先月、マガスペこと講談社の『マガジンSPECIAL』の休刊が決定しました。

 ▼「講談社「マガジンSPECIAL」、休刊へ

8月1日、2017年1月20日発売の2月号で休刊することを発表した。同誌は「週刊少年マガジン」の増刊誌として、1983年9月に発行を開始した月刊誌。主な連載作品に、東直輝『爆音伝説カブラギ』、川三番地『Dreams』、小林俊彦『ぱすてる』など。84年1月5日発売号で、同誌最多となる45万部を発行。今月の8月20日発売号は5万部を予定している。

それを受けたであろう今月発売のマガスペでは、『Dreams』の超展開が非常な話題に。

『Dreams』は原作七三太朗、漫画川三番地の高校野球漫画で、1996年に週刊少年マガジンで連載が開始され、同誌上に移籍。都合20年69巻(2016年9月25日現在)の長寿作品です。(余談ですが、連載開始から同じ夏を20年間ずっとやってる超スローペース作品でもあります)

 ▼「連載誌休刊の長寿漫画『Dreams』超展開に騒然! 読者も呆然「ヤバい」」(KAI-YOU)

ヤバいヤバいとは聞いていましたが、私も読んで目が点になりました。実際どのようなものかは近所の本屋さんなり電子書籍版なりでご確認いただくとして、私の感想は、ネタではなく「これは酷い」という感じ。

いやまあ、作者のお二人(主に原作の七三太朗氏だとは思いますが)にも言いたいことがおありだというのはわかります。また、同業の漫画家先生からすれば、出版社の横暴に対してよくぞ声を上げたとか、抗議は当然だ、みたいな話が出てくるのかもしれません。連載誌を移籍した経緯も分かりませんからそこに何か事情があるのかもしれないし、20年もの間続けてきた作品が掲載誌の休刊によって打ち切られることのショックは想像することもできません。

しかし、それは読者と関係ないでしょう。

この、過去の久里(主人公)の発言との整合性もほとんど取れないような暴挙、小学生が読んでも何かあったなというのが分かるぶっ飛んだ展開および画(それも途中から急にトーンがかわる)は、誰に向けて描かれたものなんでしょうか。

怒りを表明したければ作品ではなく別の媒体ですれば良い。作品に潜ませるなら、これまで積み重ねてきたものを崩すのではなく、作品を作品として仕上げた上でこっそりと潜ませるのがプロでしょう。こんな、子どもの癇癪みたいなことをされても読者は困惑するばかりです。

特に、雑誌ではなく単行本で購入している層や、これから後5年、10年して読み始める層にとってはいったい何が起きたのか、ということになる(単行本では手直しがあるのかもしれませんが、それなら連載を追いかけている読者を馬鹿にしています)。作者の怒りを表明するのは勝手ですが、読者を巻き込まないで欲しい。

正直、これは一般論ではありません。『風光る』に触れて以来、このお2人の作品が好きであれこれ読み続けてきた(さすがに連載を追いかける情熱は失われていましたが)ファンとしての気持ちが入ってしまっています。ずっと読んできた読者として、馬鹿にされたというか裏切られたというか、こんな話がしたかったのかというか……。

連載が終わるということに対して、寂しさとかそういうものを全く感じなくなってしまったことに対する悲しみみたいなものも含まれて、まあなんとも複雑な気持ちです。

ファンとしての視点を離れれば(つまり内容の整合性とかそういう話をある程度度外視すれば)、おそらくいちばん問題なのはこれで原稿料貰っているということでしょう。とことん自分勝手な主張がしたいなら雑誌に載せなくていいし、その報酬を読者から貰わなくて良いはずです。いっぽう、雑誌に載せて金を取るなら、作品をきちんとしたものにすべきではないか。特に『Dreams』は長寿の看板漫画として雑誌の重要なポジションを占めているのですから、載れば目当てに買う・読む層はいるわけです。そういう責任を放棄しているのがよろしくない。正当な報酬が支払われていないとかそういう話ならボイコットもありだと思うんですが、

良い喩えであるかわかりませんけれど、会社の待遇が気に入らないからって電車の運転士が脱線上等の無茶苦茶な運転して良いって話にはならないでしょう。

いや、あと4回連載は残っているのでここからきちんと収束させてくれる可能性はあります。まだ評価を下すのは早すぎるのかも……。「作者がキレている」という事前情報を持って読んだためにそうとしか見えなくなっているだけで、実際にはちゃんと終わらせる流れの中にあるのかも。

そうであることを祈りつつ、様子を見たいと思います。