大学での出欠を親が確認できるシステムを、近畿大学が導入しているという話。

 ▼「子供の学業気になります…近大、保護者向け出欠・成績紹介サイトを全キャンパスへ」(産経WEST) 

 近畿大は、昨年9月に東大阪キャンパス(東大阪市)を対象に開設した「保護者用ウェブサイト」を、全国にある残りの4つのキャンパスに拡大した。学生の講義出欠や出席率、成績などをパソコンやスマートフォンなどで保護者らが簡単に照会できるのが特徴で、東大阪キャンパスでの先行導入が好評だったことからサービスの対象者を広げた。

 同サイトは、保護者らが大学から発行されたユーザーIDとパスワードを使って専用サイトにアクセスする仕組みで、学生生活や大学の活動について保護者らにより理解してもらうのがねらい。全国の大学でも珍しい取り組みだという。

(中略)

 保護者からの問い合わせについては、大学の窓口担当者がいない夜間や週末の問い合わせが半数以上を占め、「保護者らにとっては窓口の使いやすさにつながったのではないか」(広報部)と分析している。

 例えば、「(子供は)すべての授業に出席しているはずなのに、出席率が100%になっていないのはなぜか」「学部ごとの個別懇談会はあるのか」などの問い合わせがあったという。  

何というか……。

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もちろん、いろいろな言い分があるんだろうとは思います。子どもの様子がきになる親御さんの気持ちが分からないではないし、子どもに「投資」として教育を受けさせている以上、その結果がどうなっているかについてモニタリングする権利がある、と言われればそうなのかもしれません。また、長期離脱をチェックすることで事件や事故を未然に防ぐなどといったメリットもあるでしょう。

ただ何というか、世の中のことはだいたい、いいこともわるいこともあるわけで、導入すればメリットがあるのは当然だし、いっぽうでデメリットも発生しているはず。そして、本件について言えばそのデメリットは、かなり「致命的な」部類ではないかと思うのです。

そもそも、大学は学問をしたい人本人が望んで行き、そこで学ぶところのはずです。それが建前であろうが何であろうが。学問の自由で大学の自治が認められているというのも、そこにいる人びとの自律性が重んじられているということと無関係ではないでしょう。

しかし、今回のこれは、明らかに「保護者」へのサービスです。大学の学費を保護者がもっているのは事実ですし、百万歩ゆずって、彼らが親によって大学に「行かされている」という現状を認めるとしても、なぜ保護者に対して大学がリソースを割く必要があるのか。そのサービスは誰のためにあるのか。

いや、個人的な感想をいえば、そもそも大学が「サービス」を提供するのがおかしいという気もします。教育産業がサービス業になり、各方面に気配りをしなければ生き残りすら難しくなったという事実は百も承知ですが、やはりそういう路線はロクな結果にならないなという。

学問が学問としての自律性を保つためには、海外のように「理解ある」人びとの寄付とかに支えられるしかないのでしょうか。