年があらたまり、ちょっと気分を変えようかと思い立って時計を新調しました。選んだのは、SEIKO5。自動巻き時計です。

変なこだわりと言われるかもしれませんが、私はシャツは東レ、鞄は吉田カバン、靴ならREGAL、時計はSEIKOこそが「日本人」のビジネススタイルだと思っています。

もちろん、クオリティだけで言えばそれより上のところはたくさんあるでしょう。シャツならオーダーの大和屋こそが歴史も質も高いだろうし、鞄なら大峽製鞄、土屋鞄だってある。靴……スコッチグレインやユニオンロイヤルあたりでしょうか。

しかし、日本にビジネススタイルが定着していった高度経済成長期。大衆、つまりは最大公約数的な日本人を支えたのは、選びぬかれた高級な日本製ではなく、大量生産で価格を抑えながらもそこそこの質を確保した量産の――量産品でありながらもどこか芯の通った――日本製工業製品でした。

別にだから何が偉いというわけではないけれど、上ンに挙げたスタイルに身を固めるということは、日本人的ビジネススタイルの歴史を纏うということだと思います。吉田鞄の「PORTER」ブランドができたのは高度経済成長期真っ只中の、1962年。鞄にブランドを求めるということが少なかった日本にその意識を芽生えさせ、1968年から現在まで同じデザイで作られているビジネスバッグの名作、「BARON」が生まれました。

REGALにも、50年以上まったく変わらない木型で作られている不朽の名作「2504」シリーズがあります。50年、60年生き残っているというのは普通に考えてなかなかとんでもないことです。また、それだけよく日本人の生活に溶け込んできたという証拠でもあるでしょう。

SEIKOといえば、「クオーツショック」で世界を席巻したアストロンが注目を集めがちですが、それよりも長い間作られ続けているのが、自動巻きの「SEIKO5」シリーズ。1963年に発表され、世界に「SEIKO」の名を知らしめたモデルです。現在は販路を海外に向けたとはいえ、「SEIKO5」は日本に限らず世界でも屈指の流通量を誇ることは疑いありません。

まあそんなわけで、古き佳き日本の魂を感じるわけです。別に朝ごはんは米でもパンでもコーンフレークでも構わなくてどれも美味しいんだけれども、朝食でご飯と味噌汁が並んでいると「ああ、私は日本人だなー」と思うみたいな感じで。在りし日に思いを馳せることのできるグッズ。

クオーツと比べると決して使いやすいわけではないんだけどSEIKO5が良いなと思うのはそのあたりの事情でして(まああと、自動巻きにしてはお値段がお手頃だし……)、ブランドに対する愛着というか。

そんなこんなで良いなと思ったのを買おうとしたら、ムーブメントがマレーシア産、組み立てが中国だったりするのはご愛嬌。結局日本製にこだわってちょっと高めのヤツを買ってしまった……。魂ってお高いですね。(;´д`)トホホ…。