久しぶり、ネットリテラシーのお話。

一昨日、こんな記事が投稿されていました。 

 ▼「日本人小学生の放った言葉に中国人家族が絶句、「われわれの愛国教育は間違っていた!」―中国メディア

いかにも、一部の人が好みそうなセンセーショナルなタイトルです。レコードチャイナの記事(もとはこちら)。

2014年1月8日、中国のゆがんだ愛国主義教育が、純粋な子供の心をねじ曲げてしまったことを如実に示すエピソードを、中国人ユーザーが軍事関連ネット掲示板・米尓社区に投稿した。以下はその内容。

日本人男性と結婚した従姉が、夫と彼の親戚の男の子を連れて中国に里帰りした。男の子は俊夫という名の小学校1年生。見知らぬ国で言葉の通じない人々に囲まれて、とても緊張している様子だったが、一生懸命カタコトの中国語で私たちに挨拶し、深々とお辞儀をした。その姿がとても愛らしく、私たちはいっぺんで俊夫のことが大好きになった。

だが、その従姉の一番上の姉の子、小学3年生の鵬鵬(ポンポン)だけは違った。最初から敵意むき出しの顔で俊夫をにらみつけ、こぶしを振り上げると「打倒小日本(ちっぽけな日本をやっつけろ)!」と叫んだのだ。

(中略) 

こんな小さな子供がここまで日本を憎むとは、あまりにもおかしい。鵬鵬の愛国観はすでにゆがんでしまっている。善良で純粋で友好的な日本の子供を前にして、中国の子供がどれほど恐ろしい敵意と憎しみを日本に抱いているかを私たちは思い知らされた。中国の愛国教育はもっと客観的で冷静であるべきではないのか。(翻訳・編集/本郷) 
で、これがもうあちこちでとりあげられておりました。個人サイトからまとめサイトから。面倒なのでリンクは貼りませんが。

ただ、これ読んで「あれ、どっかで見たことあるぞ、この話……」と思ったんですよね。検索してみると、2013年3月に書かれていた、この記事がヒット。

 ▼「「私は死んで当然の小日本です」我が家にきた日本の子どもの言葉に凍り付いた―中国」 

こちらの記事主さんは元ソースのことにも触れておられます。

■2013年3月8日追記
コメント欄やはてブでいろいろご意見、ご質問をいただいているのでちょっと回答を。

(1)この記事はコピペ?:上記にリンクした猫撲は初出ではなく、確認できる最古の書き込みは2012年11月。昨年の反日デモの後のもの。はてブでは11月12日付青青島社区をご紹介して頂いています。その後、いろんなネット掲示板、ブログに転載されたという次第。

記事主さん曰く、「家里来了个日本小孩 竟让我们全家人无地自容」という青青島社区の書き込み(2012年11月12日)を確認できる最古のソース(こちら)。私も調べてみましたが、それ以上のことはわかりませんでした。

また、やっぱり既視感を覚えた方もそれなりにおられるようでした。たとえば、「知恵袋」にはこんな投稿も。 

 ▼「『日本人小学生の放った言葉に中国人家族が絶句、「われわれの愛国教育は間違っていた!」―中国メディア』という記事について」 

言いたいことほとんど全部書かれてますね。

たぶんですが、この記事って何度も中国の掲示板やらコミュニティやらに投稿されてるやつで、おなじみのコピペみたいな感じなんじゃないでしょうか。事実なのかネタなのかはわかりませんけど、少なくともテンプレ化してるか、定期的に貼り付けて「宣伝」する人がいる。そういうネタなんだと思います。

レコードチャイナさんがどういうつもりで 掲載したのか存じませんが、「2014年1月8日」に初出の話題のような(断言はしていませんが)書き方をするのはどうかと思うし、「翻訳・編集/本郷」と「編集」したことを明記しておきながら、元ソースへのアクセスが書かれていないのも微妙。だいたい、この記事についてる「資料写真」ってのも、何が資料なのかさっぱりわからん。イメージってことでしょうか?

記事のクオリティの低さにも言いたいことはあるんですが、読み手のわれわれの心構えとして、この手の「報道」を(ソースにあたらず)鵜呑みにしちゃう と、やっぱり問題は多いと思います。「大衆」を騙すのなんて簡単なことだと思われたら困りものと言うか、こんな質の悪い記事が無批判に拡散されつづけると、読者がなめられると言いますか。どんどん質の悪い記事が量産されるようになりかねない。それで結果的に損をするのはわれわれです。

まとめサイトは、まあその名の通り「まとめ」るだけですから、仕方ないのかもしれません。しかし、それを利用するわれわれは、やはり慎重になるべきだと思う。まとめサイトがまとめている内容にソースとなる記事があっても、更にその記事のソースはどうか、というところまできちっと確かめるべきでしょう。われわれが注目すべきソースというのは「1つ前の情報」ではなく、本来、一次情報の発生元なのですから。

なんかもう、中国の愛国教育がどうこういうよりも、実用的なネットリテラシーの教育を早いうちに、きっちりと学校でやってくれっていう気がします。心の底から。