最近、電車の中でPSPなどの携帯ゲーム機を使ってゲームをしているサラリーマンをよく見かけます。それも、私くらいの年齢から中年に差し掛かるくらいに見える人がかなり多い。いやまあ、ハッキリ年齢聞いたわけじゃないので判りませんけど、「あのくたびれ方は30歳は超えてるだろうな」と。

で、彼らは寸暇を惜しんでゲームをするゲーマーだという見方もできるんですが、電車で携帯ゲームをやっているのには、それとは別の事情もあるのではないか。そんなふうに思ったのです。別の事情というのはすなわち、家でゲームをできないということ。


▼僕の友達はゲームができない
先日、結婚した私の友人が(趣味を隠しているために)なかなかエロゲーをできないという話をしました。その彼と飲みに行った時のこと、彼は私と合う直前まで、待ち合わせ場所の新宿東口交番前でPSPだかVITAだかで遊んでいました。『世界樹』をやってるって言ってたかな。

「相変わらずのゲーマーっぷりに安心したわ」と言う私に、「いやそうじゃないんだ」と悲しそうに彼。どういうことかと訊ねると、こんな答えが返ってきました。「家じゃ嫁が文句言うからなかなかできなくて……下手すると義母さんに告げ口されるし。外でやるしかないんだよね」。Oh……。

何たるちやかんたるちや、待ち合わせの時間を利用してまでゲームをしていた彼は、廃プレイをしているどころか、最低限のプレイ時間を確保するため必死に努力していたというのです。

嗚呼、悲しい哉人生。結婚生活は到底枯燥したるものにあらず、嫁は無慈悲の者にあらずといえども、かかる話を耳にすれば、心千々に乱れ悲しみの涙滂沱たるを禁じえません。


▼中年の危機
しかし、これはひとり我が友人の問題では無いでしょう。ゲームを日常的にプレイしていた人が、結婚してプレイ時間激減というのはほうぼうで耳にする話です。

厚生労働省調査(こちら)によれば、平成23年度の平均初婚年齢は男性が約31歳、女性29歳。いま30歳から40歳を迎え、経済的にも安定し、結婚して家庭を持ってもおかしくない頃合いの世代は、1970年代後半から80年代前半に生まれ。なんか私にドンピシャですねぇ……(遠い目)。

そして、この世代の生い立ちはファミコンの隆盛と重なる。任天堂からファミリーコンピューターが発売されたのが1983年。大ヒットしたRPG『ドラゴンクエスト』が86年。まさしくゲームとともに成長してきた「ゲーム世代」が、いま結婚シーズンを迎えているわけです。

そんな私たち(「彼ら」という他人行儀な言い方はやめましょう)の中には、青春とゲームが切っても切れない縁で結ばれた人というのが少なからずいる。テンプレイメージで恐縮ですが、全共闘世代にとってのゲバ棒(冗談ですよ)、団塊の世代にとってのギターが(これはちょっとありそう)、私たちにとってのゲームです。しかも晩婚化が進んだ昨今のゲーム世代は、社会人になってからも10年弱、ゲームとともに歩むことが少なくない。おそらく、身体にゲームが染み付いています。

しかしながら、結婚をすればゲームに熱中というのはなかなか難しい。たとえ配偶者がゲームに理解があっても、です。理由は簡単で、プライベートな時間がとりにくいから。特に、1人でやるタイプのゲームを長時間続けるのは相当キツいでしょう。

2人で仲良くゲームをするというのはありそうですが、家にいるのにお互いが黙々と別々のゲームをやっているという話はあんまり聞きません。というか聞いたとしたら多分、夫婦仲を心配して微妙に悲しい気持ちになります……。


▼携帯ゲーム機という救世主
では、結婚生活の中でうまくゲームをするにはどうするか。相手のいない時間を利用するのが最も基本的な選択肢でしょう。専業主婦(または主夫)なら、何とか時間を捻出することは可能かもしれません。しかし勤め人の場合、配偶者がいない時間は会社で仕事をしているので、それも困難。

そこで、バスや電車、ちょっとした待合時間に使ええる携帯ゲーム機が活きてきます。

移動時間はビジネスマンにとって数少ないプライベートタイム。その時間を使って大好きなゲームプレイを可能にする携帯ゲーム機というのは、あたかも地上に舞い降りた天使の如し。子どもの頃の、熱い想い秘めた瞳をなくさずに済むこと請け合いです。

まだ据え置きゲーム機全盛の時代、NintendoDSやPSPが大ヒットを飛ばしてPS2やXBOXを凌ぐほどの普及をみせたとき、あるゲーム雑誌にこんなことが書いてありました。曰く、据え置きゲーム機は家庭のテレビを占領してしまうから子どもは自由に遊べないけれど、携帯ゲーム機はパーソナルなものだからゲームをプレイしやすい。それで人気があるのだ、と。なるほどなぁと思う。

確かにファミコンは、居間にあるテレビでやるせいで「こっそり」遊べなかった。私が家庭用ゲーム機よりPCゲームにハマった理由の1つに、PCが家族にではなく私に与えられたものだったからだ、というのは間違いなくあります。

携帯ゲーム機というのはそのように、パーソナル(あるいはプライベート)な領域をつくりだすのに向いています。夫婦間の機微とかはわからずに書いておりますけれども、わからないなりに想像して言えば、プライベートさを求める主体が「TVを使わせてもらえないコドモ」から、「おおっぴらに家庭でゲームをできないオトナ」へと変わったとしても、それほど不自然はないように思われるのです。


▼エロゲーだって続けたい
最初に述べた私の友人は、まさにこのような感じで携帯ゲーム機を懐に忍ばせていたであろうことは想像に難くありません。彼は家庭で、彼の望むような形でパーソナルな領域を確保することができなかったわけです。

ところで、彼はエロゲーマーでもあるという話をしました。これも時代的な話をすると、メディアミックスでエロゲーとコンシューマの垣根が一気に崩れかかった『To Heart』のヒットが1997年。「泣きゲー」ブームを巻き起こしたKeyの『kanon』が1999年、『AIR』が2000年。当時18歳だった少年たちが、いま丁度30をこえた頃。

つまり私たちの世代にとって、エロゲーもまた青春。特に96年~2000年ごろというのはエロゲー売上の全盛期とも言われ、最近の1.5倍以上もの売上を示していた時期ですから、20代をエロゲーとともに駆け抜けた人は、やはりそれなりに存在してます。

そうなると、エロゲーを続けたい……と思う人もいる。しかし、エロゲーを結婚したあともやるとなると、誰がどう考えたってコンシューマゲームをやるより、ずっとグッとハードルはあがります。正直、家でやるのは難しい。

そこで、携帯ゲーム機の出番です。これでエロゲーができれば、実は非常にメリットがある。

まず、肌身離さず持ち歩けるから、家にいる間に配偶者に物色される心配がありません。次に、ソフトをDLコンテンツで購入できるようにすれば、パッケージやディスクを家に隠す必要もなくなります。初回特典などは諦めざるをえませんが、そこはグッと我慢。さらにDLコンテンツにしたついでで、たとえば1キャラごとにルートを販売するような形にすれば、忙しい勤め人でも無駄な出費をせずに済むかもしれない。多少ディスプレイが小さくなることを考えれば良いことずくめ!

既にAndroidのエロゲーなんかも出ているし、携帯ゲーム機じゃなくてスマホとかでも事足りるのかもしれません。そうするとこれからは携帯エロゲーの時代がくるんじゃないか!? と思ったんですが、よく考えたら致命的な欠点がありました。それは、人前でエロゲーはやれないこと。はい、解散。

まあどう考えたってこれは無理です。自分が恥ずかしい恥ずかしくない以前に、公序良俗に反する。抜きゲーなんか特にヤバいですよね。満員電車で痴漢ゲーとかやってたら完全アウト。

というわけで携帯できるエロゲーは残念ながら、「エロゲーに理解のない配偶者と結婚したけどエロゲーは続けたい!」と考える人たちの救世主にはならなそう……残念です。地道に時間を確保し、見つからないでやる方法を検討するしか無いってことですね。

必死に隠れる技術を磨く、孤高のエロゲーマーたちに祝福を。


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