いよいよ選挙が近づいて来ました。選挙戦の行方自体もさることながら、「どうして解散するんですか?」小学四年生問題などの場外乱闘でも目が離せない今回の衆院選ですが、また面白いのが出てきていたようです。

 ▼「選挙での「白票」を「社会を変える力がある」とミスリードする謎の集団「日本未来ネットワーク」のサイトが突如出現」 (Buzzap!)

要するに、「現政権にNOをつきつけるためには白票を投じよう!」ということを触れ回る内容なのですが……。あまりの斜め上な主張に目が点になります。

そもそも、「白票」や「棄権」は端的に意味がありません。なぜなら、間接民主制において誰にも投票しないということは、自分の意見を託す人を選ばないということだから。単に、自らの政治参加権を放棄する以上の意味を持ち得ないので、候補者に対して何らかのメッセージを伝える、ということにはならない。

もちろん、候補者によっては投票率の低さや白票の多さを気にする人はいるのかもしれませんが、それは勝手な解釈にすぎないのであって、選挙・投票という制度から導かれる結論ではありません。

上記サイトにも書かれていますが、白票を投じるくらいなら、対立候補に投票すべきです。もっと言えば、丁寧に候補者の主張を検討し、せめて「一番マシ」と思える候補者に投票するのがベストでしょう。正直誰にも投票したくないと思う選挙もありますが(舛添氏が当選した、猪瀬直樹氏辞任後の東京都知事選とか)、それでも相対評価であれば「1位」を選ぶことは可能なのですから。

選挙に行って「白票を投じてきた」と自慢気に語る人がいますが、あれは正直どうかと思う。自分の権利を少しでも行使したいのであれば、どれほど気が乗らなくても誰かに投票をすべきであることは間違いないし、それすらする気にならなかったというのであればそれは心底嘆くべきことであって、「白票を投じた」ことは武勇伝でもなんでもないでしょう。

何度か言っていますが、「デモクラシー」は民主「主義」と訳されていますが本質的には「制度」です。「主義」ならば、その考え方をしっかりと持って信じて大事にすれば良いのかもしれませんが、「制度」である以上使いこなさなくては意味が無いと私は思います。今の日本にとってどういう政治体制、与野党のバランスが望ましいのか……ということを国民が考えながら。

しかしそれも、たとえ拙い考えであっても政治に参加する(投票する)という前提があるからこそ意味があるのであって、棄権だの白票だのという権利放棄を(このサイトを作った人はこれを権利放棄とはみなさないのでしょうが、制度的には放棄です)していてはお話になりません。

というわけで、正直こういうアホみたいなことを喧伝するのは害悪以外何者でもないというのが私の立場でありますが、これを「与党の陰謀」だとか「与党のせいにしたい野党の陰謀」だとかいう陰謀論もまたアホらしいなぁと思うのです。(これは想像ですが、今回のやつ、たぶんそこまで「ウラ」は無いんじゃないかなぁ。だいたい、本当に与党側の「仕掛け」なら、現政権に対して「NO!と言おう」なんてメッセージを書かないと思うんですよね)

この前にあった「どうして解散するんですか?」もそうですが、党派性の強いメッセージを出していたら情況証拠を揃えて即陰謀だ、みたいな形に持っていくのは、なんか問題を矮小化してしまう気がします。「どうして解散するんですか?」事件は、まあやり方のだめさはあったものの、書かれていた内容自体はそこそこ大事な部分もあったように私には読めました。その辺の議論をすっ飛ばして、陰謀だ仕込みだというかたちで終わってしまったのは、もったいなかったとすら思う。

そして今回の場合問題は、「「棄権するより白票を」という主張」がそれなりに広く受け容れられてしまっている、ということ。これがどこの仕込みでも陰謀でも構いませんが、そのあたりのことをキチンと見つめることのほうが大事じゃないかなぁ。