まとめサイト経由で伝わってきたこの話。

高額な図書を出版し、それを国会図書館に納本することで書籍代の「半分」を手に入れているというもの。

 ▼「国会図書館への納本義務を悪用してボロ儲け?出版社が詐欺の疑いで炎上!」 (探偵WATCH)

国内の出版物は国立国会図書館に納本しなければならないことが、法律で定められている。この納本義務の制度の悪用を疑われた出版社に対して、一種の詐欺行為なのではないかという疑問の声が相次いだ。

1冊あたりの定価が6万4800円であり、90巻以上にわたって刊行されている書籍がAmazonで販売されていると発覚したことが、騒動の発端だった。しかも、出品数はそれぞれ1冊である。Amazonに書誌情報として記載されていた出版社は、検索してもHP等が見当たらない。だが、国会図書館のデータベースで検索すると、実際の出版社名は異なること、Amazonに記載されているのは編者とされる組織名であることが判明した。当該の出版社の刊行物の大半は、5万円から10万円もする高価なものばかりだ。

なるほど、そんな手があったかというのは冗談として、しかし、これ実は結構難しい話だと思うんですよね。

「探偵ファイル」さんで公開されている、出版物の「中身」の一部はこんな感じです。

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これに6万はねーだろ! と言いたくなるかもしれませんが、しかし、本の価値は客観的に決まるものなのでしょうか。

私はかつて、明治の法制度と宗教に関する本を買ったことがあるのですが、その本は完全発注制で、注文を受けたぶんだけ製本して送るというもので、実に1冊20万円強というとんでもないお値段でした。ちなみに、いまは家でほこりをかぶってます。

で、その本の内容に20万の価値があるか? と言われれば、正直ないと思います。ただ、たぶん全国に読みたい人、必要な人が10人くらいいて、うち2人とか3人がほしい、というオーダーに答えてくれているからアホみたいに高くなるんですよね。

でも、ふつうの人からすれば2000円でも買う気にならないだろうし、明らかではないにしてもボッタクリといえばそうだろうと思います。これを国会図書館に納本すれば10万円もらえるのなら、やっぱり詐欺じゃねーのかと。

もちろんこの場合、ただ内容を読みたいというだけではなく、論文や何やらで「引用」する際に公的な出版物から引いたことを明示することができる、というメリットもあるわけなので今回の件と簡単に比較することはできませんが、要するに本の値段をつけるのは自由であり、それに対して買い手がつくかつかないかはまた別の問題である、ということは間違いないでしょう。つまり、価格設定に「適当」か「不適当」かの判断は案外しづらいわけです。

では、国会図書館がお金を払って本を集める、というところに問題があるのでしょうか?

これも、一概にそうとは言えないところがあります。効率だけを考えるなら、図書館には「寄贈」してもらって買い取りはしない、ということにすればいいのですが、そうすると出版社に過剰な負担を強いることになります。

特に、国会図書館が出版物を集めるのは「文化を保存する」という、言ってみれば金額に換算できるような利益や効率とは対極にある目的のためなわけで、そこで手を抜いて多くの出版社が本を送ってこず、スカスカの目録ができあがっても意味がありません。

また、内容を細かくチェックして判断して「これは価値が無いからこの値段では買い取れない」と判断してリジェクトしたものが、後にたいへんな価値がでる可能性もあります。日本の文豪の初期作品が、自費出版で10冊しか出てなかった貴重な本だったり、後に有名になる絵本作家の処女作が100冊限定の自費出版だったり……みたいなことはときどきあるし、その「ときどき」を逃さないために尨大な蓄積をしているのですから、勝手に価値を判断して選別する、というのも趣旨に沿わないでしょう。

じゃあ全部言い値で買い取るか。

それができればベストなのですが、今回みたいな事例を見ていると、詐欺の温床になるのが問題です。いや、それで儲けるヤツがいること自体は、腹が立つけれど仕方がないとしても、そうやってお金を引き出すためのATMみたいな制度になったことで予算が限界を迎えて、制度自体が破綻したら身も蓋もありません。

結局、いまみたいに「半額払う」ことにしておいて、ある程度内容はチェックする、というのがいいのかなぁ。完璧に運用するのはたぶん難しいですしね。

あるいは、これから先の出版業界の動き次第では、出版物についてはデジタルデータ化を前提にしてそのデータを国会図書館が管理し、保存・製本は国会図書館が独自に行う(これによって悪用されないかたちでの貸出や印刷等も可能になる)。そのために予算を使う、という制度になってもいいのかなと思います。

まあ私程度の浅知恵より、その道の本職の方々のほうが建設的で有用な意見をお持ちでしょうから、それが上手に汲み上げられて反映されることを祈りたいですね。