児童ポルノの単純所持をめぐるお話に、ちょっとうした動きがあったようなので、再び。

 ▼「児童ポルノ規制強化法案 漫画は実態調査せず」(東京新聞) 

 子どものわいせつな写真などの流通に関する規制を強化する目的で、自民党と公明党、日本維新の会が衆院に共同提出した児童ポルノ禁止法改正案について、自民党が「漫画やアニメなどを調査研究する」とした「検討規定」を削除する方向で検討を進めている。漫画の描写などが性犯罪につながっているとの指摘があり、実態を調べるための規定としてきたが、憲法が定める表現の自由に反する恐れがあり、学識経験者などの間に反対論があった。

 現在の法律は、児童ポルノに分類される写真や画像を販売・配布する目的で所持すると罰せられる。

 自民など三党が昨年五月に提出した改正案は、目的を問わずに個人的に持っているだけの「単純所持」も新たに罰するのが柱。加えて、児童ポルノに類する描写があるとされ、社会問題になっている漫画やアニメなどについては、性犯罪との関連を調べ、改正法施行後三年をめどに必要な措置をとるとした検討規定も盛り込んだ

 三党はこの規定について「表現の自由には配慮する」とする一方で「子どもの人権や人格を守る視点も重要だ」と主張。しかし、「作家を萎縮させる」「クールジャパンの象徴の文化を壊す」などとの指摘が相次ぎ、自民党は見直すことにした

 改正案に対しては、藤子不二雄(A)さんなど著名な漫画家が「漫画の多様な表現方法を封じ、世界に冠たる日本の漫画文化を衰退させる」と反対声明を発表。国民にも「児童ポルノの取り締まり強化に便乗して、将来的に作品の表現を過剰に規制する恐れがある」との声がある。昨年六月、参院選を前に行われたインターネット動画サイトの党首討論会でもテーマになった。

漫画やアニメに規制の手が伸びないというのは喜ばしいことではありますが、今回、どういう経緯で「見直し」が検討される運びになったのかは、やっぱり気になります。

記事にしたがえば、「作家の萎縮」や「クールジャパンにミソがつく」というような、権利の本筋とは関係のない搦め手からの議論で見直すことになったように読めるわけですが、もしそうだとしたら、単に世論、利害関係者の多寡といった外的要因でふらふら動いたというだけで、全然問題は解決していないということになるでしょう。

今後、たとえば児童に対する大きな性犯罪が起きてワイドショーを騒がせたり、あるいは児童ポルノ法を推進している団体からの票がほしい議員などが出てきたら、あっという間にちゃぶ台返しをされる可能性があるということなのですから。

この記事の伝える通りだとしたら、一時的な歯止めとしては、ないよりマシ程度のものであって、原理原則に配慮して慎重論が出たわけではない、というところに不安を感じざるを得ません。ただ、このあたりは記事を書く側の解釈で書かれたところなのかなとも思うので、どうなんだかわかりませんけどね。

いずれきちんとまとめたいとは思っているのですが、いまは多少の不正確さに目をつぶりつつ非常に図式的な解釈をすれば、二次元に対しても児童ポルノをあてはめて規制をしていきたいと考えている人というのは、私が見る限り下の3つくらいが代表的なパターンでしょうか。

1.二次元エロが現実の児童ポルノを活性化させている。
  (犯罪の温床説)
2.現実と二次元の因果関係はさておき、二次元でも児童を虐待するような行為は控えるべき。
  (実際に児童ポルノ被害に遭った人への配慮なども含めて)
3.もっと根が深くて、そもそも二次ヲタ全般がキモい。日本の恥。駆逐すべき。 

どれか1つに絞られることもなく、合わせ技みたいになってる人も多いですが、結局、こういう意見が世間的に共感を集めやすいのに対して、「表現の自由という根本的な権利を守ろう」という主張は、いかにも抽象的でわかりにくい。

いまの日本人は別に、特高警察に捕まって拷問されたとかいう経験がないから、表現の自由が侵害されることでどういう苦痛があるか、やっぱり実感としてわからない(私も含めて)というところで、この手の議論の趨勢は決まっているようにも見えます。

そう考えると、「搦め手から」しか勝ち目はないのかもしれませんけど、その時点ですでに撤退戦というかなんというか、詰まされてる感じがしちゃいますよねぇ……。どうなるんでしょう、ホント。