毎日新聞が、モロにいわゆる「世代間承認」問題を引っ張ってくるようなこと書いていたので、ちょっと気になりました。

 ▼「衆院選 若者層は保守的? 内閣・自民支持多く…世論調査」(毎日新聞)

 衆院選公示を10日に控え、国政選挙では、昨年夏の参院選から選挙権を得た、18歳以上の10代の若者が今回初めて衆院選に臨む。総務省によると、前回参院選で10代は40歳前後の世代と同程度の46.78%が投票し、投票意欲は決して低くはない。各党とも新たな票田として注目しているが、各種の統計や専門家の分析によると、10代から30代までの比較的若い世代で政治意識が保守化していると言われる。全国各地の10代有権者10人にその背景を聞いてみた。【大隈慎吾、水戸健一、野原寛史】

 毎日新聞が9月に2度実施した全国電話世論調査(9月2、3日と同26、27日)によると、全体として20代以下(10代を含む)と30代は、40代以上の高齢層に比べて内閣支持率も自民党支持率も高い傾向を示した。

 最初の調査では20代以下の内閣支持率5割弱に対し、70歳以上や40代は4割台、他の世代は3割台どまりで、20代以下の高さが際立った。2度目の調査でも20代以下と30代は4割台で、40代以上は3割台にとどまった。

 年代別の自民党支持率も、最初の調査は20代以下が4割弱と最も高く、30~60代の2割台と好対照。2度目も20代以下は3割程度で、30~60代は2割台だった。

 こうした傾向について、10代有権者の多くは「何も知らないままなら、有名な候補に」などと政治的な知識不足を背景にあげた。福岡市の男子大学生(19)は「知らないし、わからないと現状維持で問題ないと考えるからではないか」と話す。

 「関心のない人がとりあえず名前を知っているから入れている」「自分の主張がないから、支持者の多い方に流される」などと同世代に厳しい指摘もあるが、「民主党政権はマニフェストも達成できず、インターネットの発達で失敗も隠せない」「安倍(晋三)首相はリオ五輪閉会式のスーパーマリオの演出など見せ方もうまい」といった声も聞かれた

 世代間の違いを指摘する声も出た。北海道の男子大学生(19)は「自分たちは子供のころから雇用難。安倍政権で景気や雇用が改善し、わざわざ交代させる必要もないと考えているのでは」と話す。

 大阪市の予備校生(18)は「私の祖父母は野党側の考えに近いが、若い世代は安保闘争のような大きな政治運動の経験がない。野党の政策はどこか理想主義的で、現実的な対応をしてくれそうな自民がよく見える」と解説した。

 有権者の政治意識や投票行動を研究する松本正生・埼玉大社会調査研究センター長によると、他の各種世論調査でも10代を含む若い世代で内閣や自民党の支持率が高い傾向にあり、男性が女性よりも高いという。松本さんは「安倍首相のきっぱりとした物言いや態度に若者が好感を抱き、ある程度の固定ファンがいるのではないか。大企業や正社員を中心とする雇用の売り手市場や株高の現状が続いてほしいという願望が、若い世代で強いのだろう」と話す。

記事の特徴を箇条書きにします。

(1)毎日新聞の複数の電話調査が情報ソースである。
(2)「若者が保守化している」のはなぜか、という検証記事になっている。
(3)保守政党を支持する理由についての記述は、「多くは」、「といった声も聞かれた」、「声も出た」などパーセンテージを具体的に示さない、曖昧なものとなっている。
(4)結論部の長文引用(紙面を割く価値があると判断した内容)は、若者ディスに近い。
 ・若者は(安保などの)政治経験がなく、理想を追えない
 ・安倍支持は(政策内容ではなく)態度への「ファン」である(=ものを考えていない)
 ・経済的な得があるからという利己的(ブルジョワ的)判断で現政権を支持している
 ・しかもそれは「願望」でしかない

(1)、(2)はともかくとして、(3)と(4)はかなりバイアスのかかったものになっています。

新聞の調査なんて言うのはそれぞれのカラーによって大きく変わるものですので、信頼性云々はいまさら、というところはあるでしょう。参考までに下の記事。各新聞社のバイアスのかかりかたが一目瞭然で非常に面白いです。ちなみにこれを見る限り、毎日新聞(の読者)はかなり左よりということになるでしょうか。うん、知ってた。

 ▼「東京新聞読者の安倍政権支持率は「5%」、対する産経新聞読者では「86%」― 都内世論調査番外編

特徴的なのは産経新聞と東京新聞だ。産経新聞読者のなかでの政権支持率は86%に達した一方で、東京新聞読者ではわずか5%と極端な差が表れている。不支持率は産経新聞読者が6%なのに対して、東京新聞読者は77%と、そのまま支持率を裏返した結果となった。

朝日新聞、毎日新聞の読者も政権支持率はそれぞれ14%と9%にとどまり、かなり低い。

安倍首相が国会答弁で「熟読」を求めたことで話題になった読売新聞の読者層では、政権支持率は43%と、不支持率29%を上回っている。
また、唯一の経済紙である日本経済新聞では、支持率が41%なのに対して不支持率は38%と拮抗した。

全体の傾向として、各社の社説や右・左といった報道姿勢の「立ち位置」と、政権支持率の傾向とがかなり一致していると言える。

ともあれそんなわけで、毎日新聞の読者やお抱えの学者であれば、そういう傾向の発言になるのはある意味当然だし、そういった意見を発信する意味もあるのでしょう。

ただ、私のまとめで言えば(4)の部分、若者を下げる方向に論調を進めようとしているのが、どうもよろしくないような気がします。よろしくないというか、筋が悪いというか。

というのは、冒頭にも書いた通り、これがいわゆる「世代間承認」問題を反映しているように見えるからです。

世代間承認問題というのは、ストレートには上の世代が下の世代を承認しない、上の世代から認められない、というような話です。ただ、よく指摘されているように、この問題は経済的な問題と関わっています。これについては、承認の問題と労働の問題を単純に比較・混同しないほうがいいという立場もありうるでしょうけれど、構造的な共通性があるというのはベーシックな議論として特に問題ないと思うので、その程度での関わりを考えることにします。

もう少し詳しく書くと(専門家ではないので雑駁な説明になりますが)、たとえば上の世代が残っているから出世が遅れる。定年が伸びて上の世代が残っているから若者は正社員になれない。こういったとき、下の世代は上の世代から、その価値が認められていない(上の世代をクビにしてでも若者を雇うとか、上の世代より若者の給料をあげようという話にならない)わけです。

経済的価値にしても社会的な価値にしても、上の世代が下の世代を抑えつける。そこに権力構造が発生し、差別が生じるのだ……みたいなのが、(私はあまり好きではありませんが)左派よりの社会学とかが得意とする分析だったはずですし、まあ私の好みはともかくとして、それはその通りだろうなと思うわけです。

再分配とは一部の「権力」が独占している価値を広く解放することであって、貧困問題や労働問題、差別問題というのと根っこは同じであるはずです。んで今回のことに話を戻すと、要するに毎日新聞は左派の新聞でありかつ保守である自民党政権を批判しようとしているにもかかわらず、その理屈に思いっきり保守的な構造を持ち込んでいる。つまり既存の権力関係を維持することで一種無批判的に自分たちの有意を主張しようとしているように、私には見えるという話です。若者は「知識不足」だから自民を選ぶんだよ、と。

これが「安倍政権に騙されてる」とかなら分からんでもないのですが、そっち(保守より)のほうに行く論調をチョイスしちゃうのか、と。

んでもって、これが事実なり分析として妥当だっていうならまだしも、現実の投票率と当選結果を見ると、前回の衆院選も前回の参院選も、若者の投票数・投票率より40代以降の投票数・投票率のほうが多くて、それで自民党が圧勝しているわけじゃないですか。自民・安倍支持は若者の特性だ、という結論ってそういう現象に対して全然説明になってないですよね。

この辺、私が知識不足・読み取り不足で見当ハズレなことを言っている可能性もあるのかもしれないんですけれど、上の毎日新聞の記事が構造的にきわめて「保守」的であるというのは間違っていないと思います。

てなわけで、この記事は社会情勢なり選挙なり格差なりということを原理的に考えていない記事に読めたし、それに対して右よりもむしろ左の内部から批判が起きるべきだと思う。それが出てこないのが、いまの日本の野党なりリベラルなりの弱さの根本じゃないかと思うのですが、いかがなものでしょうね。