PC98時代のクセなのか何なのか、私は基本的にマウス操作よりキーボード操作を優先するクセがあります。カーソルの移動もTABやショートカットキー使ったりとか。エロゲーやるときも、ゲーミングマウスのボタンよりキーボードのほうにショートカット割り振って操作することが多い。

それが効率的だと思っていたのですが、なんか案外そうでもないらしいという実験結果があるそうで……。

 ▼「ショートカットキーはマウスより遅い」(WirelessWire NEWS) 

 しかし、実際にはショートカットキーを使用すると、マウスでメニューから「編集」「ペースト」を選ぶよりも平均2秒も遅いのです。

 「そんなバカな」

 と思いますよね。
 しかし、これはTogことブルース・トグナッツィーニがAppleでMacintoshの開発を担当した際に行った膨大な実験の結果、解ったことなのだそうです。

ホントかよ……? トグナッツィーニの説明(これ) はぶっちゃけ難しすぎてよくわからなかったのですが、どうも慣れとかそういう話ではなくて、思考回路とかそういうのに影響するということのようです。幾らかの特殊事例はあるんでしょうけど、一般的にキーボード操作による編集は、一瞬の「記憶喪失」を生む、ということなのでしょうか。

この辺は増井俊之『スマホに満足してますか?~ユーザインタフェースの心理学~』 (光文社新書)に書かれているそうなのでそれを読むことにして、この記事のライターさんが言う「ユーザーインターフェースによって「時間の流れ方が異なる」 」というのは面白いですね。「実際には処理速度が落ちているのに速く感じる」話も、なるほど、と思う。

人間は常にあらゆる「モノ」の動きを予測しながら見ており、その予測との「ズレ」を違和感と感じるようなのです。

しかしそれにしても、なぜショートカットキーを使うと記憶喪失になるのでしょうか。
また、逆になぜ我々はメニューから選ぶのを「遅い」と感じるのでしょうか。

その仕組を筆者なりに解釈すると、ユーザーインターフェースによって「時間の流れ方が異なる」ということなのではないかと思います。

(中略)

意識は受動的なものであり、身体的なすべての反応は意識より先に行われ、意識は起きた事実を追認する形で認識するだけです。

つまり意識は一種の情報の圧縮装置と考えることができるのではないでしょうか。
人間が瞬間的に受け取る情報は膨大です。それは視覚や聴覚のみならず触覚、痛覚など、無数の情報が常に脳に入力されています。そのすべてを記録しようとすれば、脳の容量がいくらあっても足りません。

そこで意識では起きた一連の出来事を単純化して記憶容量を節約する、という役割があると考えられます。


すると人間は、意識によって時間間隔を決められているとも言えます。

「運動準備電位」 の話は、よく私たちが「意識」と呼ぶものを疑う文脈で聞かれる話ですが、「意識は受動的なもの」という言い方あたりから察するに、前野隆司の受動意識仮説とかを参照しているのでしょうか(前野隆司『脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説』ちくま文庫、2010年)。本文にある0.2秒とか0.3秒とかいうあたりの話は、リベットの『マインド・タイム』由来ではないかと思われます。前野氏の本にも載ってたかな……。

つまり、「意識」が「動かそう!」と「意図」する指令と、「無意識」に指の筋肉を動かそうとする準備指令のタイミングを比べたのである。この結果は衝撃的であった。「無意識」下の運動準備電位が生じた時刻は、心で「意図」した時刻よりも約350ミリ秒早く、実際に指が動いたのは、「意図」した時刻の約200ミリ秒後だったのである。指が動くのが「意図」よりも遅いというのは、もちろん予想通りである。一方、運動準備電位が「意図」よりも350ミリ秒早いということは、心が「動かそう!」と「意図」するよりも前に「無意識」のスイッチが入り、脳内の活動が始まっているということを意味する。
   ベンジャミン・リベット『マインド・タイム 脳と意識の時間』(下條伸輔訳、岩波書店、2005年)

前野氏の「受動意識仮説」も、リベットの実験も、ともに学問的にはいろいろな方面から批判がなされており、「鵜呑み」にはできません。またこの記事の著者の方も、わりと独自の理解をしておられるようで、最後の方の「意識に入力されるものに応じて人間は時間間隔が変わります」というあたりは、なんか違う理論(相対論)になってるんじゃないかという気がします。

ただ、その辺を差し引いても、人の感覚というのが誤解に基づいているというのはありがちなことなのでしょう。ただ、私にはそれがいちがいに悪いことだとも思えません。たとえば某MMORPGをプレイしているとき、経験値効率は高いけど凄い退屈な狩場で延々狩りをするというのはとてもしんどくて、時間が恐ろしく長く感じたものです。そこよりちょっと経験値効率が悪くても楽しい(たとえばドロップアイテムにロマンがあったり)狩場での狩りは楽しくて、割と長時間続けられたし注意力が持続するので死亡事故も減りました。

さきのマウスとキーボードの話も似たようなところがあって、自分の「意識」にとって負担が少なかったり、あるいはもっと積極的に「自分が早くやれている」という実感のほうが重要なことというのはあるでしょう(もちろん、ほんとうの時間効率が大事なときもありますが)。 ユーザーインターフェースが、単純な効率だけでなく「意識」の負担を軽減するようなことを意識して作られると、もっと快適な操作というのが可能になるのかもしれませんね。