テレホーダイ、ダイヤルQ2、56kb回線、ケーブル接続……これらのことばを聞いて、ピンとくるでしょうか? 中年インターネットユーザーには懐かしく、イマドキの青少年は聞いたことすら無いことでしょう。1990年代から2000年の初期にかけて(多少の誤差はご容赦ください)、インターネット接続といえばこうしたワードが飛び交っていました。

ただ、ダイヤルQ2は2011年にサービス終了。テレホーダイも昨年、2024年をもって提供の終了が宣言されました。

▼「NTT、「テレホーダイ」の提供を2024年で終了 90年代のインターネットを支えた長寿サービス」(ITmedia NEWS)
 NTTは1月20日、「テレホーダイ」など固定電話の全ての通話料割引サービスの提供を2024年1月をもって終了することを発表した。固定電話網(PTSN)のIP網への移行に伴い「通話料をシンプルでフラットな料金体系とするため、提供終了を決めた」(同社)という。

そうした中でも、登場と同時にネットの世界をがらっと変えたのが「ADSL」。「Asymmetric Digital Subscriber Line」(非対称デジタル加入者線)の略称で、家庭用のアナログ電話回線(電話回線とか)を使ってブロードバンドインターネット接続ができるというものでした。何がすごいって、当時のスピードで「下り1.5M」とか「下り8M」という高速でデータをやり取りできたこと。「G」とか「T」の現在からすれば何を寝ぼけたことを言っているのかと思われそうですが、1990年代は56kb(キロバイト)の回線で人々はインターネットを徘徊していたわけで、ホームページのトップに画像データなんぞ置こうものなら表示に時間がかかりすぎるので非難囂々という時代でしたから(テキストこそネットの主流だったのです)、それはもう驚異的なスピードでした。そして、従量制ではなく定額制の料金設定。だらだらとインターネットを続けたいなら深夜にテレホ使うしかなかったヘヴィユーザーたちは、万歳三唱をもってADSLを迎え入れたのでした。

ADSLにいちはやく乗り換えた人は「デスラー」(ADSL USER)などと呼ばれ、当時は尊敬を集め……。ただしじきに、時代に取り残された骨董品、低速の代名詞みたいな扱いになりましたが。あれから20年、ずいぶんと遠いところまできたものです。

dsler


そのADSLが今日、とうとう(大部分の地域で)サービスを終了します。ニュースでも「ブロードバンド回線を根付かせた立役者」として紹介されていますが、ほんとうに隔世の感がありますね。

▼「NTTのADSLが終了 高速ネットの立役者、20年で」(47NEWS)
 NTT東日本と西日本は、インターネットの非対称デジタル加入者線(ADSL)サービス「フレッツ・ADSL」を31日に大部分の地域で終了する。定額で使い放題という利便性の高さから2000年代にブロードバンド(高速大容量)回線を根付かせた立役者が、約20年で表舞台から降りる。より高速な光回線が普及し、利用者が減少していた。

 フレッツ・ADSLは00年12月にサービスが始まった。既存の電話回線を使い、料金は月額5千円程度に設定。先に広がった総合デジタル通信網(ISDN)サービスと比べて通信速度がはるかに速く、ネット通販や動画視聴の拡大を後押しした。

信仰を失った古い神が滅び、新しい時代からその痕跡が消えていく。そういう場面を、私たちは目撃しているのかもしれません。

ありがとう、そしてさようならADSL。


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