majikon

今回は君の話じゃないんだなぁ……。

さて、本題の方へ。すたじお緑茶さんの『はにかみCLOVER』をプレイしていて、「お?」と思ったのがこれ。

majinoline2

 具体的にはテキストのほうです。背景じゃなくて。

 majinoline

「彼女達の防御網はもはやマジノ線並に強固なので……」

え、マジノ線(ライン)って強固なの? と。

 ▼「マジノ線」(Wikipedia)

マジノ線(マジノせん、仏: Ligne Maginot、独: Maginot-Linie、英: Maginot Line)は、フランス・ドイツ国境を中心に構築されたフランスの対ドイツ要塞線である。当時のフランス陸軍大臣アンドレ・マジノ(André Maginot、1877年 - 1932年)の名を冠してマジノ線と称する。

(中略)

難攻不落を期待されたが、第二次世界大戦開戦後の1940年に、ドイツ軍はマジノ線を迂回しアルデンヌ奇襲により国境を超える。アルデンヌの森は自然の要害で、重砲や戦車は通れず行軍は不可能であるとフランス軍は判定していたため、要塞構想の範囲から全く外れていた。しかしアルデンヌから国内に雪崩れ込んだドイツ軍の前に、フランスは満足な抵抗もできぬまま敗北を喫するに至った(ナチス・ドイツのフランス侵攻)。
 
1944年、ノルマンディー上陸作戦を経て連合国軍が反攻を開始するとドイツ軍は守勢に回った。連合軍が独仏国境に迫ると、マジノ線の要塞はドイツ軍の防御拠点として利用された。しかし、一定の防御効果はあったものの、長期にわたって連合国軍を阻止することは出来なかった

私は軍事系にそんなに強くはありませんが、それでも「マジノライン」が壮大なネタ扱いされてるのは知っています。要するに、現代の万里の長城よろしく築いたけど敵は横から回りこんできたので役に立たなかった防衛ラインってことですよね。

ですので、「マジノ線」というのは「時代遅れ」だったり「机上の空論」だったりという、どちらかといえばマイナスの意味の象徴として使われることが圧倒的に多いと思うのですが。

たとえばこれ。

 ▼「フランス大統領選、「情報統制」を打ち破ったツイートの威力」(日経Business Digital)

 第1回投票後、ロイター通信(英語)は、同法を「マジノライン」に例えて報じていた。マジノラインは、第1次世界大戦中、ドイツとの国境に建設した対ドイツ要塞で、巨額を投じたこともあり「難攻不落」とされた。しかし、第2次世界大戦では、ナチスの戦車がマジノラインがない森に侵入し、あっさり越境した。

 決選投票の日、1977年の法律は、まさに「マジノライン」となった。今後、見直されるしかないだろう。敗北したサルコジ氏でさえ、選挙戦最中にラジオのインタビューにこう答えている。

 「法律が時代遅れになったのは、明らかだ。世界の人がフランス人とコミュニケーションを妨げるようなデジタルの国境を築くことは不可能だ」


フランスの選挙法が、もはや現代のデジタル・コミュニケーションに対しては「マジノ線」にしかなっていない(仰々しく動きを止めようとしているけれど、結局役立たずの法でしかない)というニュアンスです。

いやまあ結局攻略の段階になると、主人公はその「マジノライン」を突破して遥そらえみるのハートを射止めるのでザル防衛ラインで間違ってはないのかもしれませんが、この段階ではそういうニュアンスで使ってないしなぁ。

この一事をもってライターさんの知識不足や技術不足を云々するつもりはありません。また、私の知識不足で「マジノ線」を「強固な防衛ライン」として使うのが一般的ということならもう恥ずかしくて自分で防空壕でも掘って埋まりたいところではあるのですが、一応そうではないという前提で話をさせてください。

文法ミスや誤字脱字と違い、「うまいこと言ったつもりがコケてる」のを見ると、私はどうしても、「ゲームの外側」が気になり始めてしまいます。

というのは、もしこの発言を主人公が素でしている(そしてライター氏が意図的にそう書いた)のだとしたら、この主人公は若干表現に詳しくなくいお間抜けさんで、しかもそのことが作中で指摘されないので、この事実はユーザーだけに特権的に知らされる事実であるということになります。つまりユーザーは、作中人物の誰も気づかない「間抜けな主人公」を外から眺めるポジションに強制的に置かれるということになるでしょう。

うー、ちょっとわかりにくいかな。この作品でいえば、真希奈みたいな痛々しい厨二の人が「勘違い知識」を振り回して普通と違うことを言っていても気にならないけど、そういうポジショニングじゃない人がやってるのが問題、という感じで。

いっぽう、意図しないものだとしたら、「本来描きたかった(だから作中ではそのように扱われている)主人公」と、「実際に描かれている主人公」の間にズレが生じるので、やはり物語の「中」に入り込むことが難しくなるのです。

んで、そういうのが気になって一度「外」に出てしまうと、ふだんなら気にならなかったようなことまで次々に気になってきちゃうんですよねぇ。困ったことに。たとえばお友達の緑(名前ではなくて髪の色)が「腐女子」と言われてるわりに、「それは「腐」の特徴じゃないだろ」というようなところを猛烈にアピールしてくるのが引っかかるとか……。

いま、そういう状態に突入してしまってプレイの足が鈍っています。

まあそういう細かいことが気にならないくらい勢いのある文章・作品というのも少なくないのですが、本作はそういう感じではない。

まだ2人攻略くらいの段階で、似たようなこと(「外」を意識してしまうような表現やセリフ)が多くて、どうも没頭しきれていません。そういう「重箱の隅」だけではなくて、全体的に設定が相当ぶっ飛んでいて、若干ついていけなかったりもするのでその影響も大きいのですが……。キャラ・CVは良いのにちょっと残念です。最後までプレイするとは思いますけれど、大満足まではいかないかなー。

あ、どうでもいいことを思い出した。エロゲーだと『ランス』でもゼスが対魔人に築いた要塞がマジノラインっていう名前でしたが、あれはそこそこ活躍してましたね(笑)。