本日、同人ショップ「とらのあな」秋葉原店が閉店しました。

秋葉原に限らず、新宿なども含めたほぼすべての実店舗が閉店するとのこと。池袋の女性向けだけ残るようですが、私にとっては秋葉原店こそとらのあな、という印象だったので凄く寂しいです。百貨店で言えば、高島屋とか伊勢丹が銀座の店閉めるみたいな感じだよね、なんて話してました。

▼「とらのあな店舗閉店に関して
お客様 各位

平素より、とらのあなをご利用頂きありがとうございます。この度、誠に勝手ながら2022年8月31日(水)を持ちまして、
 秋葉原店A
 新宿店
 千葉店
 なんば店A
 梅田店
の5店舗を閉店させて頂くこととなりました。同様に、昨年より再出店を継続して模索しておりました名古屋店においても、出店を断念することとなりました。なお、池袋店においては引き続き女性向同人誌を中心に運営を継続して参ります。

2020年より店舗事業においてはコロナ禍による影響を大きく受けており、現時点で回復の兆しが見えていない状況です。当社の努力不足となり、大変申し訳ございません。

これまで長きにわたるご支援に心より感謝申し上げますとともに、ご利用頂いたお客様に、ご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。


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こちらは、閉店10分前の閉店タイマー。店内に設置されていました。これ撮影していることからもお分かりのように、本日の最終営業日、別れを惜しむためにとらのあなに行ってきました。んで、中を見ておこうと店内に入るったんですよ。すると、過去のカラーイラストが壁に展示されていました。懐かしいイラストいっぱい。

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ずらっと並んでいて壮観です。

先ほども言いましたがとらのあながつぶれるわけではないので、みんなそんなセンチメンタルにならないだろうと思っていたのですが、最後のお別れをしようと考える人は少なくなかったようで、閉店開始前30分くらいから、周囲に人だかりが。私もたまたまお友達が来ていたことがわかり、合流します。

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このあと更に人が増え続け、道を埋め尽くすレベルに。向かい側の道も人が集まっており、パトカーが近くに止まる始末。短時間だったこともあってか特に警告とか注意誘導の類はありませんでしたが、まぁ、ドミノ倒しとかあると危ないし、揉めごとやらスリやらあるかもしれませんしね。

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閉店の20時には、通行が困難なレベルの人だかりに成長。ぶっちゃけ、こんなに人いるとは思わなかったぞっていうくらい集まってきてビックリ。店内の人の追い出しなどもあったためか、10分から15分経って、お店の人が店頭に立ちご挨拶。文字通り黒山の人だかりです。通行の皆さんにはご迷惑をおかけするのは良くないと思い、かなり道路の端の方にいたのですが、あんまり意味なかったですね……。

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ご挨拶が終わると(残念ながら私は遠すぎたので余り発言内容をきちんとはききとれませんでしたが)、周りから口々に「ありがとう!」「ありがとー!」という声が。あと、当然のように拍手。コミケのノリに近い感じかな? さすがオタクってところです(褒めてます)。事前予告の通り、閉店セレモニーなどはなく、静かにシャッターが降り、オタクたちの拍手に見送られながら、秋葉原とらのあなの歴史が終了しました。

長い間ありがとうございました&お疲れ様でした。倒産してお店がなくなるわけではありませんので、まだまだこれからのご活躍を楽しみにしています。


ひと息ついて、お友達と秋葉原駅までの短い夜道を歩きながら胸に去来したのは、なんとも言いようのない寂しさでした。「やっぱり寂しいねぇ」と私がいうと、お友達も「寂しいですよぉ」と。

学生時代、秋葉原に通うようになってから20年以上。上京してすぐに目指したのはとらのあなだったし、その後もとらのあなは、私がいつも立ち寄るお店の1つであり続けてくれました。店舗外の巨大な広告パネルは、ソフマップの旧1号館で月末金曜日に朝からエロゲーを買うために並んでいると常に目に入り、秋葉原中央通りのランドマークの1つになっていたと思います。

それが失われてしまった。お店側が言っている通りコロナのせいなのか、市場のEC化の波によるものなのか、確たる原因はわかりませんが、ひとことで言えば時代の流れによるものだということでしょう。同人文化が大きく変わりつつあること、或いは既に変わってしまったということを、痛感せずにはいられません。

▼「とらのあな、店舗閉鎖後の一手 吉田社長「上場も検討」」(日経新聞)
1990年代からオタク文化をけん引した同人誌販売店「とらのあな」を運営するユメノソラホールディングス(HD、千葉県市川市)が事業を大きく変える。直営店の大部分を閉め、サブスクによる作家応援サービスやネット通販に軸足を移す。子会社の上場も検討する。オタク文化にもデジタル化の波が押し寄せるなか、ネット関連に投資を振り向ける。


実際、閉店の理由は通販のほうが好調なのでそちらにシフトということですが、どうなのかなぁ。まあ確かに、同人誌ある程度わかってる人にとっては、人混みに行かなくていいし原作も楽だし、サンプルも簡単にチェックできて大量に買い込んでも自宅に送ってもらえる通販は便利だと思います。

しかし、そこまでバリバリではないユーザーにとって店舗には店舗の良さがあり、実際表紙見ることで魅力が伝わってきたり、知らなかったサークルさんの作品と出会いやすかったりということはあります。また小売店にとっては、実店舗を失うことで知名度低下のリスクあるし、通販は電子化がすすんでFANZAとかの競合が強そう。ユーザーの趣向も変わってきており、現物より嵩張らない電子書籍が便利だよね、という人は明らかに増えてきました。その意味では通販シフトすると電子書籍と土俵が接近する難しさはありそう。あと、個人レベルでの情報の発疹も受信も容易になり、ファンボックスとかskebみたいなサービスも出てきましたからね。

それに、現物にこだわるタイプの人にとっても、作家さん個人による通販なども今は活発になってきていますので、ユーザーが直接繋がっちゃうと厳しいんじゃないかという気もします。実店舗から撤退した後も、とらのあな、ならではの良さみたいなのを通販でアピールできるんでしょうか。そこが心配なところです。

既に「とらのあな限定特典」が、店舗撤退に伴ってなくなることが決まった、みたいな話も幾つか耳にしていますし、特典継続するにしても通販しないと限定特典届かないとなると、送料とか考えると微妙なところはありますよね。……まぁ、昔みたいにメイト、ゲマ、メロブ、とらと巡って特典集める時代では無いのかもしれませんが、一抹の寂しさは覚えます。

とらのあなの閉店を見たことは、どこぞの哲学者が「世界精神を見た」とのたまったような、ひとつの時代の終わりと始まりを見たのと同じだとまでは言わないけれど、変化の象徴を見たとくらいは言えるかも知れないなぁ。そんなことをつらつら考えていました。