◆まえがき
この記事は、ブログ「それなんてえrg」(@sorenanteerg)のぐぬぬ様の発起による企画「好きなエロゲを3つ挙げろ」企画の一貫です。企画参加一覧はこちら。前回は『僕と、僕らの夏』の記事を書きました。

(自分の記事一覧)
(1)『僕と、僕らの夏』(light、2002年)
(2)『White Album』(Leaf、1998年) 
(3)『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』(ニトロプラス、2000年)


◆第二回:『WHITE ALBUM』

○基本情報

『WHITE ALBUM』(Leaf、1996年)
原画:ら〜・YOU(カワタヒサシ)、水無月トオル
シナリオ:原田宇陀児、青紫
音楽:石川真也、中上和英、下川直哉
公式サイト:WHITE ALBUM(18禁)

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いや、お前じゃない。交通費やるからチェンジで。


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これこれ。

『WHITE ALBUM』といえばビンタ、ビンタといえば『WHITE ALBUM』……かどうかは知りませんが、まあ有名になったシーンです。

『To Heart』でスマッシュヒットを飛ばしたLeafが送り出した恋愛ゲーム。主人公・藤井冬弥(ふじい とうや)は高校時代から付き合っている恋人にして駆け出しのアイドル・森川由綺がメインルート。由綺と同じ事務所の人気アイドル・緒方理奈や同じ大学に通う河島はるか、澤倉美咲、家庭教師先の生徒・観月マナがヒロインとして登場しています。PS3版からは追加ヒロインで如月小夜子が加わりました。

PC版、PC新パケ版、PS3版、PS3版を逆移植したPCリメイク版(綴られる冬の想い出)という4本が出ていますが、個人的にはオリジナルか新パケのPC版がオススメ。HシーンがないPS3版と2012年のリメイク版は個人的にイマイチ。ただ、ボイスついてたり、グラフィックが一新されているのとOS環境的にプレイしやすい(PCリメイク版はDMMでのDL販売もあります)んですよね……。

なお、PC版のビンタ絵はこんな感じ。

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私は結構好きなんですが、若干古めかしいでしょうか。


○あらすじ
大学生の藤井冬弥と、恋人・森川由綺。由綺がアイドルとしてブレイクしたことで、順調だった二人の関係にはすれ違いがふえ始め、それまでの「恋人」関係が変化しはじめる。

2行で終わってしまった。

○レビュー
当時から「浮気ゲー」として名を馳せた、プレイするたび胸が痛む作品。いやまあ、当時まだ若くて(いまでも若いけど)レンアイに過剰な幻想を抱いており、しかもまだ経験の浅いノービスエロゲーマーだった私には相当ハードル高かったです。ゲームを進めたい・物語を読み進めたいけど、進めるとこの由綺を裏切ったあげくフらにゃあならん、と。

いやね、由綺がクリスマスの予定とか聞いてくるのに他の女と約束入れてて嘘ついて断って悲しそうな顔されたり、なんとなく察した由綺が「他に好きな人ができたの?」みたいなこと聞いてきてそれに返答したりするところで必ずといっていいほど出るんですよ……。

選 択 肢 が よ!!!!

「好きな人がいる」とか「行けない」とか。なんじゃそりゃ。せめてもうちょっと気の利いたセリフ言わせてくれよ! ホント、何の苦行だよって感じです。まあ、選んでもその通りにセリフ喋らない某きみ○ぞの孝之くんよりマシかもしれませんけど。

あーもー、なんでこんなの選ばせるんだよ、ふざけんなよ、むりだろこれ……。とりあえずセーブしといて……。あーうぜー。ありえねー。マジ勘弁してくれー……。

てな感じで部屋の中をぐるぐる歩き回って、水飲んだりトイレ行ったりしてまたディスプレイの前に戻ってきて、頭かきむしりながら天上見上げて、マウス(当時はボールマウス)をごろごろ転がしたり指で叩いたりしながらゲームプレイ。

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こんな留守電残す彼女をね、フるわけですよ。ありえねー。ありえねー(大事なことなので二回)。

でも、理奈ちゃんとか美咲さんかわいいから転んじゃう冬弥くんの気持ちも分かるっていうか美咲さんとにゃんにゃんしたいし……。というわけで、「くやしい……でも進めちゃう」状態で全身をビクンビクン震わせながらやってた次第です。

ぶっちゃけ申しまして、このインパクトのせいで異様に心に残っているだけかもしれない疑惑。

スタートから強烈でしたからね。だいたい恋愛ゲームって「つきあうまで」を描いて、恋人になるのがゴールっていうのが当時のスタンダード(『ときメモ』が典型でしょうか)だったんですが、『白バム』はプロローグがこんな感じで始まってます。

俺に優しく笑いかけてる彼女は、森川由綺。…俺の恋人だ。高校の時からつきあいがある。始まりは…

んで、ここで選択肢ドーン! 「1.なんとなくつきあってた 2.俺が告白した 3.俺が告白された」。続けて、

そんな彼女と俺が出会ったきっかけは…

もいっちょ選択肢ドーン! 「1.席が隣だった 2.保健室に連れてってあげた 3.ノートを見せてあげた」。ただ、テキストは変わるだけでストーリー関係なしですけどね。

出会いも告白もすっとばして、同棲してるところからゲーム始まるっていうのはそれなりに衝撃的なところがありました。

もうちょっと外形的なことを言えば、Leafがブレイクしたビジュアルノベルシリーズから「ゲーム」に切り替えたんだとか(本作はランダム性の強い好感度システムが採用されていて、スケジューリングなどで試行錯誤する必要がある、いわゆる古いタイプの「恋愛SLG」に近い)、全ヒロイン攻略しても誰も傷つかないのが当たり前だった『To Heart』的な世界観を壊してきた作品だとかいうようなこともあって、それはそれで1つの記事では収まりきらないくらいの話になっちゃうとは思うのですが、ここではしません。「好き」な理由にはならないですからね。それよりは、やっぱりストレートに中身の魅力を語りたい。

さて、浮気話から入ってしまったせいで、なんかそういう特殊な心の痛みみたいなのを求めるマゾユーザー様御用達の作品みたいな感じの紹介になってしまったかもしれませんが、『白バム』のよさはそこがメインではないと思っています。

むしろ、そういうマゾいのを積極的に求めているわけではない私のような人でも思わず話を読みたくなるような女性陣と、彼女らをもってしてもなお裏切りたくないと思わせる正妻・由綺というヒロインたちの魅力。そして、その魅力を余すところなく表現したストーリー展開と、音楽を含めた演出。これがやっぱりキモじゃないかなと。

たとえば、さっき紹介した冒頭部分。これがうまい仕掛けになってる。いきなりあんたに恋人いますよーって言われても実感わかないし、たぶんみんな大して考えずに、適当にクリックするんですよたぶん。

ところが、ゲーム進めていくとだんだん由綺と付き合ってる実感がわいてくる。由綺一筋でいくにしても、他のヒロインに懸想するにしても、凄いエネルギー使って真剣にそのヒロインのことを考えて、彼女たちを「選ぶ」んです。なんか、藤崎さん狙ってたけどステが運動と容姿に寄ったんで古式さんにしよーとか適当やってた自分が恥ずかしくなったりならなかったり。そうやって物語にぐっと入り込んでいけるのは、やっぱりすごく楽しかったなァ。

個人的には美咲さんがホント好きで、彼女の葛藤とか、身を引こうと決意してもやっぱり戻ってきちゃうところとか、その後の嬉しいような切ないような反応とか、あと全身から漂う幸薄そうなオーラとか、全部ひっくるめて超愛おしい。最終盤、金網のシーンは今までプレイしてきたエロゲーの中でも屈指の名シーンだと思っています。

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そんなこんなで、ストーリーは三角関係もの・浮気ものとして目新しくもないのですが、登場人物が魅力的で、その彼女たちのことを考えてああだこうだ思い悩めるところがすごくよかったです。

あと、ちょっと目線が変わりますがテキストも好きなので触れておこう。

『白バム』は基本、冬弥くんの一人称視点で書かれていて、それ自体は珍しいことでもない。普通に冬弥くん視点で読み切れるし、感情移入してやってた1、2回目あたりは特に問題なかったんですが、途中で「あれ?」と思うところがでてきました。というのは、冬弥くんの言ってることとか解釈おかしくないか? という。

どうでもいい日常会話とかはそうでもないんですけど、肝心なところで彰(親友)に向けてる目線とか、はるかへのコメントとかが、どうもズレてるなという感じ。いわゆる鈍感系主人公みたいなわざとらしいズレかたではないのですが、事実なのかどうなのかよくわかんない、冬弥くんの解釈によって捉えられた現実が微妙に混ざってるんですね。

それがいちばん大事な出方をしていたのはたぶん、次の場面。由綺ルートのクライマックスです。

「由綺…?」
俺は勇気を出す。
「英二さんのこと…好きなの…?」
嫉妬からでも、由綺を責める気持ちからでもなかった。自分自身の、由綺への気持ちを確かめる為の(或いはとてもエゴイスティックな)問いかけだった。

由綺は俺をじっと見ている。涙の粒は、心なしかずっと小さくなったような気がする。
「判らない…」
由綺は頷いた。
「私…緒方さんのことが好きなのかなんて…。好きかも知れないし…そうじゃないかも知れない…。どうなのかなんて…」
「そう…」
それでも俺の中に、彼女を問いつめようとかいう気持ちは浮かばなかった。代わりにわずかな寂しさと、そしてさらに由綺を想う気持ちとが少しずつにじんだ。

ここの「頷いた」が引っかかるんですよ。「好きなの?」と聞かれて「判らない」なら首をふりそうなところですが、由綺は頷いています。で、現実に由綺はどういう動作をしたかはわからないんですけど、少なくとも冬弥くんはこれを「頷いた」(由綺は英二が好きだ)と解釈している。そう読むと、後も割としっくり読めたりします。

もちろん私の解釈がおかしいかもしれないし、極論ここライターさんのタイプミスかもしれないんですけどね。

ただ、現実にそういうフィルターをかけちゃう冬弥くんがどういうヤツなのかとか、そのフィルターを通して見ていたヒロインたちってフィルター取っ払ったらどうなるんだろうとか、そういうところから登場人物たち(冬弥くんも含めて)の姿が違って見えてくる。

中にずっぽり入った状態から少し距離をとったときに、また奥行きが出てくるのはテキストの力だと思います。どんどん登場人物たちに対する関心が高まっていって、1つ1つのセリフや場面をじっくり見ようという気になるんですよね。それでまた彼女らが好きになるという好サイクルが達成されていました。

と、なんだかまとまらない感じになってしまいましたが、まあ好きな作品について書くとあれもこれも書きたくなってとっちらかるのが宿命ということで勘弁してください。

明日は『Phantom』予定。今度の記事はもっとうまくやるでしょう……(フラグ)。