よい子わるい子ふつうの子2(仮)

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

ラノベ (レビュー)

C87『2次元メディア・コンテンツ研究』Vol.2の感想など

雨月さん(@udk91)を通して紹介して頂いた『2次元メディア・コンテンツ研究』Vol.2を、ようやっと読了しました。お礼も兼ねて感想など書いてみます。

3本の論考から成っていました。構成は以下。

 1.紙媒体最終話最速評論『結城友奈は勇者である』 ――タカヒロとStudio五組の勇者論―― (雨月)
 2.『楽園追放』 ――虚淵玄の問いかける楽園と人類の限界―― (雨月)
 3.ライトノベルの成功論2 ――小説家になろうから作家デビューして売れる本を書くための方法論―― (無想)

どれも興味深く拝読しましたが、『結城友奈は勇者である』と『楽園追放』は視聴していないので(ネタバレは気にしない)、「3.ライトノベルの成功論2」についてのみ言及します。

◆「ライトノベルの成功論2」 について
著者は無想さん(@musou_k)。

▼「1.はじめに」 (p.15~)
まず、全体の「前書き」や論考のサブタイトル、「はじめに」から、本書は研究・考察を狙ったものであり、基本的に「論」であるとみなして読みました。

論考冒頭の辞によれば、Webサイト「「小説家になろう」のランキング上位になるための必要な要素や、書籍化の成功に必要なことを考察し、最後に電子書籍の可能性について考えていく」のが狙い。結論は、「異性として異世界転生した俺は、異世界最強ハーレム人生を目指す!」になるのだとのこと。

▼「2.なろうランキングの上位になるための必要な要素」 (p.15~)
「小説家になろう」(以下「なろう」)のランキング上位になるために必要な要素として、論者は「なろう」累計ランキングBEST10を挙げ、そこから幾つかの要素をピックアップしていきます。たとえば、「転生前の経験・知識による無双」、「ステータスの表示」、「強大な魔力」、「ハーレムの形成」などです。リサーチ系の基本ともいえる方法ですが、しかし、私はここでけつまずきました。

理由は3つあります。(1)どういう判断基準で要素が選ばれたのかわからない。(2)その要素の中に挙げられている具体的な作品が適切だと思わない。(3)ほんとうにその要素が「ランキング上位になるための必要な要素」なのかについて根拠が書かれていない。

(1)についてですが、たとえば「ステータスの表示」という要素。累計ランキングTOP10の中(※『2次元メディア・コンテンツ研究』Vol.2 の時点では10位が『フェアリーテイル・クロニクル』だったが、2015年1月14日現在では10位が『転生したらスライムだった件』に変わっている。他は順位変更なし。ここでは論者が参考にしている『フェアリーテイル・クロニクル』を10位として話をすすめる)で、論者が触れているような意味でのステータス表示を採用しているのは、3位『異世界迷宮で奴隷ハーレムを』、5位『ありふれた職業で世界最強』、6位『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』、7位『盾の勇者の成り上がり』の4作品くらい。「ステータスかそれに類する要素を導入している」という程度ならわかるのですが、論者が言うように「体力や魔力などの数値、どのようなスキルを保有しているかを確認することができ」、そのわかりやすさがウケているのだ、というのはいささか乱暴に見えます。ついでにいえば『フェアリーテイル・クロニクル』は、「これが現実だと確信した理由の一つが、ゲームの能力を使えるくせに、ステータスの参照が出来ない事である」(第一話)と、ステータスの表示ができないことをリアリティの梃子として用いているので、ランキングを用いて証拠とするならそのあたりのことにも触れなければアンフェアでしょう。

また論者は、「『ありふれた職業で世界最強』や、年間ランキング35位の『神眼の勇者』などでは……」と、折角ランキングを引用したにもかかわらず、ランキング外の『神殿の勇者』を突如として引用しています。なぜ他のランキング内作品ではなく、『神殿の勇者』を敢えて採用したのか。この辺りにも若干、論の運びに疑問を覚えました。書籍化が決まったからでしょうか? しかしランキング中の2位を除き、すべてが書籍化しているのでやはり35位から召喚する意図がいまひとつわかりません。

他の要素についても、概ね似たような感じです。妥当性が高そうに見えるのは、「ハーレムの形成」くらいでしょうか。

続いて、(2)。「周囲を見返す展開」の例として『八男って、それはないでしょう!』(以下、『八男』)が挙げられていますが、これは正直どうかと思います。『八男』はたしかに「貧乏貴族の八男で、立場は低かった」けれど、「周りを見返す」という展開には到底読めません。むしろ幼い頃から「神童」扱いで、実家ではその力を見込まれて「家の乗っ取り」を持ちかけられたり、隠そうとしていたのに大魔法使いの弟子であることがバレて士官させられたりと、どちらかと言えば過大評価されて本人もノリノリ、という物語です。この例ならば、最初は理不尽な罠にはめられ迫害を受けつつ戦闘の活躍で次第に受け容れられていく『盾の勇者の成り上がり』のほうが妥当であると思うのですが……。(また、この要素についても『神眼の勇者』が出てきます)

『八男』については他の参照部分でも、「かなり頑張らないとそうは読めないんじゃ……」というところがあります。たとえば、「転生前の経験・知識による無双」の項目でも引き合いに出されています。たしかに指摘される通りの事実はあるものの、『八男』の主人公ヴェンデリンの特徴は現世の知識より異様な魔力のほうにあり、その力は幼少時から自覚的に訓練したことであるということが最初から繰り返され、最近になって異界からの転生者の持つ特徴というのも加わっています。そちらがメインであって、この作品については経験や知識は帝国内戦時くらいしか本格的には役に立っていないと言えるのではないでしょうか。

せっかく、「ランキング上位」の作品をピックアップしたのに、それらについてあまり適切な分析・解釈がされていないなぁという印象を受けました。参考文献も偏っており、資料として挙げるからにはせめてTOP10の作品には全て目を通し、言及があってもよかったのではないかと思います。

最後(3)についてですが、これはそのままです。『神眼の勇者』を引っ張ってきたこともそうですが、なぜそう言えるのか、という部分の説明がほとんどありません。たとえば「色々な亞人族」というのが人気要素として記載されていますが、亞人族を登場させている作品というのは、それこそ星の数ほどあるはずです。しかし、『謙虚、堅実をモットーに生きております!』や『八男』(最近魔族が出てきましたが長い間亞人はいなかった気がします)、『理想のヒモ生活』あたりには亞人はほとんど出てこない。「亞人」が「なろう」での人気要素だと言うには、たとえば「なろう」小説全体では5割~6割の亞人率だけど、TOP50では7割を越えている、というような比較が必要なはずです。そのあたりの手続き的な部分があまりよくわかりませんでした。

その他の要素も概ねそうですね。俺TUEE無双やリベンジ展開、ステータス表示などは「なろう」小説の特徴として挙げるなら分かる気がしますが、「上位になるために必要な要素」かと言われると、むしろランキングTOP10が示すのは、「なくても上位になれる」ということのように思われます。

この辺り、単に「なろう」小説の特徴を書いただけだったのか、「なろう」小説の特徴だからそこを強調した方がいいという考えなのか、それとも根拠はないけれど論者がそう思っているということなのか、はっきりしません。はっきりしないので読んでも判断を保留するしかなく、感想も言えない、という感じです。

それとは別に、これは書き方の問題として、「ライトノベルの成功論」という論のタイトルともかかわる部分でちょっとした引っかかりを覚えました。具体的には、「主人公の性別は男性に設定すべき?」(p.17)という要素(主人公の性別要素)についての言及の箇所です。

これ、「なろう」小説でランキングTOP10に来ている作品は圧倒的に男性主人公が多い、という話として読めば、それなりに納得はできます。ただ、先日よりまとめていた「なろう小説オススメ」でも触れた通り(この記事)、女性主人公の作品自体は決して少ないわけではないし、ランキング上位にまったくいないわけでもありません。また、アリアンローズ文庫などいわゆる「女性向け」レーベルで積極的に書籍化されています。

論者は、「ライトノベルの主な読者層は男性」であり、「ライトノベルにおいては、男性を主人公に設定する方が無難である」と述べていますが、この部分はもう少し慎重に扱ったほうが良いのではないかと思います。いわゆる少女小説のようなものを、「ライトノベル」の中に入れるのか否か。入れるのであれば「ライトノベルの主な読者層は男性」というのはやはり乱暴な議論ですし、「なろう」小説だけで「ライトノベル」全体を引き受けた語り方をしていいのか、というのが問題になるでしょう。

たとえば『ライトノベル・スタディーズ』(青弓社、2013年)所収の論文・山中智省「ライトノベル史再考」では、「ライトノベルとSF作品、あるいは少女小説との関係をめぐる動向など、取り上げるべき課題はまだ数多い」(『ラノスタ』p.65)のように書かれており、「SF」や「少女小説」とひとまず区切った形で「ライトノベル」というものを慎重に定義しています。しかし本論考では、「なろう」小説の話をしていたはずがいきなり(どういう範囲を想定しているのかよくわからない)「ライトノベル」全体の話へと移ってしまっており、いささかとんでいるな、という感じを受けました。

「なろう」小説とライトノベルを享受する層は同じなのか。両者をそのまま重ねてしまって良いのか。「論」としてあるいは「研究」として考えた場合、対象となるものが何であるかを明示するのは基本であり、その範囲に関する先行の議論を踏まえていないというのは物足りない感じがします。


▼「3.書籍化の成功に必要なこと」 (p.18~)
ここからはマーケティングというか、「なろう」小説が書籍化されていくうえで「売上」を伸ばすにはどうすればいいか、という話がなされています。
・本のサイズと価格を適切にしよう!
・萌えるイラストにしよう!
・WEB上の公開コンテストの課題
という3項目について言及され、それぞれ文庫サイズ・1000円以下にする、萌えるイラストにする、「編集者の評価と読者の評価は違う、というふうに、論者が考えるマーケティングの理想が書かれています。

ただ、これについては業界の事情などもあるので私はよくわかりませんし、またそのよくわからない部分についてこの論で、しっかりした調査が行われていたり説得的な議論が展開されているとも思いませんでした。

たとえば1000円B6版というサイズについて否定的な意見がありますが、これはまあ感覚的にそうだろうな、という感じはします。B6版で出ているのは論者が指摘するとおり1冊あたりの利潤の大きさ、というのを想定しているのだと思われますし、富士見ファンタジアや電撃文庫、最近ではモンスター文庫のようなもともと文庫からデビューしている作品は当然文庫サイズで出版され、『白の皇国物語』や『ゲート』はそれなりに人気が出たと見るや、B6版につづいて文庫化が進んでいます。おそらく文庫の方が売れるのでしょう。

また絵についても、そりゃあ「絵買い」などということばがあるくらいですから、絵のクオリティが高いほうが売れるに決まっています。しかし、その絵の善し悪しの基準は何なのか。

論者は次のように書いています。

例えば、電撃文庫の「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」や、MF文庫Jの「僕は友達が少ない」のイラストは非常に可愛くて萌えるイラストであり、これらの作品はメディアミックスに成功している。一方、なろう累計ランキング1位の『無職転生 ~異世界行ったら本気だす』のイラストは確かに上手くて綺麗なイラストではあるが、萌えイラストではない。

「萌えイラスト」と「上手くて綺麗」だけどそうではないイラストの違いは何なのか。いち読者としては、そこが気になるのですが、言及はありません。『フルメタル・パニック』や『狼と香辛料』の絵は、萌えなのでしょうか。そうではないのでしょうか。また、イラストはどのくらいセールスと結びつくのでしょうか。そもそも、メディアミックスについては出版社の事情などもあるので、一概に「萌えイラストかどうか」が売上の決め手になるという話にもしづらいでしょう。「絵買いというのがあるから萌え絵のほうが良い」というだけならそれは誰でも言える当たり前のことにすぎないので、何か数字を伴った根拠のようなものがあれば、より興味深く説得的な話になったのではないかと思われます。

▼「4.電子書籍の可能性」 (p.20~)
この部分については、数字なども使って興味深い内容が書かれていました。電子書籍の現状や将来の見通しについて、勉強になった、という感じです。

ただ、「なろう」小説とのつながりについてはほとんどないというか、ものすごく唐突に出てきた感じがあります。偉そうで恐縮ですが、別々のテーマとして分けても良かったのではないか、と。

むしろこちらの視点で掘り下げた内容をいろいろ拝読したかったですね。

▼「5.まとめ」 (p.21~)
一応、電子書籍にするには……という内容を盛り込んで、これまでのまとめとなっています。「男性主人公にするほうが無難」と言っていたはずなのですが、男性がTS(トランスジェンダー)して「異性として異世界転生」するのが売れる秘訣だ、となるのはどうしてなのか、いまだによくわからないままでいまひとつスッキリしませんが、世間一般のテンプレート的な「なろう」小説像に着地させて終わり、という感じでした。

◆総括
ううむ……。同人誌として出されているもの、しかもお知り合いの本についてこういう感想を書くのはどうなの、というコメントになってしまった気もするのですが、忌憚のないところを書くのが「論」に対してはむしろ礼儀かなと思うので、できるだけ細かく根拠を付して書いたつもりです。

上を読んで貰えば分かる通り、失礼ながらあまりクオリティが高い内容とは思いませんでした。私の未熟ゆえに論者の意図を汲み取れていない部分もあれば、「なろう」小説の世界に足を踏み入れたばかりの私が、ちょっとかじった程度の知識と経験で色々指摘しているのもどうよという感じもありますので、勘違いや誤解等があればご叱責のうえお教えいただければ幸いです。

言い訳じみて聞こえるかもしれませんが、お断りしておきたいのは、私にはこの論を非難したりする意図はありません。むしろこういった論を積み重ね、クオリティをあげていくことによって、「なろう」小説をめぐる言説というのがより成熟したものになっていくのだと思っています。だから、とても意味があると言いますか。

現状、ごく一部でしか存在しない「なろう」小説に関する論考をお書きになるということはとても大変なことだし、それだけで、(上から目線ですが)何もせずにケチをつけているだけの私なんかよりはるかに重要なお仕事をしておられると思います。だから私は、その生産性に参与させていただく、あるいはおこぼれにあずかるというくらいのつもりでいます。

ただ、このままではやはり調査・研究としては良質なものとは思い難く、気になった点を指摘させていただくことで、次の刊行物に何らか反映できる部分が出てくるかもしれないと考えてこうした記事を書きました。

次回、コミケや文フリ等で刊行物が出たとき、許されるならまた購入させていただきたいし、「なろう」小説に関して引き続きご所論を拝読したいと思っています。

『勇者、或いは化け物と呼ばれた少女』の感想とか

ラノベ系レビューです。本日は、七沢またり『勇者、或いは化け物と呼ばれた少女』(KADOKAWA/エンターブレイン)。上下巻完結です。

yuuaru

 ▼「勇者、或いは化け物と呼ばれた少女」(小説家になろう)
※七沢氏曰く削除しないということなので、完結編が全話読めます。

小説投稿サイト「小説家になろう」出身の、いわゆる「なろう」小説です。なんか余り世間的には評判のよろしくない感じがしますが、私は結構「なろう」小説好きだったりします。以前感想を書いた『竜殺しの過ごす日々』みたいなのは決定的に文体があわないのがあったり、玉石混交なのは間違いないですけど、多くの「有識者」のみなさんがおっしゃるほどワンパターン展開じゃないし、異世界転生俺TUEEEしてればウケてるわけでもないと思います。むしろワンパターンの「洪水」があったからこそ、そこからの差別化をはかろうと各著者いろいろな工夫を凝らしている感じ。いまが爛熟期という見方もありますが、スタイル的にはまだまだ未成熟(未熟ではなく)な領野なので、これから勢いは落ち着きながら変化成長していくのではないかなぁ。

と、話がズレました。ともかく本作はその「なろう」小説。しかも、『死神を食べた少女』の前日譚にあたります。 その辺の情報を聞いて敬遠する方も多いかなと思ったので、ちょっと「食わず嫌いは勿体ないかもしれませんよ」というアピールで筆を執りました。

コミカルな箇所もあるのですが、全体の基調は暗い話です。人によっては「鬱本」に分類するかもしれません。私は、途中のエンタメ感満載の展開や妙に余韻の残る終わり方もあって「鬱」にまでは感じませんでしたが、いろんな意味で残酷な(変な言い方ですが同時に優しい話でもあるんですけどね)話だなぁと思いました。 若干のグロ描写もあるので、その辺ダメな方は回れ右してご退室の方向でお願いします。

BOOKデータベース登録情報によればあらすじはこんな感じ。

魔物は、殺して殺して殺し尽くす。

かつて少女は“勇者"と呼ばれ、賞賛された。
そして“化け物"と呼ばれ、恐怖された。

魔物を殲滅させるまで、
少女の足は止まらない。
殺して殺して殺し尽くす――
それが、勇者の宿命。

過去を失い、
新たな仲間を得ても、
少女の目は魔物を追い続ける。

理由は、ただひとつ。
「私は、勇者だから」

『死神を食べた少女』七沢またりの最新作!  (BOOKデータベース)

さて、この物語の主人公は「勇者」という少女です(この紹介にも一応意味があります)。数多くの世界を救ってきた彼女ですが、その力ゆえに怖れられたり、あるいは人の欲望に晒されたりして摩耗しています。とはいえ余り深刻な感じではなく、最初は単なる皮肉屋のような感じ。

その彼女が、流れ着いたある街で冒険者として生活をはじめ、紆余曲折を経て新しい仲間たちとパーティー(全員女)を組んでダンジョンを踏破し、実績をあげていきます。 基本的には「勇者」であることが周囲から冗談ととられている少女が、問答無用の実力でさまざまな事件を解決する中で街で認められていく話だからある種のサクセス・ストーリーなのですが、最初にも述べた通り、まとわりつく空気感が割と重たい。

たとえば、「勇者」が戦う相手の多くは、単なるモンスターより街の人間であることが多い。迷宮で初心者を食い物にしている盗賊崩れだったり、よくわからん実験や儀式のために人間を殺し回っている狂人だったり。1つ1つの事件がなかなか重たいし、救いのない話もあります。

また、その相手も単なるゴミみたいな悪党だけではなく、読んでいる側からすると気持ち……は無理にしても事情がわからなくもないところはある。娘が死んでしまったので生き返らせようとしたとか、コンプレックスをこじらせたとか、ある種どうしようもないかなという辛さの中で、自分の目的しか見えなくなって「狂った」連中が結構出てくるんですよね。

そして、そういう連中を通して見えてくるのは、「勇者」も実は似たり寄ったりではないか、ということ。つまり、「勇者」は「世界を救う」(そういう表現であったかどうか忘れましたが)ことが目的で、それしか見えていないわけです。たまたまベクトルが周囲の人に迷惑をかけない方向だっただけで、壊れているという意味では彼女もじゅうぶん壊れている。そして、彼女と共に戦う仲間たちもまた壊れていきます。

この辺が実にうまくて、その壊れ方に読者を共感させる力がありました。単に「こいつ頭おかしいだろ」じゃなくて、どこかで道を誤った感じがあるんだけど、ハッキリとどことは言えない。心情的にはむしろ分かる気がする。私はそんな感じで読んで行ったので、非常にハラハラしました。彼女たちが壊れていくのが辛いし、でもそうせざるをえないのもわかるし……という。幸せになってほしいなぁと思って読んでいたのですが。

最後どうなるかは読んでのお楽しみとして、後味悪くはないです。ただ、「勇者」たちが世界を救ったとして、彼女たちは救われているのか? という問いはしっかりと投げかけられている感じがする。この終わり方は果たして救いたりえているのか。彼女たちは幸せだったのか。そんな問いがどうしても出てきてしまう。

書かれた順番は逆ですが、ストーリーとしてはこの後が『死神を食べた少女』になります。こちらも割と切ない話。ただちょっと最後の方ごちゃごちゃしたところがあって、読後感がほんとうに少しだけ損なわれたところがあったのが残念でした。『勇者~』はそこをうまく余韻を持たせるかたちで纏めてるなぁと思いました。私的にはこっちのほうが好みです。あるいは、動かしようのないあとの歴史が決まっている話だからこそ出てくる味なのかもしれません。

心情的な方向にばかりスポットをあてましたが、ダンジョン探索型の冒険モノとしてもなかなか。WEB版作中の職業システムやアイテムを見ていると、たぶんもともとドラ○エ(ドラゴエではない)をベースに考えられていたのだと思うのですけど、その辺を取っ払っても世界観がしっかり構築されているし、主人公たちの成長や事件解決の爽快感などはエンタメ作品として見てもじゅうぶん面白い。

あまりうまい紹介になった感じはしないなぁ。まあ、WEB版は上記リンクに貼った通り全話無料で読めますし、百聞は一見にしかずというやつで、ご関心があればご覧になってみてください。

丸戸史明サイン会抽選に予約してきた話

「冴えない彼女の育てかた」4巻発売記念 丸戸史明先生 朝チュン♥ サイン会」の予約してきました。抽選なので、当たるかどうか分かんないですけど……。

-----------引用------------
2013年6月22日(土)~7月7日(日)の期間中に、
下記対象商品をAKIHABARAゲーマーズ本店にて
ご予約(全額内金)いただきましたお客様に、
抽選券を差し上げます。

7月7日(日)に予約受付を締め切らせていただき、
7月10日(水)に、アニブロゲーマーズWebサイト・
AKIHABARAゲーマーズ本店店頭にて
当選者の発表を行います。

見事当選されたお客様は、
7月21日(日)のサイン会にご参加いただけます!
---------------------------

7月21日(日)って何かあったような気がする……とか思っていたら奇跡的に予定が入っていなかったので、これは神の思し召し……とか信じたい。でも、最近何かと運が悪かったりタイミングが悪かったりなんで、期待はしすぎないようにしておこう。

丸戸先生のファンだし是非サイン欲しい……! という方は、都内来られるならいっちょ予約してみてはいかがでしょうか。倍率何倍なのか分かんないんですが、10倍とかにはならないんじゃないかな……たぶん、きっと。

しかし、周囲の話を聞いていると、こういうサイン会とかライブ抽選とか当たりまくってる人って2、3人はいるんですよね。コツとかあるんでしょうか。あればうかがいたいところです。それとも、手数が多いからあたってるようにみえるんでしょうか。

何にしても、あたるといいなぁ。

このエントリーをはてなブックマークに追加   

レビュー:『なれる! SE』8巻

なれる!SE08
夏海公司 『なれる! SE8 案件防衛?ハンドブック』
(電撃文庫、2012年12月8日、イラスト:Ixy)

ひさびさのラノベ感想。今回は、『なれる!SE』の8巻です。

業界人として順調にキャリアを積み、成長してきた工兵くんですが、これまで戦ってきたのは人柄の善し悪しはあるにせよ、同じ土俵で正面から戦う相手ばかり。今回は、工兵の立っている土俵をはみ出したところから、堂々と盤面返しをしかけてくる相手との戦いになります。

その相手とは、ライバル社であるアルマダ・イニシアチブの新人、次郎丸縁(表紙の女の子です)。前巻で「リドルリドルの案件から撤退させられた」というのが伏線というか、そこから膨らむ話になっています。

内容はいつもどおり。

ヤバい! → 全力で対策して何とかしてみせる! → なんとかなった(・∀・)

という黄金パターンなので安心してみていられますし、「一度対応した案件というのは実はその後も続いていて、維持することこそが難しい」というコンセプトも明確ですっきり読める。まさに「守成は創業より難し」。工兵の新たな視野が広がるとともに、過去の絆や経験がいかんなく発揮される主人公大活躍路線が素敵です。また工兵の毒牙にかかるおにゃのこが一人増えるのかと思うと、何というか非常に楽しめました。

しかし、この話って「リアル」なんでしょうか。

Amazon先生のレビューを見ると、「すごくリアルだ」と言っている人と、「リアルじゃない」と言っている人とでまっぷたつ。でもどっちも評価は高い。私の友人のSEに訊ねても、やっぱり「リアル」という人と「リアルじゃない」という人がいます。

まあ普通に考えたら職場が女の子ばっかり、しかも揃いも揃って有能。上司や社長も基本的にネジは飛んでいるけどデキるやつで、主人公も素人なのにホントの一夜漬けでいろんなことをマスターしたりする超人っぷりを発揮する……なんてのは現実離れしてると思うわけです。タイトルを、『デキる!SE』にしたほうがいいんじゃないかというくらい。しかし、SEやってる友人何人かとこの作品の話になると、皆口を揃えて「リアルで泣ける」みたいなことを言う。これどういうことなんだろうか、と。

SE関係とは縁もゆかりもないので話を聞く限りの想像になりますが、案件のトラブりかたとか上司のクズっぷりとか、細かい描写やネタのところでは業界内輪っぽさがガンガン出ている一方、大まかなストーリーはご都合主義全開でまったくリアルじゃない、というのが結論ではないかと思っています。だから、まったくSE関係がわからない素人にも楽しめるし、業界人は業界人でうんうんと頷けるんでしょう。たぶん。きっと。

しかし、室見さんとのロマンスはちーっとも進展しないのに割と面白く読めちゃうのが不思議。私って基本的にラヴが無いラノベ苦手だったはずなんですが……。

まあそんなこんなでリアルとアンリアルの間をたゆたうこのシリーズ、工兵くんが成長するにつれて段々敵も強くなり、バトルもののような盛り上がり方をしてきました。そのうち、室見さん以上のエンジニアがあらわれ、室見さんが武者修行に出る……みたいな話になるかもしれません。その前に会社が飛んで藤崎さんが社長の新会社ができたりは……しないかな? いずれにしても、この先がなかなか読めなくて楽しみです。

どうでも良いけど今月の「電撃の缶詰」、「私の電撃体験#21」は夏海公司さん。「HelloweenのEagle Fly Free」を聴いて「頭を殴られたような衝撃を受けました」と書いておられて、勝手に親近感を抱きました。良いですよね、「Eagle Fly Free」。あと、「コンドルは飛んで行く」も好きです。鳥が飛ぶ繋がりで……。

このエントリーをはてなブックマークに追加   

MF文庫のブックカバーキャンペーン

毎月25日はMF文庫Jの新刊発売日。各専門店ではよくフェアなどが開催されており、新刊に店舗特典がつきます。どうせ買うならちょっとでもお得感があったほうが良いなあということで、好きな本についてはそういうのをチェックして特典をもらってくるのですが(使い道無いのもおおいけど)、今回は新刊に限らない「MF文庫Jフェア」のお話。

メロンブックスさんの告知(OHP参照)で特製文庫カバーの配布が掲されていました。

メロンブックスでは、10月の新刊発売に合わせて『MF文庫Jフェア』を実施!
「しゅらばら!」「俺が彼女に迫られて、妹が怒ってる」「機巧少女は傷つかない」
「失敗禁止!彼女のヒミツはもらさない!」「精霊使いの剣舞」「僕は友達が少ない」
「魔法戦争」「瑠璃色にボケた日常」と、なんと8タイトルもの
スペシャルイラストによるオリジナルブックカバーをご用意しました!

ポケット付でカバー付けがとっても簡単。
メロンブックスが贈る≪MF文庫J専用≫の特製文庫カバーです。

新刊既刊問わず「MF文庫J」レーベル作品を一冊につき一枚もらえちゃう!
配布は完全先着、無くなり次第終了なので、ご入手はお早めに!!

だそうです。

配布期間が「7月25日 ~ 無くなり次第終了」となっていますが、これはおそらく「10月25日~」の誤りだと思われます(そのうち訂正されるかも)。『はがない』とか『精霊使いの剣舞』とか、割と欲しいブックカバー多いので、新刊買うついでに貰ってこようかな。ちなみに、旧刊でもOKのようなので、まとめて全部貰うのも一応夢じゃない……。これを機に、ちょっと気になっていたヤツの1巻とかつまみ食いさせようってハラですね! ちくしょう、卑怯なッ!

そういう誘いにホイホイ乗っちゃう私もどうよって話ですが、まあ折角なので『101番目の百物語』とか『あそイク』とか『お兄ちゃんだけど以下略』とか、気になっていたのを買いに行くつもりです。

回転率的に無理だろうけど、ライトノベル専門の漫画喫茶とかあればいいのになー。

それでは、また明日。

このエントリーをはてなブックマークに追加   

『烙印の紋章』完結

ada0db37.jpg

杉原智則『烙印の紋章 XII -あかつきの竜は空を翔ける(下)』
2012年10月10日、電撃文庫

関連記事 :レビュー:『烙印の紋章』(2012年6月9日)

正確にはレビューまでいかない殴り書きですが。読み終えた直後のこの感動を、どうしても書きのこしておきたくなってしまい、合間を縫って書いております。

12巻をもって完結とあいなったファンタジー戦記、『烙印の紋章』。まだまだ膨らみそうな話を残したまま、「次回で最後」という告知があり、すわ打ち切りかと心配されていました。多くの人が「打ち切り」を心配したのは、話が短すぎるからというわでではなく(たとえば『とらドラ』は10巻完結ですから、それより長く続いているわけです)、さらに裾野が広がる気配を見せていたこの魅力的な物語が、うまくまとまらずに終わってしまうのは勿体ない、と思っていたのではないでしょうか。

だから読者の――少なくとも私の希望としては、打ち切りだろうがそうでなかろうが、とにかく良い終わり方であってほしい、と。それだけを祈っていました。

結論から言うと、その希望はほぼ叶えられたと言えます。凄く良かった。

相変わらず固有人名バンバンでてきて、最初は誰が誰だかわからないのですが、読んでいるうちに「ああ、あのときの……」と思い出せてきます。名前ではなくて「こういうことをしたヤツ」とか「あのとき戦ったヤツ」という感じで人物を把握できるのは、私にとってはそれだけで良質な物語です。

今回はこれまでいがみ合っていた三国が手を取り、大陸の「歴史」に一つの転機が訪れると同時に、オルバ自身にとっても重要な出来事が立て続けに起きました。凄く盛りだくさんだったのに、全部がすっきりとまとまっていて、本当に凄かった。広げていた風呂敷を、ギリギリ畳みきった感じ。

「魔術」や「竜神」の話も、ちょっと無理矢理感があるというか「機械仕掛けの神々」が顔を覗かせたようなところもありましたが、思い起こせば序盤からそれっぽい雰囲気は匂わせていたところもあったかな、と。一応ほぼ全ての設定を回収していました。

三上延『偽りのドラグーン』の場合は、伏線回収をあきらめて「綺麗な形で」うっちゃるのに心血を注いだ感じがあって、あれはあれで上手い終わり方だなと思いましたが、本作は「物語」を完結させる、という動機に貫かれていたように思います。そのせいで詰め込みすぎになったところはあるかもしれませんが、とにかく楽しい。そして、余韻が残る。

終わりでは、色々な国の「その後」の話がちょくちょく書かれており――ドラクエのEDみたいな感じを想像してもらえば良いかな――「ああ、この世界はまだまだ続いているんだな」と実感できる。奴隷剣士だったオルバが、一体何者になったのかは、良い意味で読者に委ねられています。エピローグで何度か、繰り返される「後世の歴史家や物語作家」の視点というのは、まさに読者を「歴史家」にしてしまおうという意図のあらわれでしょう。述べられている結論から忠実にプロセスを再現しようとするもよし、『三国志演義』や源義経の話のように、思い切った創作にするもよし。物語の醍醐味をそのダイナミズムの創造に見るのであれば、これほど「戦記」に相応しい終わり方も無いのかもしれません。むしろもうちょっといろんな「資料」を残して欲しかった気すらします。

子どもの頃に冒険ものを読んでわくわくして、ファンタジーの世界に自分も行きたいと思ったことはないでしょうか。私はしょっちゅうだったのですが、こういう「続いていく」かたちの終わりに触れて、久しぶりにそのような気持ちを思い出しました。

ちょっと不満があるとすれば、やっぱ恋話。ラブロマンスはちょっと杉原さん向いてないかなと思いつつ、それでもなんかこう、オルバとビリーナの不器用な恋愛「らしい」といえばらしいので、これはこれでアリかもしれません。

これでずっと楽しみにしていたシリーズが終わってしまうことを考えると、寂しくて悲しくてしょうがないと思っていましたが、凄く良い終わり方で、むしろ「この先」を考える楽しみが溢れてきて、めちゃめちゃテンションあがってしまいました。

いやー、シリーズ読んでいて良かったです。楽しい時間を本当にありがとうございました。シリーズ全体の感想をどこかでまとめたいな。

それでは、またこのような名作と出逢えることを祈りつつ、本日はこの辺で。

2012年10月20日、市村鉄さんのご指摘を受けて主人公の名前オリバになっていたのをオルバに訂正しました。ファンの方並びにスタッフの方に大変な失礼となるところでした。ありがとうございました。


このエントリーをはてなブックマークに追加   

レビュー:『らぶなどーる! 』

らぶなどーる1らぶなどーる2
上月司 『らぶなどーる! 』
(電撃文庫、2012年5月10日(1巻)/8月10日(2巻)、イラスト:アマガイタロー)

『れでぃ×ばと!』の上月司氏の新シリーズ、『らぶなどーる!』。正直余り期待していなかったのですが、思わぬ掘り出し物。かなり良い感じのラブコメでした。というか、私はこういうベッタベタなのが好きなんですよ!! そうだ、これが俺たちの求めていた面白さだ!

イラストのアマガイタロー氏の絵も良いですねー。バッチリハマってる。なにげに男キャラやマスコットが丁寧に描かれているのも好感度高いです。というわけで、一躍私の中ではお薦め本になってきたので簡単に2巻まとめて紹介記事を書いてみることにしました。
(あらすじ)
私立愛杜学園高等部二年・雪村虎太郎(ゆきむらこたろう)は、どこにでもいるごく普通の男子学生……よりはちょっと目立たない、いや、だいぶ目立たない影の薄い少年。2年間一緒にいたはずのクラスメイトからも名前を覚えて貰えない不遇っぷり。それでもメゲずに学園生活を送る彼に、とんでもない不運が訪れる。なんと、入学早々一人暮らしをしていたアパートを焼け出されてしまったのだ……。

途方に暮れる虎太郎だったが、幼馴染み・相羽空(あいばそら)の助けで何とか住む場所を見つける。しかしそこは、現役モデルにして生徒会長をつとめるスーパー女子(ただし留年中)・玖珂セレスティア(くがせれすてぃあ)の私邸を改造したアパートだった。しかも、住人は女性ばかり。その中には空の妹・蒼海(うみ)や、学園のアイドルにしてクラスで最も人気のある女子・百合川雛姫(ゆりかわひなき)まで……。

入居早々、トイレで真っ裸のセレスティアと鉢合わせしてしまい、追放の危機に逢う虎太郎だったが、他の面々の説得によってなんとか執行猶予がつくことに。そのかわり、虎太郎は生徒会のマスコットであるラブラドールレトリバーの着ぐるみ「ラブらん」として働かされることになったのだった。

そんな日々を送るうちに、虎太郎は雛姫のある「秘密」を知ってしまう。結果、二人は急接近して――。
Amazon先生の評価などを見ると、「1巻はどこにでもあるラブコメ」「別に普通」みたいな評価を見かけますが、私はむしろ1巻でかなり惹きつけられました。2巻もセットで読んだ方が面白くなっていますが、1巻でも十分綺麗にまとまった良い感じの話だと思いますけどね~。

古来、恋はシーソーゲームだなんて言われますが、それは単に駆け引きというだけでなく、惹かれ合う二人の間にはどこかアンバランスなところがあったほうが面白い、というニュアンスもあると思います。美人の管理人さんと平凡な五代くん然り、女神さまと蛍一くん然り。本作で言えば、存在感抜群の「孤高の百合姫」(ひどい二つ名です)こと雛姫と、存在感ゼロどころかマイナスの虎太郎、という二人を中心に話が回るところが面白い。

加えて、途中雛姫が虎太郎にある「約束」をしてくれるように頼むのですが、そこからが本番。表面的な付き合いではわからなかったお互いの新しい面をどんどん知っていく虎太郎と雛姫二人の関係が、次第に動いていきます。雛姫と虎太郎、二人の間に流れる想いもどこかアンバランスになってきて、その微妙な崩れ具合が良い感じ。

2巻では、雛姫以上に虎太郎のことを深く理解している幼馴染み・空の存在感がぐいーんと上昇すると同時に、巻末では爆弾発言が飛び出し、波乱の予感に期待が高まります。まあ、たぶん彼女のことなんだろうけど……。虎太郎の「影が薄い」という特性も、実は意外とプラスの意味に捉えられるかもしれない可能性が示されるなど、今後に向けた土台作りが盛りだくさんの内容。

この展開だと、一度アパートを追い出されそうになる虎太郎を雛姫がかばって関係が変わるとか、そういうパターンになりそうだな……と予想しつつ、そういうベタベタな展開で良いので雛姫が素直になるチャンスが早く来ることを祈るばかり。

『れでぃ×ばと!』的なハーレム展開になるかと思いきや、今回はかなりヒロインがしっかり絞られている感じが(今のところは)しています。そしてむしろ、変にハーレムにするよりこっちのほうが軸が定まっているぶんメリハリがついていて面白い。今後の展開は正直、空の頑張りにかかっている感がしないでもありませんが。

なお心理描写や事情の説明(整合性)をきっちりやろうとするあたりが上月氏らしいところで、その意味では余りにぶっ飛びすぎてちょっと無理矢理感が拭えなかった『れでぃ×ばと!』より本作のほうが舞台設定もうまくいっている感じがします。次巻も楽しみに待つことにします!

というところで本日はおしまい。それでは、また明日。

このエントリーをはてなブックマークに追加   

レビュー:『学園の檻 転任女教師佐由理』

学園の檻 転任女教師佐由理
二次元ドリームノベルズ48
小説:水坂早希 挿絵:B-RIVER、2001年
公式サイト:こちら
評価:★★★★

エロ小説のレビュー書きます、と言ったしぼちぼち書いていこうということで、試しに書いてみます。第一回は、初期二次元ドリームノベルズの中でも私がとりわけ気に入っている、水坂早希さんの『学園の檻 転任女教師佐由理』。イラストは、触手系同人でご活躍中のB-RIVER氏。このお二人は『魔法少女アイ』の小説版でもタッグを組んでおられ、そちらも非常に良い作品です。

さて、公式によるとストーリーは以下。
幾多の荒廃した学園を更正してきた女教師、佐由理。

彼女は、人の精神に乗り移り、意識と感覚を保ったまま相手を操るという特殊能力と、真っ正面から生徒たちに向かい合う教育方針で今までを乗り越えてきた。

だが、今度の派遣先は違った。

佐由理と同じような特殊能力を持ち、その力を悪用する八神という男子生徒が存在していたのだ。

彼は佐由理に、拉致した女子生徒に憑依するよう脅迫し、その女子生徒を蹂躙しながら授業を続けさせるのであった。

こねくり回される肛門。

蹂躙されまくる肢体。

それらの感覚がすべて、憑依能力を通して佐由理の身体に襲ってくる。

熱く火照りだした女教師の変化に気づきつつある生徒によって、学園は淫靡な空気で満たされていく。
はい、女教師ものです。

ついでに、触手とかは出てきません。相手はあくまで人間。挿絵は白黒14枚。カラーが1枚。 普通くらい 。普通くらいだと思っていたけど意外と多い方でした。というより、イラストが14枚の作品はたくさんあるのですが、それより多いのはレア。

特殊な超能力の使い手で、不良の「更正」を仕事とする佐由理が、赴任先の学校で自分より上手の学生、八神の能力で手玉に取られ、あれやこれやと屈辱的な仕打ちを受けます。

初め八神は、佐由理と感覚を共有した女生徒を犯していたのですが、やがて行為はエスカレート。輪姦やら何やらで佐由理は八神の思うがままのオモチャとして扱われていく……という話。

気に入ってるのは絵もさることながら、シチュエーション。強さと、やられたときのギャップの演出がうまい。

佐由理というキャラは非常に強いうえに気丈なのですが、まずそこがしっかり描けている。さらに、敵役の八神。こいつのキャラが立ってる。

佐由理を上回る強力な能力と知性と残酷さを持ち合わせた学生ということで、常に「佐由理の考えを上回る」ところがキチンとクリアーされていて好印象。更にその八神が根っこのところで無邪気なのが、不気味さに拍車をかけます。単に力押しで強いだけじゃなくて、こりゃあ絶対勝てそうにないな、と思わせる、嫌らしいタイプ。エンカウントシーンの「どろどろに犯す」は伊達じゃない。

どんなにヒロイン強い云々と書いてあっても、あんまりにも雑魚い敵のアホらしい罠に引っかかったりすると正直萎え萎えなのですが、本作に関してそれは無し。ちょっと佐由理さん諦め早すぎかなと思わないところもないけれど、少なくとも「間抜けどうしのおままごとバトル」にならなかったのはとても良いです。

正気とか羞恥心を保ったまま、快楽に振り回される佐由理さんは非常に羞恥プレイ向きで、朝礼の挨拶とテニスコートの露出授業は最高。徐々に盛り上がっていく演出も上手です。ここまでやったなら一部和姦っぽい「味方」の生徒(阿久津くん)を出す必要は無かったんじゃないかと思いますが、彼のお陰で爽やかな読後感がキープできたので、アリといえばアリなのかな。

一応、申し訳程度に他キャラ(冒頭で八神に遊ばれる良子さん(イラスト無し)とか、学生ヒロイン彩花ちゃんとか)も出てきますが、基本は佐由理さんの一本釣り。羞恥快楽系メインなのでそんなに変なプレイとかもないし、オチ(堕ちじゃなく)も含めて割とフツウの人向け。初期二次元ドリームノベルズの中ではかなりクオリティ高いほうだと思います。

なんかもっと言いたいことがあったと思うのですが、いざ書いてみるとうまく書けないな……。紹介の仕方を手探りしながら、また書いてみたいと思います。投稿後、適当に再編集するかもしれません。

それでは、本日はこの辺で。

このエントリーをはてなブックマークに追加   

レビュー:『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』

ビブリア古書堂3巻
三上延『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』

(メディアワークス文庫、2012年6月21日)

最近楽しみにしている小説の一つ、『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズ。最新の3巻が発売されていたので、早速購入しました。角川のコミック・エースから漫画版も発売されていて、こちらはまだ読んでいないのですが、大ヒットからのメディア展開が始まり、アニメ化も近いのではないかと勝手に期待しています。

ご存じない方の為に少しだけどんな話なのか、説明するところから入らせてください。

メインの「語り手」は、登場人物の1人でもある五浦大輔(ごうらだいすけ)。スポーツマンで本に興味はあるのだけれど、なぜか体質で本が読めないという男。そしてこの物語の中心となるのは、「ビブリア古書堂」の女主人・篠川栞子(しのかわしおりこ)。若くて美しく、「本」に関する異様なまでの知識を誇り、しかし人見知りで接客には全く向いていない彼女と大輔が出会うところから全てが始まります。

その人が探している「本」や、読んでいる「本」。そして「本」の状態などから、栞子は人の素性や生活、更には過去や心の内まで、さまざまなことを古書店に居ながらにして「推理」します。そして時には見通した全てを利用して、人の行動までも操ってみせる。その様子はシャーロック・ホームズにも、全てを見通す神にも、あるいは隠された秘密を暴く悪魔にも見える。そんな栞子に五浦は、恐れを抱きながらも惹かれて行く。

物語は基本、探偵モノの体裁。ビブリア古書堂を訪れる珍客たちからもたらされる、「本」にまつわる風変わりな依頼(ある本を探して欲しい等)を栞子が持ち前の推理力で解決していく、というもの。その中で、話題となった「本」に関するさまざまなエピソードや、登場人物たちの人間関係が語られます。以前に大ヒットした『文学少女』シリーズと似ているかもしれません。ただし『文学少女』がどちらかといえば書籍の「味わい」や作家のドラマに比重を置いていたのに対し、『ビブリア』は書籍のあらすじや状態(初版かどうか、どの出版社から出たか等)といった客観的なデータが物語に深く関わってきます。『ビブリア』の登場人物たちは内容について感想は漏らすけれど、過度な読み込みはしない。扱うのは、あくまでデータ。そのあたりに、書籍好きでありながら「冷徹な」人間である栞子の特性と、古書店という設定が見事に反映されているようにも思われます。

また、この手のストーリーにありがちな「キャラクター使い捨て」ではなく、過去の物語で関わった人たちが次々に話に関わるのが特徴的。3巻を迎えて、世界がぐっと奥行きを増したように思われます。そのぶん、途中から入ろうとするとハードルはあがったかもしれませんが。

というわけで3巻ですが、今巻採り上げられるのは『たんぽぽ娘』(集英社文庫)、ある児童書(これは作品のタイトル自体が謎で始まるので、ネタバレを避けるために述べません)、『春と修羅』(關根書店)。裏テーマとして『王様のみみはロバのみみ』(ポプラ社)です。(こうやって書誌情報(出版社)が書いてあるあたり、上で述べた「データ」云々の雰囲気がお判り頂けるのではないでしょうか)

第二話を除き、前巻から話題になっていた失踪中の栞子の母、千恵子(ちえこ)の影が見え隠れ。二話は以前に登場した坂口夫婦(『論理学入門』の話)が再登場するので、時間があれば前二冊を読みなおしてからのほうが良いかもしれません。私はすっかり忘れていたので途中まで時々必要なところを見返しながら読み進めていたのですが、結局読み直してしまいました……。

事件の内容は相変わらず「本」絡みのちょっとしたことから、その人の私生活・感情に立ち入っていくタイプ。個人的には事件の構成としても第二話が一番好きでした。なんかこう、胸が熱くなった。こういう人情話、ベタだけど好きなんですよね。伏線とかの技巧的に良かったのは多分『春と修羅』ですけど、こういう「巧さ」なら他の本でも味わえそうなので、やっぱり第二話が好きです。

千恵子の失踪の謎、父親と千恵子の関係、栞子の千恵子に対する複雑な感情……と、なんとなくこの作品で扱われる中心的な問題が形をとりはじめた感じがあります。千恵子との現状の問題が片づいたとしても、きっと最後まで何らかの影を落とすのでしょう。そういう意味では、3巻にしてひとつの山場に近づいたニオイがします。

全体的にお涙頂戴というわけでもなし、明るい笑いがあるわけでもなし、鎌倉の閑静な古本屋らしく淡々と話が進んでいきます。それを物足りないと感じるか、趣深いと感じるかは人それぞれでしょうが、2時間ほどの落ち着いた読書をするにはとても向いているシリーズ。今回も満足のクオリティでした。

……『偽りのドラグーン』も続いていたらなぁ!!(心の叫び)

というわけで、本日はこれまで。また明日、お会いしましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加   

レビュー:『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ』4巻

オタリア4
村上凛『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ』4巻
(富士見ファンタジア文庫、2012年6月20日、イラスト:あなぽん)

4巻が発売されました、『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ』。どうも略称は『オタリア』と言うそうで。「オタリア」といえば普通、チリ、ペルー、ウルグアイ、アルゼンチンなどの沿岸に生息する、ネコ目アシカ亜目アシカ科アシカ亜科オタリア属の海棲哺乳類を思い出すところなのですが……。

オタリア(動物)
オタリア。一夫多妻制社会で、ハーレムを作って暮らすそうです。意味深な。


さて、前回やや気まずくなった柏田君と桃ちゃんですが、今回はその関係の改善を目指すために、柏田君があちこちに時限爆弾をセットしてまわるような展開になっています。

ストーリーの軸は3本。1本目が桃と柏田の協力関係の行方。2本目は鈴木と桃の恋愛関係(鈴木の「彼女」疑惑について)の行方。そして3本目が、小豆と柏田の恋愛関係の行方。それぞれが入り乱れ、絡み合いながら、より関係が複雑化していく見所の多い巻です。そして相変わらず、カラオケボックス(柏田のバイト先)での山本さんは素敵に伏線だけばらまいて去っていきます。前回チョイ役だったムラサキさんは、今回はメインに近いアドバイザーとして引き続き登場……というか「リア充」ポジションだった桃が「オタク」サイドに引きずり下ろされてきた穴を埋めるべく、だいぶ便利に使われていました(笑)。

面白い巻ではあったと思いますが、ちょっと緊張感高め。それも、派手に爆発して解決が見える類のものではなく、これから何か良くないことが起こるかも、という静かで先が見えない雰囲気を漂わせています。一応ラブコメ的な展開ではありつつも、その裏には常に「自覚していない桃への想いのために、他を踏み台にしている」というメッセージが流れているように見えて、そのせいでとても重苦しい。いよいよ、本格的に物語が動き出す。そんな予感がします。いやいや、楽しみですね!

できれば長谷川さんには幸せになってほしいなあ……。

さて、ここへ来てこの作品が言うところの「オタク」が何であるか、なんとなくイメージが変わってきた気がします。

連載開始当初の表現としては、「オタク」は眉毛を整えていないヤツだとか何だとか色々言われていました。これはつまり、「流行」(周囲の人々の視線)に敏感であり、また自分がどのように見られているかという自己把握がしっかりできている、ということです。女の子にモテるとか、会話が弾むとかいうのはその結果もたらされる副産物でしかない。

その逆を行くのが、「オタク」として描かれる柏田や鈴木ら。彼らの最も本質的な特徴というのは、「自分を外側から見る目を持たない」と言うことなのでしょう。他人からの視線に鈍感であり、それゆえ自分のことについても頓着しない。

今巻で柏田は、小豆に対してある行動を取ってトラブルの引き金を引きますが、これは小豆が自分をどう見ているか(小豆にどう思われるか)に無頓着で、しかも自分が桃のことをどう思っているかを意識していないからです。

ただ、ここ最近描かれる「オタク」の性質はこれだけではないのかもしれません。というのは、同じく「オタク」であるはずのムラサキさんは非常に自己を客観視しているし、それゆえ他人が何を考えているかということに敏感です。今巻でも、さまざまな配慮を見せる。

一方、柏田や桃が傷つけられるのは、いわゆる「リア充」と呼ばれる連中の心ないひと言であったり、態度であったりします。カラオケボックスのやりとりはその典型だし、今回もその「リア充」が桃を傷つけようとする。これは単に「オタク」の側の歪んだ嫉妬ではなく、やはり「リア充」側に起因する問題点であるように思われます。

つまり、流行に敏感で他人の視線を常に意識しているはずの「リア充」たちもまた、他人の視線・思惑に対して本質的なところでは関与できていない。ここで、「リア充」と「オタク」の本質的な違いが無くなっているとも言えます。変な言い方ですが、たとえばこの小説を読んだオタクが、「あるある……やっぱ俺オタクだわ! 刺さる!」と思って身悶えたとしたら、少なくともその人には自分を外側から見る目が備わっているということになるはずです。桃というきっかけを得たことで、柏田もまたそのような視点を手に入れている。

この4巻までで、柏田の柏田たる所以というのは明らかに「鈍感」ということ――自分の気持ちもきちんとわかっていなければ、他人にどう見られ・思われているかもわかっていない――あるいは、自分が勝手に想定した「自分」の枠の中に閉じこもっているというところにありました。それが柏田の自意識の強さのような形で描かれている。

しかし、その彼の視点からすれば、「リア充」と呼ばれる連中もまた、自分にも他人にも配慮しない人間であったはずです。「オタク」の自意識は自分が何をしたいかであり、「リア充」の自意識は自分がどう見られたいか。いずれにしても、その強い自意識こそが他人との距離感を崩してしまっているのです。

そして、柏田の長谷川さんへの憧れは、彼女が自分にも他人にも適切に振る舞えている(リア充っぽい外見でありながら、子どもに優しい笑顔を向けていた)ということへの憧れである、と説明することができるでしょう。

この手の話を、「オタク擁護」あるいは「オタクを実は叩いている」のような図式から説明するというレビューが増えているようで、それは大いに構わないのですが、本作においては現状、最初に導入した一般通念としての「オタク」-「リア充」という図式は消滅しつつあるように見えます。

では、この作品の中では何が問題にされるのか。あるいは、この作品で言われる「オタク」や「リア充」は、私たちが作品の外側で使っている言葉だと何と呼ぶのが相応しいか。そんなことに関心を持ちながら、柏田と桃の関係の行く末を、楽しみに見守りたいと思います。

いやもう個人的には『れでぃばと!』よろしく(アニメほんとに最高でした)、な~んも考えずにハーレムルートでもいいんですけど、これまでの展開とかタイトルとか、柏田の自意識とか考えるにそれは無理でしょうしねぇ……(´・ω・`)。

このエントリーをはてなブックマークに追加   
《自己紹介》

エロゲーマーです。「ErogameScape -エロゲー批評空間-」様でレビューを投稿中。新着レビューのページは以下。
 ▼OYOYOの新着レビュー

ご意見、ご感想があればメールフォームからお寄せ下さい。面白かったよ! という時は、彼女に拍手してくれると喜びます。


記事検索
応援バナー(1)
あけいろ怪奇譚
バナー(3)
AXL新作第12弾「恋する乙女と守護の楯~薔薇の聖母~」 2016年2月26日発売予定!
発売中応援作品
メールフォーム
Twitter
応援バナー(2)
Lose新作『まいてつ』応援中!


AXL新作第12弾「恋する乙女と守護の楯~薔薇の聖母~」 2016年2月26日発売予定!

情熱FX大陸