大阪大学が昨年の入試で採点ミス(というより、話を聞いている限り出題ミス)があったことを認め、ほぼ1年が経過した今になって30人の追加合格を出しました。

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 ▼「平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りについて」(大阪大学)

 このたび、本学において、平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点に誤りがあったことが判明いたしました。そのため、改めて採点及び合格者判定を行い、新たに30名を合格者としました。

 また、理学部、工学部、基礎工学部の第2志望学科に合格し本学に在学している学生の中に、第1志望学科に合格している者が9名いることが判明し、新たに第1志望学科の合格者としました。

 このことは、1月6日(土)に記者会見を行い公表いたしました。

 厳正・確実であるべき入学試験においてこのような事態を引き起こし、受験生、在学生及びご家族並びに関係者の皆様には多大なご迷惑をお掛けすることとなり、深くお詫び申し上げますとともに、当該合格者及び学生のことを最優先に考え、一人ひとりのご事情を考慮して、誠心誠意対応してまいります。

 本学としましては、今回の事案を厳粛に受け止め、今後このようなことが生じないよう、教職員の意識向上に一層努めるとともに、鋭意、再発防止に努めてまいります。

 ▼「大阪大採点ミス 予備校通い、突然電話で「合格」に混乱」(毎日新聞)

 大阪大は6日、昨年2月に実施した一般入試(前期日程)の物理で、出題と採点にミスがあったと発表した。合否判定をやり直した結果、不合格とした30人を追加合格とした。また、本来は第1志望の学科で合格していたのに、第2志望の学科に入学していた学生も9人いた。

 およそ1年遅れの「合格通知」を、一度は諦めていた受験生は複雑な思いで受け止めていた。6日に判明した大阪大の入試問題の出題ミス。外部から3度もミスの可能性を指摘されながら、誤りを認めたのは昨年12月と、対応は後手に回った。

 昨年の入試で合格していたはずの大阪府内の男性(19)は現在、再び阪大を目指して予備校に通う。自宅に6日午前11時ごろ、電話がかかってきた。相手は阪大。追加合格を知らせる内容だった。阪大の小林傳司(ただし)副学長は午後の記者会見で「ポジティブな反応がかなりあったと聞いている」と話したが、男性は「素直に喜べない」と、揺れる思いを打ち明けた。

 今月13日から大学入試センター試験が始まる。本番に備え、休日返上で勉強してきた。その直前に届いた予想外の連絡。喜んだが「本当は合格だったと、今になって言われても……。悔しい気持ちもある。どう対応するのか、具体的にはまだ考えられない。電話を受けてからずっと混乱している」と話した。

 東京都内の予備校で物理を教える吉田弘幸さん(54)は昨年夏、講習のテキストに阪大の入試問題を引用した際、誤りに気づいた。8月9日、阪大に「物理の問題に疑問があります」と、正解を添えてメールした。同21日、阪大から設問に誤りはないとの返信があり、吉田さんは再度「理論的に誤りがある」とメールしたが、返信はなかった。結局、阪大が動いたのは12月に、別の人物から同様の指摘を受けた後だった。

 6日夕方。吉田さんに、指摘への謝意を伝える阪大からのメールが届いた。吉田さんは取材に「迅速に対応すべきだった。苦しむ受験生が出ないよう、再発防止を心掛けてほしい」と注文した。

 現役の阪大生や専門家からも疑問の声が上がった。外国語学部1年の女子学生(21)=大阪府豊中市=は「なぜ、もっと早くミスに気づかなかったのか。受験生は真剣。大学も真剣に臨んでほしい」と批判。教育情報サービス会社「大学通信」常務取締役の安田賢治さんは「大学の対応は遅い。理系では大学院進学も多く、学生にとって、この1年の無駄は大きい」と指摘した。

【山崎征克、千脇康平、鳥井真平】

ざっと見た感じ、ねとらぼさんの記事が詳しくて分かりやすいかな。

 ▼「大阪大が昨年の入試で出題と採点ミス 30人の追加合格者を発表」(ねとらぼ)

 大阪大学は1月6日、2017年2月に実施した一般入試(前期日程)等の理科(物理)で、出題と採点にミスがあったとして、不合格としていた30人を新たに合格とすると発表した。追加で合格となった対象者には、出願時に記載の連絡先に大学から合格通知書を速達書留で郵送するとともに、個別に電話連絡を行っている。

 物理の問題において採点の誤りと出題の誤りがあった。大学の調査によると、2017年8月9日に外部から大阪大学理学部宛てに不整合があるとの指摘があったが、問題作成責任者と副責任者により間違いはないと回答していた。しかし、同年12月4日に再び別の人物から不整合であるとの詳細な指摘があり、前出の2人とは別に4人の教員を加えて再度検討した結果ミスが判明した。

 その後、同問題の採点をやり直し今回の発表となった。問題作成責任者らに聞き取りをしたところ、2017年6月10日に開催された高校教員などが参加する「物理教育を考える会(大学入試問題検討会)」において、同問題に対し同様の指摘を受けていたことも分かった。この場でも問題作成責任者は解答例が正しい旨を説明していた

 なお、理学部、工学部、基礎工学部の第2志望学科に合格した在校生の中にも、第1志望学科に合格していた対象者が9人いることも判明した。9人は新たに第1志望学科の合格者とした。

 追加合格となった30人の内訳は理学部が4人、医学部が2人、歯学部が1人、薬学部が2人、工学部が19人、基礎工学部が2人。第1志望の学科に合格していた学生は理学部が1人、工学部が5人、基礎工学部が3人。

 大阪大は「厳正・確実であるべき入学試験においてこのような事態を引き起こし、受験生、 在学生及びご家族ならびに関係者の皆さまには多大なご迷惑をお掛けすることとな り、深くおわび申し上げます」とコメントしている。


この件の大きな問題は2つ。

まず、大学から学生への責任問題。浪人を人生にとってムダだとか不要だとは言いたくないので「棒に振った」のような表現は使いませんが、本来ストレートで合格していたかもしれない学生を1年回り道させたことに対して、大学がどう責任をとるのか。現状の日本はほぼ年功序列型賃金制度ですので、サラリーマンになっていたとしたら1年卒業が遅れるということは、もっとも賃金の高い1年を失うことになるかもしれないわけです。あるいは、就職で年齢制限がでてきた時に引っかかる人が出るかもしれません。

また、この問題に引っかかって時間を使い、他の問題ができなかった学生というのがいるかもしれません。そういう、影響が広範囲かつ深刻で、文字通り人生を狂わせかねないトラブルです。

この手の「ミス」を大学がやらかすのはこれが初めてというわけではなく、過去にも何校かの大学で同じようなことがありましたが、やはりそのたびに取り切れない責任があることを痛感させられるような対応しか見たことがありません。そうなるともう、あとは本人に納得してもらうしかないわけですが、大学側が果たしてそういう態度で(被害者に誠意を尽くすという態度で)臨むかどうか。自己保身しか考えていない対応しかしないようでは、阪大運営陣の程度も知れるというものでしょう。

もう1つの問題は、対応の遅さ。結果論ではありますけれど、もうちょっと早い時期なら対応も何とかなったでしょうし、本当に「なんで今さら」という感じがあります。

私が実際にどちらの言い分が妥当なのかを理解できていない(過去問から音叉の問題【3】の問4と問5を確認はしたけれど、作成者がどういう根拠で「問題ない」と言ったのか、そしてそれがなぜ覆ったのかが不明)ので、仮に大学側の発表が物理の標準に照らして妥当な判断であるとするならという条件付きになるのですが、発覚までに問題の不備の指摘を2度受けて、2度ともその指摘を作問者がみずから却下しているというのは余程のことです。

聞きかじり程度の知識ですがおそらく、固定端かどうかあたりの部分でかなり判断の分かれる複雑な内容なのだろうとは思います。検証に時間がかかったり不備のある問い方になってしまったのも、ある程度仕方ないことなのでしょう。というかもしそうではなく、非常に単純なミスに気づかなかったのだとすれば、これは非常に深刻な問題です。なぜなら作問責任者と副責任者は揃って余程のバカであり、作問資格が無い人物だということになりかねないからです。そして、そういう人を任用しあまつさえ入試を任せていた阪大の教授会というのはあまりに見る目がないということになるでしょう。根本的に大学の人事制度を見直すべきです。とはいえ、そのような可能性は低いと思いますけれど。

ありそうなのはむしろ、指摘の内容はきちんと把握していたけれど何らかの事情で(学問的信念か、公平性の担保のためか、単なる保身か)押し切ろうとしていたというパターン。こうなると、2人の作問責任者の思想信条の話になってくるし、「責任者」と「副責任者」がそう言ってるんだから信じて全権任せたという大学の態度も間違ってはいないように思えてきます。ただ、「別に4人の教員を加えて再度検討」というのを最後にやるなら最初からやっておくべきだった。

作問に対して作問責任者が答えるというのは、おそらくどこの大学でも当たり前に行われているのでしょうが、今回の件を見ているとそれって単に内部の人間で監査やってるのと同じなのかもしれません。大学内で外部機関というか、疑義が呈された場合は作問者とは別のスタッフがチェックするというシステムをきちんとつくってやっておけば防げた可能性もあるわけで。対応が後手後手だった感じは否めません。

結局2つの問題はどちらも、大学のシステム的な話に落ち着かざるをえない気もするのですが、今後同じようなことが繰り返されないためにも、阪大には是非この件の詳細を包み隠さず公表してほしい(いまの外部向け発表はわからないことが多すぎる)ところです。興味本位ではなく、そうすることが結果的に同じ悲劇が起きることを防ぐために必要な情報の取得に結びつくわけで、阪大が負うべき責任ではないかと思うのです。

まあいずれにしても、願うのは今回の件で「被害者」となった受験生の皆さんにとって、これが「良いできごと」で終わるような未来がおとずれてほしいということですね。