買い物しようとか、買ったけど使い方がよくわからないな……というときに、「~の方法」とか「~の評価」のような語で検索すると、Yahoo!知恵袋とか教えてGooのような、質問系サイトが上位でヒットします。誰かしら似たような疑問を抱く人というのはいて、その「先人」が質問してくれているわけですね。

しかし、中には「それってメーカーとかに直接聞けばいいんじゃ……」というようなのもありまして。逐一あげつらうのもアレなので引用はしませんが、メーカーHPとか質問用フォームがきちんとあるのに、わざわざ知恵袋で訊いてる人がいます。

中には、メーカーの人に聞きづらいんだろうなとかいうのもあります。たとえばこんなの

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「シェットランドフォックス純正品以外だと、何を選び、どのようにしたらよいか」というのは、たしかに失礼な気がして店員さんとかには訊きづらいですわな……(実際には割と丁寧に教えてくれたりするのですが)。あと、比較的どうでもいい(内容が軽い)ことなので、わざわざ訊ねるのもめんどくさい、ということもありそうです。些細なことなら誰かしら知っている人がいるものですからね。

しかし、こういう場合を除いても、明らかに専門的な内容を知らなければ答えられず、結構メーカー直接もっていくほうが早そうな質問というのはあります。なのにあえて質問系サイトで訊く。なぜこんなことになるんでしょう?

たぶん、幾つかの理由があると思われます。

1.そもそもメーカーが質問を受け付けていることを知らない。
2. メーカーに訊くのは何か敷居が高い。(または、知恵袋系は敷居が低い)
3.メーカーの「大本営発表」は信用ならないと思ってる 。(または、知恵袋系では隠された情報も出てくると思っている)
4.なんとなく。(普段知恵袋を使っているから、ほとんどクセ)

こんな感じでしょうか。 

私の想像がある程度あたっているなら、こういった質問系サイトの利用者は、正しい情報を求めるいっぽうで面倒なことはしたくないとか、特定のタイプの回答は聞きたくないとか、そういう感覚も強くあるのではないでしょうか(「1」とか「4」の場合はともかく)。別の言い方をすれば、彼ら(あるいは彼女ら)が求めているのは情報の正確さだけではなく、それに自分が納得できるかどうかなのだろうと思われます。たとえば買い物の参考にするつもりの質問なら、自分が決断できる情報が与えられれば良い。何かをやりたくないなら、それについてマイナスのことを詳しく書いて欲しい……。

この結果、いわゆる「ベストアンサー」に選ばれるのが「おいおい、マジか」というような珍回答だったり、あるいはそれらしいことを言っているけど専門家に言わせれば「それはない」というような回答だったりする、ということがそれを物語っているし、またいま述べたような傾向はやはり問題ではないかと思います。

啓蒙家を気取るつもりはありませんが、誤った知見が流布して良いことというのはあまりないでしょうし、「負のサイクル」ができるのも考えものです。「負のサイクル」というのはたとえば、次のような感じ。

質問する → 不正確なことを教わる → 教わった人がまた不正確なことを他人に伝える → 更に不正確なことを「学ぶ」人がでる → 以下略

どこかでストッパーがかかれば良いし、かつて「クラウド型の思考」で目指されたのはそこに専門的な知識を持った人が入ってくることでストッパーの役目を果たし、遡行的に他の人たちにもその専門知が波及していくことで全体のレベルがあがるということでした。

しかし、現実には多くの人は「望まない答え」をスルーしがちだし、自分で調べたり考えたりするスキルが上達するわけでもなかった。いや、そもそもどうすれば正確な情報とそうでない情報とを見分けるか、ということもよくわからないままになってしまっているのかもしれません。

なぜこんな話をしたかというと、先日帰省した際に母親が何か怪しげな化粧品をかっていて、なんでそんなの買ったのかと聞くと、知恵袋に書いてあったからだ、と。そこには化粧品の専門家みたいな人が回答していて、信用できそうだったからだ、と。まあそんな会話があったのです。

知恵袋を鵜呑み、しかもそこにあらわれた「自称」専門家を無邪気に信じているというのはいかがなものなのか……。でも、たぶんこういうのは特殊事例ではないんだろうなぁとも思うのです。「私は元○○社員ですが」とか、「△△を専門に扱っている業者ですが」のように、いかにもな権威をアピールするところから入る回答が多く、しかもそれが「ベストアンサー」を獲得しているのはそんな傾向ゆえではないでしょうか。

中には本物の専門家もいるのでしょうし、質問をした人やそれを読んだ第三者も「信用できる」と自分なりに根拠を持って判断しているハズ。その辺のことはわかっているつもりです。ぜんぶがぜんぶというつもりはない。ケースバイケース。

しかし、飲み屋での話のタネにするとかならともかく、少なからぬ人がそれを実際に購買の参考にしてみたり、酷いときには学校のレポートに使ってしまったとしたら(中学・高校生では珍しくないし、最近関東の幾つかの大学で「論文・レポートの書き方」みたいな学生向け冊子が配られていたのですがその中に、「知恵袋やWikipediaは引用元として使うな」という主旨の文言か掲載されていました。さすがに論文に堂々と書く人がいたとは考えたくないのですが……)、やっぱりリテラシーについて考えなおす必要がありましょう。

もちろん、質問系サイトがダメだ悪だというのではありません。非常に良心的な回答をしておられる方もたくさんいらっしゃいますし、うまく使えば便利なのは間違いない。しかし、その便利さに引きずられてリテラシーを後退させてしまうのは、あんまりよろしくないんじゃないかなぁと思うのです。