エロゲーのランキングって色々あるけど、どれ見たら一番参考になるかな? みたいな話を友人から受けました。それで思ったことをちょっとだけ書きつらねます。統計学などをやられていた方には当たり前の内容かもしれません。また、おおざっぱすぎて不正確な部分があれば、ご指摘頂けると幸いです。
個人のサイトさんは好みが別れるとして、大がかりなところでは先日、2ちゃんねるの葱板(エロゲネタ・業界板)の2011年度、ベストエロゲーが発表されました。その結果が、こちら。
『WHITE ALBUM2』がいろんな意味で圧倒的な感じですね。確かに、素晴らしい内容の作品であったと思います。けれど、そこまで一般ウケする話だったかな? というのも確か。誰もが思うように、こうしたランキングには統計をとる時点である一定のバイアスがかかっています。つまり、完全に一般的なランキングを提出することなど不可能です。
では、こういったランキングには意味が無いのかというと、そういうわけでもありません。無闇にランキングを参考にするというのは実質余り意味が無い行為だとは思いますが、ランキングからどのような層がどういった作品を好むのか、という傾向を読みとることは可能です。言い換えるならば、ランキングを利用するということは、そのランキングが意味するものを読みとることなわけです。
たとえば、「萌えゲーアワード」のランキングについて考えてみましょう。
あの場合、まず「萌えゲーアワード」に参加している作品からしか選ばれませんから、対象がすでに絞られています。「全てのエロゲー」から選ばれるわけではないのですが、それでも分かることはあるでしょう。
萌えゲーアワードの場合、製品についているパスワードを入力してランキングに投票するシステムです。一人確実に一票であり、中古品などではパスワード自体が無い、あるいは既に入力済みだったりもします。つまり、投票者の多くは新品で製品を購入した顧客、ということが言える。これはメーカー/ブランドにとって非常にありがたいお客様です。
また、投票することによって特に大きなメリットがあるわけではありません(萌えゲーアワードから景品が出たりはしますが、それ目当てという人は少ないと思われる)。けれど、アワードで受賞したブランドにとっては賞金も出るし宣伝にもなるしで、割とオイシイ。ですからこの企画に投票する人は、純粋にそのブランドを応援したいという場合が多いのではないか、と考えられます。
つまり、萌えゲーアワードの結果から分かるのは、それが面白いか面白くないかよりもむしろ、その作品なりブランドなりが、どれだけブランドにとって貢献度の高い顧客を掴んでいるか、ということになりそうです。もちろん、投票したくなるような面白さも含まれているでしょうけれど、実はそれ以上のものも見えていたのだ、と。
続けて、件の「葱板ランキング」について検討してみましょう。私自身は投票に参加していないので、不正確な内容が含まれるかもしれませんが、検討のためのサンプルデータですのでご容赦ください。
まず、この統計に参加するためには、普段ある程度以上2ちゃんねるに書き込みをしている人でなければならない、というルールがあるそうです。代理投票もあるそうですが、そこまでして投票する人がどのくらいいるかという問題も発生します。またそもそも、普段2ちゃんねるを見ている人が投票するのは当然でしょう。雑誌アンケートの場合だとまず、「購買層」が問題となり、次にその中でも積極的にアンケートに参加する層、というのが問われます。今回も同様にして考えると、まず「普段から2ちゃんねるを利用している層」でかつ、「書き込みやアンケートに積極的に参加する層」が母集団ということになります。ただ、それがどういう意味のバイアスになるのか(たとえば、年齢が若いとか、暇が多いとか、男性ユーザーが多いとか……)までは、ちょっと分かりませんね。
次に、投票内容を見て貰えば分かりますが、コメント数やコメントの長さもランキング要素となっています。つまりどちらかといえば、作品に関してコメントを付けたがるようなタイプ、批評の対象になりやすいような作品が高得点を獲やすいランキングであると思われます。そもそもランキングに投票しようという時点で、ある程度そういう傾向は高いのかもしれませんが。
とまあ、こんな風に統計データから何が読めるか、ということを色々と考えてやることで、ランキングも意味が出てきます。
『WHITE ALBUM2』については、評価と売り上げがアンバランスで、そのことについて疑問に思う声もでているようです。その原因が何であるかまでは分かりませんが、一つ言えることは、ランキングや批評サイト、ブログなどで情報を発信したがるようなユーザーに好まれる作品であった、ということでしょう。つまり、何かを語りたくなる/語りやすい、そういう作品だ、と。
そんなものは所詮売り上げとは関係ない空しい力だ、と思うかも知れません。けれど、たとえば五年後、十年後のことを考えればどうでしょう。製品は五年、十年したらどんどん新しいものにとってかわられてしまいますが、言説は別です。私を含めたいわゆる「語りたがり」の人は、凄いインパクトを受け取った作品のことを、十年後でも嬉しそうに語ったりするもの。そうなると、『WHITE ALBUM2』は、いつまでも色々なところで話題にのぼり、「有名なエロゲー」になるかもしれないと思います。
結局のところ、ランキングのような統計を利用する場合、そのランキングが意味するものは何なのかを考えると効果的に利用できる。そしてその「意味するもの」は、結果からよりもむしろ、統計を取る母集団のほうから演繹的に考えてやるのが良い。そんなお話でした。個人のランキングでも一応、同じことが言えるはず。統計の利用方法については、もっと細かいことが色々言えるとは思うのですが、複雑になりすぎて私の手に余るので、この辺りで撤退しようと思います。
それでは。
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個人のサイトさんは好みが別れるとして、大がかりなところでは先日、2ちゃんねるの葱板(エロゲネタ・業界板)の2011年度、ベストエロゲーが発表されました。その結果が、こちら。
『WHITE ALBUM2』がいろんな意味で圧倒的な感じですね。確かに、素晴らしい内容の作品であったと思います。けれど、そこまで一般ウケする話だったかな? というのも確か。誰もが思うように、こうしたランキングには統計をとる時点である一定のバイアスがかかっています。つまり、完全に一般的なランキングを提出することなど不可能です。
では、こういったランキングには意味が無いのかというと、そういうわけでもありません。無闇にランキングを参考にするというのは実質余り意味が無い行為だとは思いますが、ランキングからどのような層がどういった作品を好むのか、という傾向を読みとることは可能です。言い換えるならば、ランキングを利用するということは、そのランキングが意味するものを読みとることなわけです。
たとえば、「萌えゲーアワード」のランキングについて考えてみましょう。
あの場合、まず「萌えゲーアワード」に参加している作品からしか選ばれませんから、対象がすでに絞られています。「全てのエロゲー」から選ばれるわけではないのですが、それでも分かることはあるでしょう。
萌えゲーアワードの場合、製品についているパスワードを入力してランキングに投票するシステムです。一人確実に一票であり、中古品などではパスワード自体が無い、あるいは既に入力済みだったりもします。つまり、投票者の多くは新品で製品を購入した顧客、ということが言える。これはメーカー/ブランドにとって非常にありがたいお客様です。
また、投票することによって特に大きなメリットがあるわけではありません(萌えゲーアワードから景品が出たりはしますが、それ目当てという人は少ないと思われる)。けれど、アワードで受賞したブランドにとっては賞金も出るし宣伝にもなるしで、割とオイシイ。ですからこの企画に投票する人は、純粋にそのブランドを応援したいという場合が多いのではないか、と考えられます。
つまり、萌えゲーアワードの結果から分かるのは、それが面白いか面白くないかよりもむしろ、その作品なりブランドなりが、どれだけブランドにとって貢献度の高い顧客を掴んでいるか、ということになりそうです。もちろん、投票したくなるような面白さも含まれているでしょうけれど、実はそれ以上のものも見えていたのだ、と。
続けて、件の「葱板ランキング」について検討してみましょう。私自身は投票に参加していないので、不正確な内容が含まれるかもしれませんが、検討のためのサンプルデータですのでご容赦ください。
まず、この統計に参加するためには、普段ある程度以上2ちゃんねるに書き込みをしている人でなければならない、というルールがあるそうです。代理投票もあるそうですが、そこまでして投票する人がどのくらいいるかという問題も発生します。またそもそも、普段2ちゃんねるを見ている人が投票するのは当然でしょう。雑誌アンケートの場合だとまず、「購買層」が問題となり、次にその中でも積極的にアンケートに参加する層、というのが問われます。今回も同様にして考えると、まず「普段から2ちゃんねるを利用している層」でかつ、「書き込みやアンケートに積極的に参加する層」が母集団ということになります。ただ、それがどういう意味のバイアスになるのか(たとえば、年齢が若いとか、暇が多いとか、男性ユーザーが多いとか……)までは、ちょっと分かりませんね。
次に、投票内容を見て貰えば分かりますが、コメント数やコメントの長さもランキング要素となっています。つまりどちらかといえば、作品に関してコメントを付けたがるようなタイプ、批評の対象になりやすいような作品が高得点を獲やすいランキングであると思われます。そもそもランキングに投票しようという時点で、ある程度そういう傾向は高いのかもしれませんが。
とまあ、こんな風に統計データから何が読めるか、ということを色々と考えてやることで、ランキングも意味が出てきます。
『WHITE ALBUM2』については、評価と売り上げがアンバランスで、そのことについて疑問に思う声もでているようです。その原因が何であるかまでは分かりませんが、一つ言えることは、ランキングや批評サイト、ブログなどで情報を発信したがるようなユーザーに好まれる作品であった、ということでしょう。つまり、何かを語りたくなる/語りやすい、そういう作品だ、と。
そんなものは所詮売り上げとは関係ない空しい力だ、と思うかも知れません。けれど、たとえば五年後、十年後のことを考えればどうでしょう。製品は五年、十年したらどんどん新しいものにとってかわられてしまいますが、言説は別です。私を含めたいわゆる「語りたがり」の人は、凄いインパクトを受け取った作品のことを、十年後でも嬉しそうに語ったりするもの。そうなると、『WHITE ALBUM2』は、いつまでも色々なところで話題にのぼり、「有名なエロゲー」になるかもしれないと思います。
結局のところ、ランキングのような統計を利用する場合、そのランキングが意味するものは何なのかを考えると効果的に利用できる。そしてその「意味するもの」は、結果からよりもむしろ、統計を取る母集団のほうから演繹的に考えてやるのが良い。そんなお話でした。個人のランキングでも一応、同じことが言えるはず。統計の利用方法については、もっと細かいことが色々言えるとは思うのですが、複雑になりすぎて私の手に余るので、この辺りで撤退しようと思います。
それでは。