なにやら某まとめサイトで、大学の授業を写メで撮影している云々という話を見かけました。

話を聞くと、実際携帯で板書なりパワーポイントなりを撮影している大学生というのはだいぶ増えたらしい。それどころか授業を録音したり、ノートPCを持ち込んでオンタイムで書き起こしたり、更に凄いのになると前の方の席で授業を録画したり。時代は進んだなぁという感じです。

これに関して賛否両論があるのは想像がついたし、だいたいその想像通りの話が多いように見えます。

たとえば、ノートをとるほうが勉強になる(手で書くほうが覚える)とか、難しい話を聞きながらノートをとると覚えられないから撮影や録音のほうが最終的には勉強になる、楽をすることを覚えると授業に来なくなるとか、肝心なのは授業に出ることではなくて内容を身に付けることだろうから記録として残しておいたほうがためになる、といった「勉強にどっちがいいか」という話。

あるいは、そもそも手を抜いて写メで何とかしようというやつはほんとうには勉強しないだろうとか、ノートをとってりゃ満足してるというのは志が低いのであるとかいう精神論。

他にも、教授のやる気が削がれる/文明の利器を認める柔軟な先生が良いとか、写メの音がうるさい/音が問題なら録画や録音なら良いだろう、といった学習環境に関する議論。 

まあこれらについてはいろいろ話が出るのは当然として、個人的には身に付けるということが目標だというのなら、それぞれにあったやり方でやればいいと思います。写メの音をパシャパシャ言わすのはちょっと論外としても、撮影や録画のほうが効率的で自分にあっているというのなら、それをやってもいいんじゃないかとは思う。

ただ、それとは別に、やっぱり授業が「商品」だということも考えないといけない気はします。

こういう言い方をすると反感を買うかもしれませんが、そもそもこういうことが問題になる時点で、教育は「サービス業」になっているのだと思います(そうでないのなら、「師」である教授の指示に全面的に従え、で終わりです) 。そうすると、大学では授業(講義)を通して知識や技術を身につけ、その対価として学生は授業料を払っているということになるでしょう。

写メや録画録音のように、誰でもいつでも閲覧できるかたちで授業を「持ち出す」ことが許されてしまうと、昔の「モグリ」ではありませんが、大学に入らなくてもそこで提供されているサービスを簡単に受け取ることができるようになってしまいかねない。そうすると、授業料を払っている人は馬鹿みたいということになります。大学という制度そのものがそれによって崩壊するという事態が一朝一夕に発生するとは思いませんが、「不正コピー問題」にも似ていて、あり方そのものに対する挑戦、みたいな部分はあるのではないでしょうか。

しかしながら一方で、学問というのは多くの人にひらかれているべきだ、というのも確かです。そもそも身につけた知や技術を大学の内側だけで囲い込むことは不可能ですし、そうすると外に漏れていくのは必然です。というより、外でそういう知や技術を使うからこそ学ぶわけですし。大学というのはあくまで身分(そこで学んだという「学歴」の保障やその授業の内容をある程度身につけたという「単位」の認定も込みで) や設備を提供するものであって、内容についてはオープンであっても構わないだろう、という議論もありえるし実際あるようです。

偉大な哲学者の思想は、彼ら自身の著した書物からだけではなく、彼らの弟子によって記録された発言や講義にも依存している場合が多い。M.フーコーなどは、あのへんの思想家にしては珍しく全コーパスが確定している(する見込みがある)とも言われますが、それには彼の行っていたコレージュ・ド・フランスでの講義の録音が大いに役に立っているのだという話を耳にしました。

板書を写メで撮るのとはレベルが違う問題と言われるでしょうか。でも、「学知」という「商品」がどのような性質のものであるかを考えるうえでは結構共通するところがあるんじゃないかなと思っています。

この辺の話についてはもう少しキチンとかんがえる必要があるとは思うのですが、個人的には、大学が全講義を録画(あるいは録音)しておいて学生ならいつでも学生証を使って閲覧できるようにするとか、そういう「サービス」を行っても良いのではないかなと。あるいはもう、それを一般の人に有料開放してもいいかもしれません。で、学びたい人はご自由にどうぞ、と。そのかわり単位認定(その学問を修めたという認定)は大学に入らないとしてもらえない、みたいな。まあ可能かどうかは別として。

それに大学の恐らく最も価値ある「商品」であるゼミとかはその場で参加しないと意味がないわけですし、講義くらいは今よりもひらかれたものにしても構わないんじゃないかなとか、そんなことを今は考えています。しっかりした話じゃないのでそのうちコロコロ変わるかもしれませんけど。