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吉田秋生『海街diary』(小学館)flowers コミックス、1~5巻(続刊)

ふらっと出かけた三省堂で超プッシュされていたので、吉田秋生『海街diary』を買って読みました。

いやあ、超良かったです。

鎌倉に住む三姉妹の一家(香田家)が話の中心。彼女らを捨てて再婚した父親が死に、葬式の場で、異母姉妹を引き取るところから一巻の物語は始まります。エロゲー的な軽いノリではなく、父親の浮気や再婚という現実を伴って描かれる一連の出来事は、ポップでやさしい絵柄に反して、重たく、とてもドロドロしている。

そういう人間関係の現実を厳しい目で描きながら、人の想いそのものは綺麗に描いているというのが、本作の特徴でしょうか。傍から見ると不誠実な関係、どうしようもない行為、しょうもない葛藤を描きながら、その底に流れている人間の純粋な気持ちを取り出している。そんな感想を抱きました。

個別の話として見ると、いろいろ深刻な「事件」は起きているものの、大きな枠組として見ると、彼女たち一家の「日常」が描かれているだけの話です。でも、ちっとも退屈ではない。

ストーリー仕立てで進行する作品というのは、ドラマチックな部分ばかりがクローズアップされ、そうではない部分は切り捨てられてしまいがちです。しかし、私たちの生活というのは2割の劇的さより、8割の平凡さから成り立っていて、その平凡さの中にこそ生きている実感があるものだと思います。

本作は、事件を切り取っているようでいながら、実はその裏側にある平凡な暮らしの連続を描いている。「diary」というタイトルが、実に相応しい作品です。

出産の話はまだあまり無いけれど、人が暮らしていくこと、恋すること、別れること、老いること、死ぬこと……。人生の「イベント」に直面したときに見えてくる日々の生活のありようと、そこに流れる人間の情念が、1ページ1ページから伝わってきます。

いささか各キャラを「わかりやすく」描きすぎかなという気がしないでもないですが、関係の複雑さを描く上では、かえってこのくらいのほうがすっきりまとまって良いのかもしれません。不定期連載ということで次がいつになるかは分かりませんが、続きが楽しみです。

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