ギャグっぽいタイトルに反して、内容は結構真面目というかシリアスな話。

 ▼「処女の女子学生に奨学金、南ア自治体で物議」(AFP BB NEWS) 

【1月23日 AFP】南アフリカのある自治体で女性首長の発案により、女子学生が処女のまま大学を卒業することを奨励する新たな奨学金制度が導入され、権利擁護団体などから怒りの声が上がっている。

 この奨学金は、同国南東部クワズール・ナタール(KwaZulu-Natal)州ウトゥケラ(Uthukela)区で女性区長のドゥドュ・マジブジョ(Dudu Mazibujo)氏が考案した。同区広報担当者は「少女たちが純潔を守り、性的行為から身を遠ざけ、学業に集中する」ことを奨励するのが目的だと説明した。奨学金を認められた学生は、休暇の終わりなどに定期的な検査を受ける必要があり、処女でなくなっていた場合には奨学金は打ち切られる。

 このニュースが報じられると、市民団体などの間に衝撃が広がった。ある女性団体は違憲だと断じている。女性の人権擁護団体「女性に対する虐待に反対する人々(People Opposing Women Abuse)」は「少女たちが奨学金を得るために、処女かどうかの検査を受けさせらることに衝撃を受けている。納税者の税金が、少女たちの権利の侵害、そして憲法違反に使われている」と非難している。(c)AFP

この記事を見る限り、人権団体は「処女かどうかを確認する」ことが「虐待」であるとしているようで、その発想には一理あるといえばあるのでしょう。権利の侵害、というのは性的な辱めを受けるということだけではなく、性交渉の自由も奪われる、というような意図もあるものと思われます。

しかし、一方でこうした対応に対して、お国柄を考えると「やむを得ない」と見なす動きもあります。

たとえば、自衛意識の向上。南アは世界でも最も「レイプの多い国」と言われており、少なく見積もっても年間50万人がレイプ被害にあっているという調査結果がでています。重複被害があるにせよ、これは相当多い。

 ▼「【アフリカ発!Breaking News】年間50万人が被害。男性の25%が加害経験あり。4分に1回レイプが起こる国。(南ア)」(Teach Insight)
世界で最もレイプ犯罪が多いと言われる国・南アフリカ。先日17歳の少女がギャングにレイプされ残忍に殺害されたことで、ついに大統領をはじめ国中がこの卑劣な犯罪を撲滅しようと立ち上がった。

南アフリカのレイプ犯罪発生率は世界でも群を抜いて高い。2011年4月から2012年3月末までに報告されたレイプ件数は6万4514件。これでも前年度の6万6196件よりは減少しているものの、2010年度に日本が報告した1289件、同年のインド2万2172件に比べると圧倒的なその多さに驚愕する。

ある医学調査委員会が調査を行った結果、南アフリカ男性の4人に1人が「レイプをしたことがある」と答えていたことが分かった。また上記の6万4514件というレイプ件数も報告されているうちの9分の1だと言われており、実際にレイプ被害に遭っている南アフリカ女性は年間50万人以上と推定される。

高等教育を受ける女性に、処女であることを奨励するのは、こうした事態に対して高い自衛意識を持って欲しい、ということもあるのではないでしょうか。

また、南アといえばHIVの流行が長らく社会問題と化していることでも有名。

 ▼「南アフリカでの活動 HIV/エイズの活動」(日本国際ボランティアセンター)

2013年7月 2日 更新

南アフリカでは、全国で560万人、大人の5人に一人がHIVに感染しており、一国内でのHIV陽性者数は世界最多です。多くの特に働き盛りの年代が命を落とし、親のいない子どもが増え続け、現在210万人のエイズ孤児がいると言われています。一方で、2004年からは公的医療機関にてエイズ治療薬(ARV)の無償支給がはじまり、HIVの感染「=死」ではなく、生涯をかけて付き合っていく慢性病になりつつあります。

HIVが南アフリカにとっていかに深刻な問題かということは、こちらのサイトなどで詳しいです。

 ▼「Pandemics Activity 3 Strategy 2 AIDS Africa」(author STREAM)

 sahiv

実際、HIVの感染拡大以降、南ア(にかぎらず、アフリカの多くの国)の平均寿命が急落していることがわかります。
 
国民の税金を使い教育を受けた女性が、HIVに感染して早々とリタイアする……ということになると、それは国家的な損失になるというふうに解釈できるかもしれません。

上記記事の人権団体の語るような文脈がどこかで流布している影響なのか、それともそういうのとは無関係なのかはわかりませんが、Twitter等でも今回の「処女検査」をきわめて口汚く罵り、批判している方を何人か見かけました。

それが生理的嫌悪であるというのなら特に語ることはないのですが、人権、PCと言った社会的な文脈に落とし込んで批判しようとする人が多く、少し違和感を感じたんですね。

私は、必ずしもこうした奨学金制度(処女)に賛成するわけではありません。しかし、現代日本の感覚で、こうした制度に対して「女性をバカにしている」とか、「処女じゃないとだめとか気持ち悪い」のような安易な批判はあまり意味が無いと思います。やはりある程度は、その国の文化的背景を勘案する必要があるのではないでしょうか。