「ネット炎上」の保険ができたという話。

 ▼「「ネット炎上」を補償 損保ジャパン、国内初の保険 」(日本経済新聞)

 損害保険ジャパン日本興亜は6日、インターネット上で企業のマイナスイメージにつながる情報や批判が広がって「炎上」した場合に備えた保険を発売する。炎上の拡散防止やメディア対応の費用を補償する。従業員の不祥事やキュレーション(まとめ)サイトも対象になる。ネット上の炎上を対象にした保険は国内で初めて。

 ▼「これで「バカッター」も大丈夫? 国内初の「ネット炎上」保険」(BuzzFeed Japan)

企業が「ネット炎上」した場合に備えた保険を、損害保険ジャパン日本興亜が3月6日から販売する。ネット炎上を対象にした保険は、国内初。

損害保険ジャパン日本興亜・広報によると、保険でカバーされるのは、「ネット炎上」が起きたあと、炎上の拡散防止と原因究明のために、コンサルティング会社に対策を依頼するための費用。報道機関に対して、どんなリリースをするかなどメディア対応も含む。

炎上時には、ネット炎上対策を提供する「エルテス」と「SOMPOリスケアマネジメント」が連携して企業をサポートする。

想定ケースは……?
想定されている炎上の典型例は、たとえば従業員の行為が、ネット上で問題にされるケース。具体的には次のようなものだ。

・企業の従業員がツイッターで投稿した写真に、個人情報が写り込んでいたケース。
・不動産仲介業者の従業員が「有名人が来た」などと来店者の情報をツイッター上にあげたケース。
・飲食店店員の不衛生な行為が、ネットで騒動になったケース。
・従業員の不注意な投稿で、内部情報が漏えいしたケース。
・従業員のプライベートな投稿でも、企業と紐付いたかたちで批判が集まった場合。

また、その会社が提供する、サービスに対するクレームも想定しているという。たとえば、次のようなケースだ。

・商品に異物が混入していたことがツイッター上で実況中継されて、企業対応の内容にも批判が寄せられるケース。
・企業のサービス内容や価格に不満を持ったユーザーがブログで取り上げ、ネット上で拡散したケース。

昨年批判を浴び、閉鎖されたディー・エヌ・エー(DeNA)の医療情報サイトのような「キュレーションサイト」も対象。サイトに掲載した記事が炎上し、批判が殺到した場合なども、保険の対象だという。

一方で、意図的に世間に注目させる目的で炎上を引き起こす「炎上マーケティング」の場合には保険金は支払われない。

保険の支払い限度額は1000万円で、保険料は年額50~60万円。企業が炎上した場合、収束までに3カ月程度かかることが多く、第三者に対処を頼んだ場合の費用は、1カ月あたり300万円程度かかるのが一般的だという。

【訂正】初出時、保険料は月額50~60万円としていましたが、年額50~60万円の誤りでした。

なんか昔、エイプリルフールのネタでこういうネタありましたね。

 ▼「炎上保険の取り扱いを開始いたしました | アカデメイア損害保険」(エイプリルフールのネタ)

よもや現実のものになるとは思ってなかっただろうなぁ。火災保険のフレンズでもあるまいに。たーのしー。

面白い試みだとは思うのですが、「炎上マーケティング」と「うっかり炎上」の区別をどうつけるのか。また、そもそも炎上によって生じる損失を企業・保険会社とも厳密に数値化できるのか、といった素朴な疑問が残ります。

とはいえ既にこういうのもあったみたいなので、市場からの要求はあったってことなんでしょうか。

 ▼「損保ジャパンなど3社が「ネット炎上対策パッケージ」─月35万円で炎上投稿の監視からマスコミ対策まで支援」(engadget)

損保ジャパン日本興亜およびエルテス、SOMPOリスケアマネジメントの3社は、ネット監視サービスと緊急対応機能、そして損害保険をセットにした企業・団体向けサービス「ネット炎上対策パッケージ」の提供を、12月1日に開始します。月額は35万円。

同パッケージは、ビッグデータによるリスク検知ソリューションを手がけるエルテスを主体として、SOMPOリスケアのマスコミ対応支援サービスと損保ジャパン日本興亜の損害保険を組み合わせたサービスです。

通常時は、エルテスが提供する24時間365日体制のネット監視サービス「Web リスクモニタリング」を活用し、TwitterやFacebookなどのSNSや、ネット掲示板といったソーシャルメディア上の投稿を監視。ネット炎上を未然に防ぎます。

万が一炎上が発生した場合には、エルテス側が緊急対応として炎上レポートなどの一次対応をサポート。さらに一週間経過しても沈静化されない場合は、緊急時情報発信コンサルティングなどの「ネット炎上対応サービス」を使い沈静化を図ります。合わせてSOMPOリスケアのサービスである「緊急時マスコミ対応支援サービス」も利用可能。緊急記者会見支援などを行えます。

加えて金銭的な面でも、それら緊急対応サービスを利用した費用の9割を、損保ジャパン日本興亜の損害保険で補償するという内容です。

ニュースリリースでは「昨今、ネット炎上の件数が増え続けており、企業や各種団体にとって炎上対策は大きな課題」だとして、万が一の際のリカバリー費用を圧縮できる同パッケージの意義を強調しています。

これまでは「リテラシー」の問題とされてきた部分を外に投げるということの面白さもそうですが、自分たちではどうにもならないところで「炎上」案件が発生する可能性がある企業がリスクに備える、あるいは備えているという建前を作るのには使えそう。また、こうしてマーケットに載ることで、これまで曖昧だった炎上に関するさまざまな事象に線引ができるかもしれず、そのあたりも注目したいところです。