Twitterで話題になった、「トンデモ先生」の話。ちょっと内容がデリケートなので要約は避け、長くなりますが大部分を引用します。

 ▼「「生きてる意味あるの?」「くるくるぱー」小学校女教師による“陰湿”いじめで不登校→裁判全貌!」(TOCANA) 

■小学校2年生の少女が教師から暴行・暴言

 さいたま市立の小学校に通っていたAさん(当時、2年生)が、担任の女性教諭(50代)から暴行や暴言を吐かれるなどし、心に傷を負ったとして、2013年11月に元担任、校長、教頭(いずれも当時)とさいたま市を相手取り、謝罪や慰謝料543万円を求める裁判を起こした。来年の3月には原告、被告双方の証人尋問が行われる。

 訴えているのはAさん(12)と母親(47)だ。さいたま地裁では、口頭弁論が開かれるたびに、この事件に関心のある若者たちや保護者が30人ほど傍聴に訪れている。

■小学校で何が起こったのか…

 証人尋問は16年3月4日。

 原告側はAさんと母親、そして他の児童の聞き取りも行った弁護士。被告側は元担任と当時の校長、また事後対応をした後任の校長、当時の教頭とアンケートをとるときに立ち会った教務主任だ。

 訴えによると、Aさんは09年4月、小学校に入学。2年生のときの担任から、暴言や暴行を受け、不登校になった。現在は中学生になっているが、不登校の気味であることは変わらない。

 Aさんは日記にこう書いた。

<2年生になってから算数の時間で問題をといている時にできないとみんなの前でAの事を、くるくるぱー、ってやったり、Aと目があったときに、くるくるぱーといってバカにした>

 9月には、Aさんが名札を忘れたことがあった。そのとき、元担任は笑ったという。

「なんで笑うんですか?」

 そうAさんが聞くと、

「名札を忘れたから」

 と元担任が答えたという。

 テストのときに、Aさんの後ろにいた元担任が立ち、「早く、早く」と急かし、背中を叩いたことも日記に書き留めている。

 さらに他の児童・Sさんも、授業中に椅子に座っていたところに元担任が近づき、腕と髪を引っ張られ、椅子から引きずり落とされたことがあったという。そして、そのまま引きずられるように、廊下に出され、そのまま立つように指示された。Aさんだけがターゲットになっていたわけではない。

 また、Aさんが隣の席の児童に算数のやり方を聞いていたときに元担任が、「先生が話をしているのに何でしゃべっているの!」と大声で怒鳴ったこともあった。そして腕ごと強く引っ張り上げ、倒され、そのままの状態で引きずられたという。 

(中略)

■退職後の学校側の対応

 この翌年、元担任は退職。また当時の教職員の半数以上が入れ替えとなった。別の保護者が体罰の相談をしていた教員も人事異動も行われている。

 元担任の行為は、保護者の中では話題だった。母親は、Aさんのクラスメイトとその保護者に自ら聞き取りを始める。すると、同級生32人中、子どもと保護者の25組から話を聞けた。


<Aさんに対してもいろいろな形で暴力を振るったり、暴言を吐いたり、廊下に立たせたり、ボールペンで叩いた。理由は言わないのでわからない>(Bさん)


<先生のことで一番覚えているのは体罰です。かなり強く腕をつかむので、腕にあざがついた友達もいます。Aさんを叩いていたことは憶えています>(Cさん)


 元担任による暴言や体罰の対象になった児童は他にもいたようだ。

「周囲の人たちがアドバイスをしてくれたので、電話や手紙から始めた。すると、ほとんどの人が話してくれた。思った以上に、Aのことを気にかけてくれ、うれしかった」(母親)

 同じクラスだった男児の保護者も証言する。

「息子に聞いたところ、『なんで掛け算ができないの? 勉強できない子は学校にくる意味あるの? なんで生きてるの? 生きている意味あるの?』と言われたんです。学校に行きたくなかったようですが、『お母さんが心配するから言えなかった』と話していた。『(Aさんは)僕らがやられることよりも、もっとひどいことをされていた』とも言っていた」

 傍聴に来ていた女性も数年前、学校の廊下で教諭がヒステリックに男児に怒っていたのを見たと話す。

「男の子が、鼻をかんだのかどうかわからないが、学校のティッシュを一枚抜いたようで、『あなたは自分が持ってきたティッシュを使うのならわかるけど、学校のティッシュをなぜ抜くの? それは犯罪だから、警察に連れて行きます』と言っていた。見たときは驚いた」

 卒業式のとき、校長室で卒業証書を受け取るはずだったが、Aさんは受け取らなかった。「せめてもの抵抗だった」(母親)。

 今は中学生になり、小学校とは違う環境になった。中学校への引き継ぎをしっかりしてくださいと、母親は願い出たが、誰にどのようにしたのかは曖昧になっている。

 Aさんは1日中、学校にいることができず、半日でも疲れてしまい、帰宅すると寝てしまう。最近も裁判の証言のために陳述書を書いたが、翌日は1日寝込むほどだった。それだけエネルギーを消耗しながらの陳述書だったのだろう。

 その陳述書では次のように書いている。

<この「クルクルパー」は元担任は毎日のように、一日に何度もいろんな子にやっていました>

<私が元担任にされたことで一番嫌だったことは、元担任に教室から引きずり出されて、教室の外に立たされたことです>

<授業でみんながプリントやノートを書いて下を向いている時に、元担任は教室を回りながら通りがかりに、私の頭を肘でこづいていくことがありました>

<元担任に教室の外に引きずり出されたことが一番ショックだったけど、友だちがそういうことで遊んでくれなくなったこともすごく悲しかったです>

 元担任は退職したが、現在は都内の教育委員会で図書支援アドバイザーや、中学校で学校司書をしているという。

 母親は「抵抗できない子どもを支配しようとしていたのではないか」と話す。Aさんは「悪いことをしたのになんで逮捕されないの?」と話し、「4年間という時間を返して欲しい」と願っている。

 市教委は争う構えをみせている。市側は準備書面で「授業中に立たせることはあったが、原告側の主張する状況が違う」など、ほぼ全面的に否認。筆者の取材に対しても、「原告から、教員による暴行、虐待の主張がなされているが、そのような事実はないと考えている。それ以上のコメントは、現在、裁判が行われており、差し控えさせていただく」(市教委教職員課長)と答えた。

 来年の3月4日にはAさんは元担任の前で証言をすることになった。彼女は当時、元担任を目の前にすると言いたいことが言えなかったというが、法廷では元担任から見えないようにする遮蔽などは不要だとしている。希死念慮が強いため、主治医がつきそうことになるが、今度こそ、Aさんは元担任に言いたいことを言うチャレンジをしようとしている。
 
注意してほしいのは、この件はまだ事実関係のレベルで係争中であり、書かれていることがそのまま事実とは限らない、ということ。

ただ、この手の教員の問題というのは現状、比較的日常的に、いろいろなところで見聞きする話でもあります。これが特別というわけではない。ニュースになったから目立っただけで。

透けて見えるのは、「教師の質の低下」と「教師の多忙さ」です。

まず、この「元担任」のような人が簡単に採用され、教育現場に配置されるということが大きな問題であることは言うまでもありません。と同時に、なぜそのような状況が放置されがちか、ということも考えなければならず、その原因は、教師が忙しすぎるからだ、というところにあります。

いわゆる非常勤講師のような、授業単発を受け持つ教師ならともかく、担任を持つようなその学校専任の先生というのは、ハッキリ言って激務であると聴きます。私も何人かそういう知り合いがいますが、日々の授業に加え、部活動の監督、学校の校務、そして親への対応などが入ってくると、もうきりきり舞いの忙しさ。朝8時に学校に行き、帰りは夜8時頃。土日は部活に行き、部活がないテスト期間は採点や成績付けの作業。学校が休みの期間になると保護者面談……。という具合です。

もちろん、「ブラック」と呼ばれる業種に比べればマシだという人がいるかもしれませんが、それは労働時間がマシだというだけで、その状態で30人とか40人の、担任を持ったクラスの学生をじゅうぶんに指導・監督できるかというと、やはり厳しいと言わざるを得ないでしょう。

そのような状況だから、先生の手がまわらなくなると困る。そこで、多少問題のある先生がいても「見て見ぬふり」になることがあるし、先生同士も余裕がなくなってお互いピリピリした雰囲気になったりということもあるようです。

まあ、あんまり学生にとって良い環境ではないですよねぇ。

私立の、お金が潤沢にあるような学校はどうだか知りませんけれど、ごく一般的な公立の学校は多くが似たような状態だと聞きます。そんなことだから、先生の目が生徒に行き届かず、また先生になりたいという優秀な人も減り……という悪循環が起こっているのでしょう。

教育改革として、大学の授業のあり方やら高校の学習指導要領の話やらは盛んに取り沙汰されますが、こういう、もっと基本的な話はあまり出てきません。

ぶっちゃけていえば、これは「お金」の問題です。

専門の事務職を雇う予算をつけたり、教員の数を増やすことができれば。そして、教員に対する報酬をもっと多くできれば、だいぶ緩和されます。たとえば部活を専門に見る先生、というのを用意するだけで、状況は大幅に改善されるでしょう。

教育制度がダメになっていくと、その教育を経て育った生徒たちが社会人になり、教師になるわけですが、これがうまくいく理屈がありませんので、どんどん「負のスパイラル」が起こって教育が崩壊していくことになります。10年、20年先を見据えたときに、これでは日本という国を支える「人材」が本当にヤバいことになりかねない。

少子化がすすみ教育産業の衰退が叫ばれるいまが、ギリギリ踏みとどまれるチャンスという気がします。なんとか、ここで日本の学校教育を立てなおして欲しいし、そのためにはやっぱ予算を潤沢に用意したほうが良いと思うんですけど、どーなんでしょうね。