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『魔王軍へようこそ4 -闇の魔王-』(ののの通信、2013年8月12日[C84]頒布) ※18禁

ののの通信さんから頒布中の『魔王軍へようこそ4』(公式HP)のバナーキャンペーンにひっそりと参加しておりまして、先日イラストをいただきました。絵柄は、みんなの犬 ムーン王女さん。



イラストに名前とか入れていただいていて、ちょっとした工夫が嬉しいです。商業だと1枚1枚名前を入れて送るというのはなかなか難しいですしね。ともあれ逆に言えば、商業では困難な手間のかかる作業をわざわざしてくださったということでありまして、本当にありがたいお話。お忙しい+体調も崩されていたようだったのに、丁寧な対応をしていただいて感謝です。

そんなわけで本日は、「魔王軍」の話を少し(厳密にはレビューではありません)。

『魔王軍へようこそ』は国民的人気を誇るRPG『ドラゴンクエスト』を題材にした同人ゲーム。お店を育成するタイプのSLGで、【魔族の主人公がモンスターを編成してアイテムを集め、それを加工して人間の冒険者から資金を得て力をつける】というのが基本ストーリー。ただしアイテム集めや加工はフルオートで、ユーザーは店番をするだけという独特のゲームデザインが採用されています。

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細かい指示を出した後はオート進行が基本だが、ごくまれにアクション要素も。

ゲーム自体は煩雑な操作が不要でとっつきやすいのですが、そのぶん単調になって飽きるのも早い。正直「最適解」を探さなくても適当に編成をいじればゲームオーバーは回避できるので、コツさえつかめばあとは「進行」ボタンを押すだけ。

とはいえつまらないかというとそんなわけでもなく。この作品には、儲けたお金で施設を作ったり特定の場所から出るアイテムを手に入れたりすることで発生するいくつものイベントが用意されており、それを探すのが面白い。ゲーム操作自体は単純なだけに、「こうすればイベント見られるかな?」と試行錯誤するのが苦痛になりません。全体としては「難しすぎず易しすぎない」バランスがきちんと保たれており、トライ&エラーによって中毒性を高めるという、よくできたデザインです。

そして、『魔王軍へようこそ』の魅力をひときわ高めているのはストーリー。

シリーズのどの作品もなかなか切なくて味のある話が展開されて、それだけでもじゅうぶん面白いのですが、なんといっても白眉は、ドラクエの世界に対する面白い解釈です。

たとえば本作で言えば、『DQ1』の勇者はどのような末路をたどったか。ローラの門はなぜあんな名前なのか。ハーゴン支配下のロンダルキアとはどういう国家で、ベリアル・バズズ・アトラスを軸にした魔王軍というのはどういう組織なのか。ルプガナはどうしてあんな場所にあるのに商業都市として発展できたのか……。

そういう、ゲームでは描かれなかった部分に、「なるほど」と思わせるような説得力を持った斬新な解釈を加え、しかもそこから新しい物語を作り出しています。また、おそらくは小説版DQのネタや設定資料なんかからも素材を拾っておられるんですよね。オリジナルな要素の端々に、「根拠」が見えてくる。単なる身勝手な妄想ではなくて、DQに対する深い愛情と丁寧なリサーチに裏付けられた、深い想像(+創造)が味わえるのです。

DQ世界を知らなくてもお話自体が面白いし、DQを知っていれば知っているだけ余計に解釈を楽しめる。しかもその解釈は押し付けがましいものではないので、「おお、こういう風に考えることもできるのか。でも、私ならこうかな……」というようなことを自然と考えてしまいます。

作品を通してDQについて語っているような気持ちになる、古き良き「二次創作」の香りを残した逸品。私の知る中では、最高クラスのDQ同人ゲームです。こういう作品に出会えると幸せな気持ちになりますね。

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