なれる!SE08
夏海公司 『なれる! SE8 案件防衛?ハンドブック』
(電撃文庫、2012年12月8日、イラスト:Ixy)

ひさびさのラノベ感想。今回は、『なれる!SE』の8巻です。

業界人として順調にキャリアを積み、成長してきた工兵くんですが、これまで戦ってきたのは人柄の善し悪しはあるにせよ、同じ土俵で正面から戦う相手ばかり。今回は、工兵の立っている土俵をはみ出したところから、堂々と盤面返しをしかけてくる相手との戦いになります。

その相手とは、ライバル社であるアルマダ・イニシアチブの新人、次郎丸縁(表紙の女の子です)。前巻で「リドルリドルの案件から撤退させられた」というのが伏線というか、そこから膨らむ話になっています。

内容はいつもどおり。

ヤバい! → 全力で対策して何とかしてみせる! → なんとかなった(・∀・)

という黄金パターンなので安心してみていられますし、「一度対応した案件というのは実はその後も続いていて、維持することこそが難しい」というコンセプトも明確ですっきり読める。まさに「守成は創業より難し」。工兵の新たな視野が広がるとともに、過去の絆や経験がいかんなく発揮される主人公大活躍路線が素敵です。また工兵の毒牙にかかるおにゃのこが一人増えるのかと思うと、何というか非常に楽しめました。

しかし、この話って「リアル」なんでしょうか。

Amazon先生のレビューを見ると、「すごくリアルだ」と言っている人と、「リアルじゃない」と言っている人とでまっぷたつ。でもどっちも評価は高い。私の友人のSEに訊ねても、やっぱり「リアル」という人と「リアルじゃない」という人がいます。

まあ普通に考えたら職場が女の子ばっかり、しかも揃いも揃って有能。上司や社長も基本的にネジは飛んでいるけどデキるやつで、主人公も素人なのにホントの一夜漬けでいろんなことをマスターしたりする超人っぷりを発揮する……なんてのは現実離れしてると思うわけです。タイトルを、『デキる!SE』にしたほうがいいんじゃないかというくらい。しかし、SEやってる友人何人かとこの作品の話になると、皆口を揃えて「リアルで泣ける」みたいなことを言う。これどういうことなんだろうか、と。

SE関係とは縁もゆかりもないので話を聞く限りの想像になりますが、案件のトラブりかたとか上司のクズっぷりとか、細かい描写やネタのところでは業界内輪っぽさがガンガン出ている一方、大まかなストーリーはご都合主義全開でまったくリアルじゃない、というのが結論ではないかと思っています。だから、まったくSE関係がわからない素人にも楽しめるし、業界人は業界人でうんうんと頷けるんでしょう。たぶん。きっと。

しかし、室見さんとのロマンスはちーっとも進展しないのに割と面白く読めちゃうのが不思議。私って基本的にラヴが無いラノベ苦手だったはずなんですが……。

まあそんなこんなでリアルとアンリアルの間をたゆたうこのシリーズ、工兵くんが成長するにつれて段々敵も強くなり、バトルもののような盛り上がり方をしてきました。そのうち、室見さん以上のエンジニアがあらわれ、室見さんが武者修行に出る……みたいな話になるかもしれません。その前に会社が飛んで藤崎さんが社長の新会社ができたりは……しないかな? いずれにしても、この先がなかなか読めなくて楽しみです。

どうでも良いけど今月の「電撃の缶詰」、「私の電撃体験#21」は夏海公司さん。「HelloweenのEagle Fly Free」を聴いて「頭を殴られたような衝撃を受けました」と書いておられて、勝手に親近感を抱きました。良いですよね、「Eagle Fly Free」。あと、「コンドルは飛んで行く」も好きです。鳥が飛ぶ繋がりで……。

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