも取り入れる人が増えてきたようです。スタンダードからはずれるので既成のシングルスーツではまず見かけませんし、ちょっと華やいだ感じもあってオーダーならではのオシャレという感じはするのですが……ぶっちゃけ、スーツの襟をそんなに気にする人いないですよね?

分かる人からすれば、シングルスーツの襟をピークドにしていることが「おしゃれ」ととられるか「キザ」と思われるかはわかりません。ファッションとして浸透してきたというレベルにも感じませんので、古風な考えの人なら批判的に見てくる可能性大。そういうリスクを考えると、あえてピークドにする意味はないでしょう。


7.ジャケットの仕様(裏地)
素材は、よく「キュプラが良いです」と言われます。まあ良いんですけど、追加料金かかる場合がほとんどだし、そこまで着心地に大きな影響がでるものでもないので初心者があえて手を出す必要はないです。ポリエステルで行きましょう。以上。

色は、特段の好みがなければボタンと合わせるのが良いと思います。表地が濃い色なら、薄めの同系色。薄い色なら濃い目の同系色。んで無地。柄を入れたいなら、ヘリンボーンかドットですかね。まあ裏なんで誰も見ないし、ちょっと派手な色(ネイビーならワインレッドとか)を選ぶのもオシャレだし、「オーダーっぽい」感じはするんですけど最初は無難なので良いのかなと。よく履く靴の色が決まっているなら、靴の色に合わせるというのもありますけど黒になっちゃったらアレですし。こんなこと言ってますが、私は紫が好きでしょっちゅう紫をチョイスしてます(笑)。

あとオーダーの場合必ず、総裏か背抜きか、という選択肢が出てきます。これは、基本総裏をおすすめします

これが背抜き。背中のところの裏地が抜けています。軽く、通気性がよくなります。
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こっち総裏。
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最近は情報発信が多くなり、「誤った認識」は正されていますが、いっときは「背抜きは春夏用のスーツ、総裏が秋冬用のスーツ」と言われていました。私の職場でも、ファッションに詳しい女性がそんなことをよく言っています。

ただ、これは既製服メーカーがわかりやすさのために言っていたことであって、もともとのスーツは基本春夏だろうが秋冬だろうが総裏。スーツのジャケットは基本裏地がこすれるので(脱いで置くときは、裏地が表にくるようにして地面に置く)、生地を傷めないという機能的な側面が大きいのだそうです。総裏と背抜きで値段は変わりませんので、それなら総裏が良いかなと思います。

あと、「台場仕立て」のオプションもあります。

この胸ポケットの部分にちょっと生地が飛び出したような感じですね。
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スーツの中でもよく擦れる部分なので補強になる……ということですが、裏だからあんま目立たないし、そもそもたいていオプション料金がかかるので、原則無視で良いんじゃないかと思います。私は基本選択しません。

ただし、「芯地」が絡んでくる場合はちょっと気をつけても良いです。

スーツの芯地というのは、表地と裏地を張り合わせるときの骨組みみたいなもので、吊るしのスーツや安価なオーダースーツだと基本は不織布とかを接着剤でひっつけた「接着芯」になります。ただ、所詮接着剤なので汗水に弱く、熱にも弱く、経年劣化もしやすいです。要するに、接着芯のスーツは型崩れしやすいスーツということになります(ほんとうは、軽かったり安かったりというメリットもあるのですが)。一方、ちゃんと天然素材の毛(馬の毛だったかな?)を縫い付けた芯地を使っているものを「毛芯」と呼びます。

ポリ混紡とかの生地で「数年でチェンジ」を想定しているなら全然それで良いというか、むしろ高い料金払って毛芯にする意味がわからないのですが、フォーマル目的で、質の良いウール100%素材を使った……なんて時には接着芯だと勿体ない(放置してるうちにヨレヨレになったりする)気もします。今回は初心者向けオーダーということなので芯地にはこだわりませんが、台場仕立てを選ぶと芯が毛芯仕立てになる、というお店は結構多いです(ビッグヴィジョンやダンカンは少なくとも)。逆に、毛芯を選ぶオプションってなかったりするので、芯を接着芯から変更したい場合には台場選べばいけるかも、みたいなのは知っておいて損しないかもしれません。


8.パンツの仕様
これで最後です。パンツの仕様。

まず、タック。タックというのは、パンツのウエスト部分の折れ目のことです。スーツの基本はワンタック。タックを入れるとスリム感が損なわれることもあり、一昔まえは「タックを入れるのはおっさん」という認識があってノータックが激はやりしていましたが、最近はワンタックも人権を得てきたようです。
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タックが入っているほうが動きやすいこともあるし、もともとのスーツのあり方としてワンタックが正道ということもあるので、足を細く見せたいとかスーツ自体を細身で絞ったとか、そういうことがなければワンタックで良いんじゃないかと思います。ただし、「世間一般のスーツのふつう」は、おそらく今もノータックよりです。そっちに合わせるのもアリかな。

パンツの脇ポケットが、斜めかまっすぐかL字かを選べる場合もあります。個人的には、絶対に斜めをおすすめします。というのも、L字やまっすぐのポケットにすると手を入れにくい。あと、肘に直線的な動きを要求されて携帯電話の出し入れが非常に面倒です。パンツのポケットに何も入れない人なら構わないのですが、何か入れる可能性があるならば斜め1択でしょう。

裾は、シングルかダブル。下の画像だと、左のネイビーがダブルで右のグレーがシングルですね。
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見ての通り、シングルのほうがスッキリ見えます。あと、よりフォーマルなのはシングル。ダブルはどっちかというとカジュアル寄りです。ガチガチのフォーマルウェアなら、シングルのほうが良いでしょう。

ただ、ちょっとパンツを短めに履く場合、ダブルにしたほうがバランスよく見える場合が結構あります。あと、グッドイヤー製法のがっしりした靴の場合はダブルのほうが映えるとか。

結局の所好みではあるのですが、ダブルにすると「スナップ式」と「縫い付け式」があって、これはお店によって違うので選べません。スナップ式のダブルというのは下のような感じで、スナップでポチッと留めてダブル加工しているんですね。
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上から見るとスナップがはっきりわかるのと、ちょっとダボッとした見栄えになるので(掃除は楽なんですが……)、個人的にはあまり好きではありません。私の場合スナップ式ですと言われたら、迷わずシングルにしています。

次に、あまり話題になりませんが「シック」。パンツで最もダメージを負いやすいのは、股の部分です。ここにあて布である「シック」を貼ることで、だいぶ補強されるんですね。

このシック、お店によって無料のところと有料のところがあります。たとえばbrefは小さいシックは無料。大きいものにすると有料だったかな……。それとは別に、パンツの裏地の素材を股のところまで伸ばしてくれたりもします(相談すれば)。ビッグヴィジョンはシック無料。

お店によって結構違うのですが、ふつうにオーダーしているだけだと特に何も言われない場合が多いので、「パンツの股の部分の補強とかできますか?」と訊ねるのが良いと思います。無料で補強できるなら、是非やっておきましょう。

最後、折り目加工。これに関しては、有料でもやっておくのが良いです。というのも、パンツの見た目は折り目で決まるからです。1000円~2000円くらいでピシッとした見た目が維持でき、かなり効果を実感できるのでおすすめです。ただし、ウールポリ混紡の場合、一般的なシロセット加工はあまり役に立ちません。繊維に樹脂を染み込ませる都合上、化学繊維だと表面で弾かれてしまうんですよね。お店によっては、「この加工はウール100%でないとあまり効果ありません」と止められます。

リントラク加工とか、スーパークリース加工と呼ばれる、折り目に樹脂を流し込むタイプのちょっとお高めの加工だと効果があります。しかも効果もだいぶ長持ち。お得お得。効果が切れた場合でも、街のクリーニング屋さんに頼めば同じ加工をしてくれることがありますし、オーダーしたお店に持っていって再加工をお願いできる場合もあります。



というところで今回はおしまいです。新春のセールを前に必要と思われる情報はこれでほとんど言ったかなという感じですが、最後はメッセージで頂いたご質問へのお答えとか、あとはお店ごとのもうちょっと詳しい情報なんかを掲載できればと考えています。