2013年6月23日、東京都の都議選が行われました。終わってみると、自民・公明で過半数を獲得するという、与党の「圧勝」。民主・維新は全然ダメで、共産が議席を倍増させました。

結果の分析等については私の手の及ばないところなので差し置くとして、今回の都議選の扱われ方には、少々疑問があります。

マスコミの報道を見ていると、「参議院の前哨戦」、「自公圧勝」のような文字を多く見かける。たとえば読売新聞は、「自民党候補に投票するとした人は38%で他党を大きく引き離し……」(2013年6月17日記事)のように、党単位で議席を考えていますし、産経は「この戦術は参院選への予行演習」(2013年6月24日記事)のような言い回しを使っています。

もちろんこれは、世耕弘成官房副長官の「今回の結果を参院選の勝利に向けての弾みとしたい」という発言に見られるように、各党、特に与党側が「参院選の前哨戦」という位置づけをしたことに依るところが大きいわけですが、ぶっちゃけ、ソレでいいの? という思いがします。いや、事実としては「参院選を占う」選挙になっているし、党の勢力を反映した結果が出ているのでしょうが、そのこと自体に問題があるんじゃないかろうかと思うわけです。

理由は簡単で、都議選というのは本来、国政を担う党の動向とは別ものであるはずだから。

そもそも、都議選というのは地方自治体の選挙です。したがって、国政選挙である衆議院や参議院選挙とは制度も、内容も異なる。比例区はありませんし、また組織としても、地方の(今回であれば東京の)自民党と、国政を担っている国会議員組織としての自民党とは、内容的に一緒ではない。

東京都というのは財政面で見ると、地方自治体の中でも特に国から出ている補助金の割合が低く、それだけ独立度が高い。猪瀬知事が議員宿舎の建設に反対していることからも分かる通り、国の施策に対して堂々と「NO」が言える自治体です。都議というのはですから、時として国の政策に対して「地方」の立場として、反対をしていく必要があるし、実際そういう役割を(十分かどうかはさておき)果たしてきました。

また、そのような事情もあって、都制における小選挙区制は、党の方針より個人のカラーが強くでます。ですから、選挙民は党単位ではなく個人単位で――もっと言えば政策単位で人を見極めるのが望ましいというべきでしょう。

もちろん、全く党利党略が無関係なわけはありませんし、東京は日本一人口の多い地区ですから、ここでの動向が参院選の結果を占う重要なデータとなることは否定しません。しかし、選挙に臨む側の意識としても、投票する側の意識としても、またそれを報道する側の意識としても、まずは地方選挙であるということ、そしてそれゆえ、党を離れて個々人の掲げる政策こそが重要な意味を持つということを、意識する必要があったのではないか、と。

今回の結果をもって、「自公圧勝」のように総括するということは、たといそれが与党に反対する立場から危機感を煽るものであるにせよ、ことの本質を見誤っているような気がします。もっといえば、今回の結果を国政選挙に結び付けたい自民党・公明党の思惑に乗せられてしまっている。

ただまあ実際問題、今回の選挙結果は、「自民党」に入れたという意識の人が多かったんでしょうね。そこが問題といえば問題です。「自公が圧勝した」のではなく、「○○という政策を掲げる人が多く当選した」のように言えれば、それが一番だったのでしょうが……。現実は政策比較なんてほとんどなされていないと思います。うちの地区だけかもしれませんけど、各候補のマニフェスト見るとほんとに何も(見たい情報が)書いてなくて愕然とする。

教育について書いてる人、1人だけとかだし……。経済政策は共産を除き、税金とかでちょっと違いがある以外ほとんど横並びみたいな感じで、どこで差をつけていいのか余りわかりませんでした。まあ、あまりに夢見がちで非現実的なことを言っている人はサヨナラしましたが……。とまれ、有権者が注目していないから、こんな適当な内容でも通ってしまうという一例とでも申しますか。

投票率の低さも問題(意識の低さもさることながら、投票率40%ちょいということは、たといそこの8割の票を獲得していても、都民全体の30%からしか支持をうけていないわけで、それが果たして都の代表として相応しいのかという疑問は沸きます)ですが、まずは私たちの「選挙権」というのが、何のために行使される権利なのか、その根本のところを見直すところから始める必要がある気がします。

都議選の結果というのは、「児ポ法」問題に揺れるエロゲーマーとしては他人事ではない話ですのでその辺中心に触れるつもりだったのですが、どちらかというと国民全体の政治意識みたいな話になってしまいました。私程度が偉そうに言えることじゃないのかもしれませんけども、どんなもんでしょうね。

このエントリーをはてなブックマークに追加