大阪市民じゃない私が言うのもなんですけど、これはキツかっただろうなぁと思います、大阪市長選挙。

 ▼「「ふざけるな」「×」…大阪市長選、無効票続々」

 6万票超の無効票のうち、白票は4万5098票、候補者名とは無関係の内容などが書かれた票が2万2408票に上った。

 福島区役所では、職員が白票を「白票」と書いたかごに仕分け、次々と積み上げた。「ふざけるな」や、大きく「×」と書かれた無効票もあった。男性職員は「これまでと比べものにならない無効票の多さ」と驚いた。


 ▼橋下氏「信任を得たと堂々と言えない」   
 
維新以外の各政党が候補を擁立しなかった今回の選挙では、投票率は同市長選で過去最低の23・59%。橋下氏は市幹部らに訓示を行い、「信任を得たと堂々と言えるような状況ではないことは十分に分かっている。大阪都構想について、賛成も反対もあることが分かったので、最後はやはり住民投票で決めるべきだ」と硬い表情で述べた。

まあ投票率が低いとはいえ、当選した橋下氏の得票数自体は37万票。歴代市長より多いくらいですから、対立候補に票が集まらなかった、ということなんでしょうね。橋下氏が人気無いとか以上に、ろくすっぽ投票に行く人がいなかった、あるいは無効票を投じるなどして放棄した人が多かったというのが問題でしょう。

東京都知事選で、投票する候補がいないとか言って嘆いていたのが懐かしいですわ……。

何か最近の選挙を見ているとこれ、候補者が悪いとか橋下氏が悪いって笑っていられない気がします。日本に根付いたなんちゃって意思決定装置としての「ミンシュシュギ」なるものが持つ欠点を見事なまでに露呈しているというか……いや、候補者がいないとか投票率が低いということじゃなくて、誰になぜ投票するかとか、投票したあとの責任とかいうことを考えないということが、そもそもこういう事態を招いてるんじゃないかなーと思うわけです。

それでも、私たちの社会はもう、個人の誇りやら何やらという思想的な部分でこうした問題を解決するにはあまりに肥大化しすぎましたので、民主主義をうまく運用するような制度を作るしかないと思うんですが……どうすればいいんでしょうね。さしあたっては、「反対投票」ができるようにする(この人は嫌だ、という投票を可能とする)とか、ネット投票(技術的な問題は大いにあるにしても)を可能にするとかがぱっと思いつくことでしょうか。逆に言えば、私の浅く狭い見識ではそのくらいなんですけど。

前者(反対投票)については、正直微妙かもしれないと思いつつ、日本ではそっちのほうが向いてるんじゃないかなーという気もします。ハッキリ言って、「完全に民主的な投票システム」 というのは不可能ですから、ある投票基準を採用することでどのような効果が発生するか、というのがポイントとなるでしょう。現在の「1人に投票する」というスタイルの場合、ものすごく嫌われているか、ものすごく好かれているかの2極化した人でも当選してしまいます。要するに、隙のない穏当な人よりは、どこか飛び抜けた魅力があれば当選してしまうわけですね。石原前都知事なんて、その典型でしょう。タレント議員もある意味その中に入るかもしれません。

一方、選好順位をつけて選ぶ場合、総合評価が高い人というのが選出される率が高くなります。ちょっと抽象的な話になったので簡単に例を挙げてみます。

13人の議会があったとして、A、B、C、3人の候補者がいたとします。で、誰を選ぶかというのに順位をつけた結果、こんな感じになった。

A>B>C :6人
B>C>A :3人
C>B>A :4人 

トップのみを選ぶということになれば、A6人、B3人、C4人でAが一番多いんですが、嫌われているのもAが7人でトップです。もちろんAの順位が一番低いからといって「嫌われている」とは限らないんですが、「なってほしくない人投票」がOKなら、Aはダメな可能性あります。Cもヤバいかもしれない。

という感じですから、投票方法によって「選ばれやすいタイプ」というのはあります。で、「1人に投票する」いまのシステムというのは、好き嫌いがハッキリわかれる、トップダウン型のリーダーを選ぶには向いていると思うんですが、選ばれた人がそれに向いているかどうかと、そういうタイプのリーダーが日本の社会にあっているかどうかは、また別の問題でしょう。

正直、日本には調整型のリーダーのほうがあってる気がします。そればっかりでも困るけど。そして、いまの選挙システムというのは「より良い」調整型リーダーを選ぶには向いていないような気がするんですよね。民衆のほうが選挙スタイルにあわせた柔軟な思考で対応できないなら、民衆の考え方や好みにあわせた制度を選択していく必要があるかなと思っています。

で、もう1つのネット投票の話。こっちはまあ、技術的なところが解消されればいいのかなぁ。メリットとしては2つ。まず、投票が楽になって投票率が増える。特に若い層の投票率アップが見込めるのは大きいでしょう。もう1つは、「自分がどの選挙で誰に投票したか」 の記録がきちんと残る、ということ。もちろん今でもやろうと思えばできますが、それがより簡単にできる。それによって、自分の選択を後で反省することも可能になるかもしれません。

まあこの辺りは「秘密選挙」の原則すれすれになりかねないので、結局は自分の意識の問題かもしれません。選挙にきちんと行くのも、自分が投票した人の記録をつけるのも、現状ちゃんとやろうとするならできます。しかし、意識の低下によって、そういうことをやらない人が増えてきたというのが問題なわけですから、システムによる利便化を図ってその部分をより快適にする、というのはアリではないかと。

というわけで、いま挙げた内容でなくても構わないので、ともかく2つの方向からのシステム改善が急務ではないかなと思う次第ですが、なかなか簡単には行きませんかね……。