OVERDRIVEさんの新作『MUSICA!』のクラウドファンディング(CF)が先日始まりました。開始1日たらずで、6000万円を突破するとんでもない事態になっています。

musica
※画像は、2018年7月31日17時のもの。その時に6000万円を突破していたので。

 ▼「OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト

なんといってもシナリオに瀬戸口廉也氏が起用されているのが大きい。一時はこの業界からの引退も囁かれたことを思えば、コアなファンにとってはたまらないでしょう。また、キャラクターデザイン・原画には実力派のすめらぎ琥珀氏。これも嬉しい話です。

ただ、クラウドでの「投げ銭」が一種のイベント化している感もありますし、またこの方式がエロゲー業界全体にとっての福音となりうるのか、という部分については、正直慎重な検討が必要だろうと思います。当たり障りのない書き方をしましたが、これほどまでの「成功」を現時点でおさめられているのは背景にbambooさんという屈指のプロデュース力を誇る指揮官がおり、過去の成功の実績があり、投資にふさわしいだけのペイが見込める見込みがあるからこそでしょう。

個人的にOVERDRIVEさんの手法はうまいやりかただと感心させられる一方、クラウドという手法に対し、ユーザーの抱えるリスクみたいなものを今回の事例のみから一般化することはできないと思っています。非常に責任感あるメーカーさんがやるぶんには構わないのですが、そうでもない有象無象のメーカーさんが同じようなことをやりはじめて、じゅうぶんなペイが果たしてユーザーに届くのか。「投げ銭」イベントと先ほど書きましたけれど、オタクの習性としてこれだけのお金を「熱狂」で支払っている可能性もある。それを過剰に煽っていく手法なんじゃないかという議論には、一定の説得力があります。そしてその議論の結論は、一定の期間を置いた後にしかわからない。そうすると、やはりどこかに安全弁を設ける必要があるんじゃないかという話がでてくるのは妥当かもしれません。

他方、これまでとは違う「CF」というやり方に対して頭から否定してかかる必要もなかろうと。きちんとやればこれだけの成果が出る、ということは実地で証明されたわけですから(もちろんその裏で、やらかしたエロゲーCFもすでに幾つかあるわけですが)。今後CFスタイルが増えていけばそのパイオニアは間違いなくOVERDRIVEさんです。やはりこれだけの成果が出たということは少なからず業界にとって影響力はあるでしょう。

ただ繰り返しているように、今回の話は非常に特殊な例というか、『MUSICA!』のCFというのがものすごく戦略的に練り込まれたやり方なわけで、ぶっちゃけた話をすればOVERDRIVEさんのこの「成功」の本質は、クラウドという手法にではなくそうした戦略性にこそ依るものだと思っています。その部分を切り離して、今回の事例からクラウドの是非を語ることには(皆無とは言わないまでも)あまり意味はなさそう。ここまで話を展開しといて何やねんって感じですが(笑)。

一応言い訳しておくと、CFについては一度整理したいなとは思っていたのです。結局のところ制作の手法と販売の方法はメーカーとユーザーの間で合意がとれればOKという面があるのも確かで、そういう意味では「見えざる手」ではないけれど、自由主義経済っぽく市場に任せますで終えるというのも1つの考え方です。ただそうなると、メーカーとユーザーのメリット・リスクのバランスが崩れる危険性がある。消費者の側のリスクが高くなりすぎる取引形態ならばそれは見直されるべきだろうと。1500本ほどの販売で6000万円の売上が出るかたちが、業界の多様性にとって健全なのかっていう疑問もありますしね。そのへん考慮すると、成るに任せるだけは怖い。

だから、今回の件から何某かのことを言えないかと考えてみたのですが、事例が特殊すぎて無理やなと。ただ、印象としては自分の中でプラスに向かうだろうから、ちょっとニュートラルに戻すような方向にギアを入れておこうという具合。

いずれにしても、作品自体は楽しみですね。私も些少ではありますがお布施して、完成を待ちたいと思います。