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タイトル:『操心術∞ 』(STUDIO邪恋/2012年11月30日発売)
原画:YUKIRIN
シナリオ:おくとぱす
公式:操心術∞OHP
定価:8800円
評価:A (A~F)

関連: 批評空間投稿レビュー (ネタバレ無し) ※外部リンク

※具体的な長文感想・内容紹介は、批評空間さまにて投稿しております。



▼評価について
いやあ、凄いゲームです。めちゃくちゃ面白い。細部の整合性がもう少しきちんととれていたらSつけたかも。

批評空間さんの感想で私は、「明らかにシリーズファン向け」と書いています。これはもうシリーズやってる人には当たり前のように分かって貰えるとは思うのですが、他の方のレビューをちょっと拝見すると、「シリーズやってなくても楽しめた」みたいな感想が多い。

ちょっと驚いたのですがよく考えてみるとこれは別に矛盾でも何でもなくて、やってない人でもそれなりに楽しめるし、やってないと気付かないような形でネタが仕込まれているというだけの話です。ほとんど不自然さは無くて、まさかあれやこれや、挙げ句にそれまで、過去作から引っ張ったネタだとは思わないわけです。しかし、やってりゃ気付く。そして気付くと、当社比(笑)で倍くらい面白さが変わります。

というわけで、過去作プレイしていなくてもそこそこの作品。やっていれば超面白いという本作。基本的に「買い」だと思いますが、買わない方が良い人は3種類。まず、過去のシリーズや『催眠遊戯』のような催眠系作品をプレイしたことがあって、「肌に合わないな」と思った人。基本的にやってることは同じなので面白くないと思います。次に、これから過去作をプレイする予定がある人。今回「∞」はシリーズの完結編という位置づけなので(春生を主人公にした外伝が企画されているようですが)、シリーズ全体のネタバレが含まれます。これ知ってしまうと過去作の面白さがスポイルされるので、「∞」を一発目に遊ぶのは避けたほうが良いでしょう。最後に、凌辱・アヘ顔・お漏らしがダメっていう人。この辺はHPで確認できると思いますが、割と派手にそういう描写があるので、ご注意ください。

▼雑感
色々書きたいんですが、ネタバレすると台無しになるので書けない……という人は多いのではないかなぁ。「3」や「0」ほどではありませんが、本作もネタバレ喰らうと面白さががくっと減ります。興味のある人、プレイする予定のある人は、できればネタバレを見ないことを強くお勧めしておきます。ただ、本作でネタバレが拙いのは、作品自体のストーリーの面白さを損なうと言うより、本当は作品が明かすハズだった過去シリーズの秘密が、ある一つの出来事を説明することによって一気に解明されてしまうから……というほうが適当でしょうか。

この作品の面白さはなんでしょうね。色々あるとは思うんですが、主だったところを挙げると……

・ エロい。(超大事)
・ ストーリー自体が面白い。(展開は読めるのだけど、その結果どうなるのか想像がつかない)
・ テーマがきちんとある。
・ シリーズがきちんと完結した。

こんなとこかな? あとスタッフが凄く丁寧に、大切に作品を作ってるのが伝わってくるので好きです。

「テーマ」っていうと何か大上段に構えた高尚なもの……と思われそうですが、そういう話ではないです。恋愛を描きたいなら、恋って何だとか愛ってなんだとか、こっちが問いを作品にぶつけたときに返事をしてくれるような「土台」を持っていること。私の考えるテーマ性というのはそれに尽きます。

で、本作のテーマは何だったかというと、批評空間さんの感想でも書いたとおり、やっぱり「愛」ですよ(笑)。要するに、「本当」の「心」って何だろうという。ずーっと延々このシリーズがやってきたことのようにも思います。この作品(シリーズ)は「心」を操るわけですが、じゃあ「心」ってどこにあるのか。どうすれば、その人の魂を手に入れたと言えるのか……。

「私がやりたいのは、もっと深く根本的な、人間そのものの作り替えだ」という伊吹の発言はやっぱりすごく意味深です。その後も、「人間の精神を構成する要素について、何か足りていない気がする」みたいなことを言う。伊吹はその「何か」の答えをすぐに見つけてしまいますが、ユーザーはそんな伊吹をどこか遠くから眺めることになります。

ここは私のブログなのでもう少し踏み込んでみると、結局人間の人間たるゆえんはどこにあるの? というところまで、この作品の射程はあるようにも思う。人間の本質は精神なのか、肉体なのか。そんな感じ。そして、恐らく作品は回答を出しています。スタッフの方がそこまで意図していたかどうかは解りませんが、精神でも肉体でもなくて、「関係」こそが人間の本体である、というような落とし方に持って行っている気がする。

ネタバレぎりぎりのラインの発言になりますが、今回「∞」にはクローン人間みたいなのが出てきました。で、クローンには名前が無いんですね。「クローンA」「クローンB」みたいな感じ。当然肉体は複製だし、精神というか思考みたいなものも基本的に元の相手のコピーということになっているし、クローンたちにはオリジナリティは欠片もない。

一方、街中でいきなり犯されるような「市民」には名前がちゃんとある。声だけの出演でも彼ら/彼女らは固有名詞で呼ばれています。ところが、ユーザーからすると明らかに「クローン」のほうが人間で、名前のある「市民」はただのモブに見える、と。

うーん、ダメだ。上手く言えないな。この辺りはネタバレとの兼ね合いをみながらまた書き直すつもりですが、とにかく衝撃のラストシーンで一気にいろんな可能性が開けるようになっています。

シリーズの謎がほぼ全て、見事に解明されますし、ファンならやらなきゃ絶対損。世間では『ガンナイトガール』や『ガクトゥーン』、『夏ペル』の話で盛り上がっていますが、私の中ではそれらと並ぶことに何ら遜色の無い、2012年末のすばらしいプレゼントでした。

スタッフのみなさん、最高の終わり方を(まだもうちょっと続きそうですが)していただいて、本当に有難うございました。待った甲斐がありました……。

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