FULLTIMEさんの新作『UNDEROID -アンダロイド-』。2013年3月29日に発売を控え、なかなか面白そうだなぁとチェックしておりました。実際、いろんな部分でかなり気合入ってる。

たとえばOHPを見ると、「当社の限界を超えてしまいましたが、困難を乗り越えて最高の仕上がりになり、ビッグタイトルとしてのボリュームと完成度を実現しました」ですとか、「目指すのは世界レベルのクオリティです」のようなフレーズが踊っており、並々ならぬ意気込みと自負を感じます。そしてプレイムービーなどを見た限り、あながち大言壮語とも言い切れないようです。

リアルタイム3Dのガンシューティングゲームというのが私にとってはややハードル高いのですが、エロゲーの進化としては異端にして最先端を突っ走ってるFULLTIMEさんの作品だけあって凄いとんがりようで、満足にプレイできなくてもちょっと買ってみようかという気になってきました。

ただ、なんかちょっとやりすぎた感があるのが「CONCEPT」(開発のスタンスとポリシー)のコーナー。

全文引用すると、こうです。

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■ これはもはやエロゲーというレベルではない!! 弱小エロゲーメーカーが世界レベルを凌駕する!! 
「所詮はエロゲーメーカー、エロゲーメーカーに凄いものは作れない。」これが今までの業界内外の常識です。
前作『 ILLUSION FIELD -幻影現実- 』の技術を継承し、さらに世界レベルのゲームにする為により洗練し新しい技術をも取り入れて開発しています。
本作はこれまでの業界の常識を打ち破り、業界内外に衝撃が走ります!!

■ 美少女ゲームメーカーが本気で作ったTPS!! 業界初!次世代リアルタイム3Dゲーム!! 
本作はグラフィック、プログラム、ストーリー、音楽など、全ての面で妥協を許さない世界レベルのリアルタイム3Dによるガンシューティングゲームです!
このゲームは業界内で FULLTIME しか作れません!!「ハイクオリティ映像」と「最新技術」の結晶、それが『 UNDEROID -アンダロイド- 』です!!

■ 現代社会の問題に重ね合わせるかのような臨場感溢れるストーリー!! 
現代社会に渦巻く領有権問題になぞらえて制作された異次元の日本とその周辺国の姿。
巨大自然災害にカムフラージュされた国家機密兵器売買に絡む謎のウィルス、そして暗躍する組織と国家を陥れんとする人間の金と性への欲望。
その戦いに翻弄される女戦士たちの運命を描いた超過激問題作!!

■ モーションキャプチャーによるリアリティへの追求!! 重力を感じる生身の人間の動きを作り出す!! 
リアルな映像にはリアルなモーションが必要です。本作では FULLTIME 初の モーションキャプチャー を導入しました。
アクション女優を起用して演技をゲームに使用する事で、迫力ある本物のアクションを実現しています。

■ 何故このゲームを作ったのか!? 
バーチャルリアリティである事がゲームの証であり、それを進化させ提供し続ける事がゲームメーカーとして必要であると FULLTIME は考えます。
たれ流しの映像、音声、テキストなどを受け取るだけのシステムではゲームたり得ない。
3D仮想空間の中のゲームシステムがどうあるべきか、それをもう一度確認し証明しなければならないと考え『 UNDEROID -アンダロイド- 』を製作しました。

これまでに無い最高の映像と内容の『 UNDEROID -アンダロイド- 』に、ご期待ください!

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いやあ凄い。冒頭からいろんなもの巻き込んで炸裂しそうな勢い。ボンバーマンのリモコン爆弾セットして、誘爆するのを今か今かと待ち構えている感じがそこはかとなく趣深いです。何というか、ゲームよりこの文章のほうがとんがってるかもしれません。

まず、「所詮はエロゲーメーカー、エロゲーメーカーに凄いものは作れない」というのは「業界内外の常識」だそうです。ホンマかいな。

このブログでは何度も書いてきた通り、少なくとも私はエロゲーにはエロゲーにしかできないものがある、と思っておりますし、また業界の人もそう思ってるんじゃないんですか。少なくとも建前では無く、そう考えている人はいるでしょう。

というか、FULLTIMEさんのおっしゃる「所詮はエロゲーメーカー」ってどういうことなのかが気になります。性産業でナメられてるということなんでしょうか。それだったら、単に棲み分けの問題だし「世界レベルのゲーム」がどうとか言わなくても良さそうですが。「弱小」のような言い方から察するに、単に開発費が満足にでないし市場規模も小さいくらいの意味なのかもしれません。しかしそれなら、もっと丁寧に言ったほうが敵を作らなくて良いように思われます。

もうひとつ気になるのが、「世界レベル」ということば。仮想敵というか目標地点として、アクション系の「ゲーム性」を想定している、というのは何となくわかります。わかりますが、そこでの「世界レベル」ってなんでしょう。FPS洋ゲーとかなのかな。そして、ビジュアルや音楽が、一体どうなったら世界レベルだと理解るのか。

それとは別の問題として、日本の美少女ゲームは既に「世界レベル」だと思いますよ。というか、読み物ゲームにこんだけ気合入ったシステムと演出つけてるってそれだけで凄いと思うんですけど、そういうところは見ないのか、少し疑問です。そもそもゲームとしてADVを低く見ている、というのはあるのかもしれません。

総じて勢いがあって自信に満ちているのは小気味良いのですが、いかんせん業界に対して挑発的というか挑戦的なのが、私的には気になってしょうがありません。たとえば、「このゲームは業界内で FULLTIME しか作れません」くらいは技術力のアピールとして許容範囲だとしても、何の留保もつけずに「バーチャルリアリティである事がゲームの証であり、それを進化させ提供し続ける事がゲームメーカーとして必要である」というのは、そういう方向性でゲームを考えていないところは論外、と切ってすてるような乱暴な態度に見えますし、「たれ流しの映像、音声、テキストなどを受け取るだけのシステムではゲームたり得ない」のような文言をデカデカと載っける意味ってあるのかなぁ、と……。

問題にしたいのは、なぜこの人たちはエロゲーを叩いていると見えるようなことを、殊更に言い立てる必要があるのかということです。というのも、この人達の前提では、エロゲーは「凄いもの」を作れないという常識と実態があったわけですよね。その中で、自分たちは「世界レベル」のものをつくったのだ、と。

それなら、エロゲー相手に競うより、他と戦うほうが順当じゃないですか? ということが言いたい。少なくとも、仮想敵はエロゲーで無いところに置いたほうが生産的です。「世界で勝負できる」のに比較対象は(FULLTIMEさんが世界から程遠いと思っている)エロゲー業界のままで、そこと比べてるだけというのはどういう了見か。無意味な「身内叩き」にしか見えません。ぶっちゃけ。

「エロゲーにだってこんな凄いことができる」と言いたいのなら、FULLTIMEさんが考える「世界レベル」の相手と比較して、ここが凄い、あそこが凄いと言ってくれれば、「おお、エロゲーの星や!」というふうに思えたでしょう。でも、肝心な部分は「本物」とか「世界レベル」という抽象的なことばだけ並べてお茶を濁し、あとは「お前らは本物じゃないよね」ってエロゲー業界を見下してる感じがする。

実はその通りで、「既存のエロゲーはダメだ。これだけがゲームだ!」と、内部改革をしたいのかもしれませんけれど。

そんなつもりは毛頭ないかもしれないし、あるいはゲーム性や革新性を追求しない業界へのいらだちが多少はあるのかもしれないんですけど、いずれにしてもこういう書き方はゲームの魅力を伝える文章にはなってないように、私なんかは思います。

あと、ストーリーで妥協を許さないのは良いとして、「現代社会に渦巻く領有権問題になぞらえて制作された異次元の日本とその周辺国の姿」とかをテーマにしちゃうってのは、妥協を許さなすぎて許されるのかと、微妙に心配だったりも……。

もちろん、メインカルチャーではいろんなしがらみがあってなかなか扱えないこの手の問題を、フィクショナルな形でとはいえ盛り込むということに意義はあるでしょうし、そういう社会的なメッセージ性を盛り込みたいというのは分からないでもないんですが、本当にすべての部分で「世界レベル」を目指すなら、この辺にもある程度配慮必要なのではないかと思ったり思わなかったり。まあ『レイプレイ』の時とは違って国際問題に発展することはないでしょうけど。異次元らしいし。

OHPの宣伝文句にツッコミ入れるとか、私もたいがい暇ですけれども、こういう言い方はカチンとくる人もいるでしょうし、また、他のゲームの良いところを見ようとしていない、独善的な感じに見えてしまう。私たちはゲームをやって判断すれば良いわけですが、それにしても変な先入観を与えてしまうのは勿体ないかなぁと思ったりした次第です。余計なお世話か。

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さてさて、私はネタにマジレスしちゃったんですかね。それにしたって、こんな全方向に無差別絨毯爆撃に出るような開発スタンス載せなくてもやりようがあるようなないような……。

ともあれ、実際にFULLTIMEさんの「世界レベル」がどんなものか確認せずに終わるのは何かモヤモヤするし、また非礼でしょうから、もう予約はできませんが、発売日当日かその前後に購入して、内容をチェックしようと思います。


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