定期的に話題になるビジネスマナーの1つに「はんこ問題」があります。

目上の人と並びで押印する際には、その人に向かってお辞儀をしているようにナナメにはんこを押す、という話。常識か非常識かはさておき、私は正直、ばかばかしさ・気持ち悪さを感じました。何というか、行き過ぎた要求、という感覚。

ただ、そもそもマナーや礼儀なんていうのはこういうかたちで作られるものじゃないのか、という声があるのも納得できる。

礼儀・マナーか、気持ち悪い悪習かというのの境界はどこにあるのか、というのがちょっと気になりました。

 ▼「書類に上司と並んでハンコを押すときは、上司より下に斜めに傾けてつく。」(現代Business) 

ビジネス界には、自分が賛成しかねる稟議書類にハンコをつくとき、わざと上下を間違えて押し、反対の意思表示をするお偉方が大勢いる。ハンコのつき方一つにも、メッセージを込めることができるものだ。下っ端のキミが上司と並んでハンコを押すときは、上司の並びより、必ず一段下げて押そう。名刺交換と原理は同じだ。

しかも、できれば上司の側に少し傾けて押す。こうすると、キミのハンコがへりくだって上司のハンコにお辞儀をしているように見え、感じがいい。え、何? いくら何でもそれは冗談だろう、だって? とんでもない。大マジである。
たしか去年も「スクール革命!」で取り上げられたせいで、似たような話が出てました。

 ▼「上司に出す印鑑は「左に傾ける」のがマナー? ネットは「狂ってる」「社畜魂だな」と大批判」(キャリコネニュース)

hanko
 
うーん。お辞儀ねぇ……。まあ見えなくもないのかなぁ。

私はこういう文化に触れたことはありませんが、シャチハタが販売している電子印鑑にも「斜めおし」の機能が2008年から実装されたという経緯があるようで、まったく存在しないマナーというわけでもなさそうです。

私があほらしいと思うのは、そんなにはんこの押し方を気にして意味あるのかっていうことと、そんなに気になるならはじめから横より縦に押し順を並べりゃいいんじゃないかというところが原因です。ただ、そういった機能面の無駄以外に、これはマナーや礼儀じゃないだろ、という感じが、すごく強くします。

原因はおそらく、こうしたいわゆる「ビジネスマナー」が一方的なものだからです。

ほんらいの意味の礼儀とかマナーというのは、コミュニケーションの中で「お互いが」気をつけようという相互性に基づいています。もちろん上下関係があるものも多いのですが、その場合でも、上には上の、下には下の守るべきルールがあり、お互いがそれを守ることで気持よくやりとりをしましょう、というのが礼の基本です。

というか、日本人の「礼」意識の大きな部分を占めている儒教とかだとむしろ、立場が上の人ほど守るべきことは多かったりする。

でもこの手の、私から見るとイカれた感じがする「ビジネスマナー」というのは、目上の人に気持よくなってもらうために一方的な配慮・気遣いをするのが前提になっている気がする。それが、なんとも不愉快で気持ち悪いんですよね。ただのゴマすりじゃないかという。

まあ、こういう文化の中で疑問を感じずにやれちゃうというのはすごいなぁと思います。真似したくはないけど。