本日はC87で頒布されていた同人誌、kapellさんの『White Album2 Piano Music Collection』、とっつんさんの『ゆきかき』の感想など。実はだいぶまえに読み終わっていたのですが、感想書くのが遅くなってしまいました。その理由については後述します。

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▼『White Album2 Piano Music Collection』
中のイラストはとっつんさん。『White Album2 Piano Music Collection』は、『WHITE ALBUM2』の作中に使われたピアノ曲にかんする本で、楽曲のタイトル、来歴、PC版(ゲーム)およびアニメ版のどの場面で使われていたか、といったデータが書かれています。その性質上、解釈的な部分にはかなり抑制を効かせていましたが、ところどころで挟まれる、著者の見解がなかなか興味深いです。以前にも出されていた同人誌のパワーアップという感じ。

アニメ版とPC版との対照などもされており、作品の演出面について検討する際には(とくに私の如き素人には)非常に参考になります。必携の一書と言って過言ではないかもしれません。

これだけの労作なので、本当なら1曲1曲のCDを買うなりしてきちんと聞いたうえで作品をプレイしなおしてから感想を……とか思っていたのですが、新年度も始まってしまってそれも難しく、うだうだ言っているといつまで経っても書けずに機を逸してしまうのではないかということで、今回思い切って書いてしまうことにしました。

個人的に注目したいのは、ショパンの練習曲5番「黒鍵」。これは私でも知っている有名な曲で、てろてろてろてろ、てろてろてろてろろ~ん という感じの……うん、私の音楽センスでは再現とか考えないほうがいいですね。まあそんな曲です。主旋律のほとんどすべてを黒鍵でひく(一度だけファを叩く)というかわった曲で、そのため「黒鍵」あるいは「黒鍵のエチュード」という愛称で知られています。

kapellさん曰く「ゲームでも、テレビアニメにおいても、かずさがまず弾くのはこの曲」(p.5)ということで、これがかずさの「黒」のイメージだというのはなるほどと思いました。

そこで連想されるのは、ショパンがこの曲を、「友へ」というメッセージとともにリストに贈ったというエピソード。(昔誰だったかに、受け取ったリストは曲が難しすぎて弾けずにとんずらしたというエピソードと一緒に聞いたんですが、ググってもここくらいしか出てこなかった。ホントか嘘かはよく知りません)

まあ一応そういうエピソードがあるという前提で話を進めますが、リストの曲というとPC版では非常に印象的なところと、すげーどうでもよさそうなところで1回ずつ出てきます。印象的なのは、「愛の夢」(kapellさんの本ではp.17)。アニメ版ではバンドが終わった後にもこの曲が使われていたようです。

どうでもよさそうなのは、「ラ・カンパネラ」(p.30)。かずさの追加コンサートの演目の1つとしてリストアップされていたということでした。リストだけにリストアップ。なんちって(死)。

ただ、今回本を読んでいて私は後者のほうに引っかかった。

かずさの追加コンサートは、ショパン、リスト、シューマンの3曲が使われたようです。私は「ふーん」と思うどころか何の違和感もなく読んでいたのですが、どうやらここはかなりおかしなところだった模様。

本項で取り上げる追加コンサートは、「別れのポロネーズ」で始まり、「ラ・カンパネラ」を挟んで、シューマンのソナタ第2番で締められます。
この3曲を全て演奏したとしても、実は30分前後にしかならないのです。
コンサートとしては短すぎて、曲に関して知識がある人にとっては違和感が残る曲数であるということがいえるでしょう。(p.28)

kapellさんはこの「違和感」に深入りを避けておられましたが、適当にものが言えちゃうクラシック門外漢の私は「おっ」と思ったわけです。なんかリストとつながったんじゃないの? みたいな。

「黒鍵」に象徴されるショパンがかずさだとするなら、そしてkapellさんが言うようにかずさが「口に出せない想いを乗せて」ピアノを弾く少女であるなら、かずさの選曲には何か意味があったのではないか。自分がショパンで、そのショパンが認めた「友」リストの曲を次に配し、ショパンに対して並一通りでない情熱を向けた信奉者シューマンの曲で締める。「3」という数もなんだかいわく有りげな感じがして、深読みしたくなる要素がいっぱいじゃないかな~と。

アニメで、これらの楽曲の使われ方が変わっていたという指摘がkapellさんからされていて、その辺は気をつけなければならないと思うのですが、かずさの怒りをあらわすシーンにはPC版では別の曲があてられていたということや、「I.C.」ではリストは登場していなかったというあたりは、PC版とアニメ版の『WA2』の演出を考える上でも示唆に富むように思われます。

と、ことほど左様にクラシックの素養がなくともさまざまな想像の翼を広げることができる(まあいままで私が述べたのはテキストクリティーク的には杜撰を通り越した無責任な妄言にすぎないわけですが)。また、クラシックを多少なりとも知っている人にとっては、どこでどんな楽曲が使われていたかを把握できるというだけでもじゅうぶんな手引となるでしょう。

そういう意味で、解説書や解釈書という以上に、作品の世界に対する想像力を働かせることができる優れた「導きの書(ガイドブック)」だったと思います。

たしかこちら(アリスブックスさん)で委託販売があるので、ご関心のあるかたはどうぞ。



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▼『ゆきかき』
中にSSがあって、そちらの著者はkapellさん。『WA2』のモノクロ画集で、全160ページです。まじすごい。タイトルと表紙イラストの通り、小木曽雪菜嬢への愛に溢れた本です(ちゃんと他のキャラも描かれてますよ。160ページ全部雪菜だったら別の意味ですごいです)。

絵については、音楽以上に何も語れないのでつきなみなことしか言えないのですが、いろいろなキャラクターの表情をご自分なりのスタイルで表現した、こちらは「解釈」の本かなという印象をもちました。なるほど、このキャラにはこんな表情もあったのか、という楽しさがあります。

また、ラフスケッチというか鉛筆の淡いタッチが非常によくマッチしています。『WA2』のような作品は、これはあくまでも個人的にですが、デジタルでしっかり彩色した綺麗な「CG」という感じの絵よりはこういうアナログ調の繊細であたたかみのあるイラストが似合うと思います。

単なる趣味だろと言われればその通りなんですけどね。いまだに携帯の待ち受けにしている『ホワイトアルバム』の壁紙これですし。

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あとこういうマナも好きだったり。

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『ゆきかき』は表紙の彩色もいいですよね。コピックか水彩でしょうか。色鉛筆っぽくはないような……いや、適当ですが。

紙質とかにもこだわってる感じ。こういう本はできればメイキングのプロセスなんかも載せて欲しいなと思ったり。サンクリやコミティアでイラスト系の同人誌出されてる方のを買うと、だいたいメイキングがついてて「おお~」と思ったりするのですが、あれは買い手の方も絵描きさんを想定しているからなのでしょうか。

ともあれ、できれば水彩風の色付き絵を他にも見たいなと思わせる良い本でした。

おふたりとも、楽しい時間をありがとうございました。