私は基本的にファッションなんぞ興味なし、服はユニクロですらなく、その辺のホームセンターとか青木さんとかで300円くらいのを買いあさってヨレヨレになるまで保たせる……みたいな人種です。が、都合でどうしてもフォーマルな良い服装が必要になることがたまにある。そういう時は仕方がないので、デパートなるところに出かけてお上りさん状態になりながら、ブランドものの服を買ったりするわけです。一張羅ってやつですね。まあ普段着るものではないから消耗も少なく、1着2着あると10年20年といけますし、そこでケチってもしょうがないだろうと。

んで先日は友人の結婚式用の小物を買う為にでかけたのですが、その時におや? と思うことがありました。タイとハンカチを某ショップの店員さんに案内して貰っている最中、隣で接客していた別の店員さんが、お客さんにこう言っていたんですね。「これ、いま凄い人気なんで、皆さん買われていて、これが最後なんですよ……」とか何とか。

品薄商法ではないけれど、「これで最後」というのがポイントですよね。買わないと、もう手に入らないような気分になる。そして、「凄い人気」というのもセールスとしては上手い。みんなが買っているなら良いものなのだろう、という安心感が持てる。

しかし、実際そのお客さんも買わなかった。結果的に売り込みは失敗したわけです。そして、その彼と理由は違うのかもしれませんが、もし私がお客の立場でもそれ(ちらちら見ていた限り、靴)は買わないなあと思いました。その意味で私は、店員さんの「勧め方」にはミスがあったと思う。

どうしてでしょうか。

私の冒頭の記事が前フリになっていたわけですが、ふつう、デパートのちょっとお高いお店で服を買おうというのは、普段からそういうこだわりのある人か、私のように何か必要に迫られて来る人間かがほとんどだろうと思います。

前者であれば、だいたい「何が流行っているか」くらいはおさえているでしょうから、今更説明するより他のセールスポイントを言った方が効果的。上級者に初心者用の説明してもしょうがないので、もっとつっこんだ話をしましょうということになります。

一方後者の場合、その服なり靴なりは「特別な」意味をもつことになります。まあプレゼントだと相手の好みが解らないから無難なもの……という選択肢はあるのかもしれませんが、自分用なら、やっぱりちょっと「人と違う」ものが欲しくなるのではないでしょうか。

ちなみにそのお客の彼は、上下ユニクロでした(なぜ解ったかというと、私も別種の同タイプの服をもっているからです!)。そして靴は定番のコンバースAllSTAR☆ミ。たぶん、普段はこういうお店で買わないのでしょう。そして、「他の人と同じ」が良いのなら、大人しくユニクロなりABCマートなりへ行くやろな、と

そういうお客というのはオーダーメイドするほどのこだわりは無いし、なんだかんだで「ブランド」という一般性に頼っているとはいえ、気持ち的には「一点モノ」を求めてきているハズです。果たして「一点モノ」にどれだけの意味や価値があるのかとか、どうして「一点モノ」を求めたがるのかとか、そういう話はいったん措いておきましょう。やっぱり自分だけのモノ、オリジナリティを表現できるモノって欲しいじゃないですか。……どうでも良いけどあんまりこういう発想が行きすぎると秋葉原の駅前にいるエウリアン(絵画詐欺師)に引っかかるんで注意が必要ですぞ。

ともあれそんなわけで(どんなわけだ)もし私が店員なら、こう言えるものを勧めたと思います。「これは、あまり有名ではありませんがとても良い品で、知る人ぞ知る逸品なんですよ」とか。

おしゃれに興味無い私も、実は大昔にアパレル系のお店でバイトをしたことがありました。まあ子供服のお店で、ユニフォームは支給だったので知識さえ仕入れてニコニコしてりゃなんとかなったんですよね。あ、姿勢は凄い注意されました。……ってそんな話はどうでもよくて、そこでお客に勧めるための方針として次のようなことを教わりました。「こだわりのある人にはこだわりのある品を、こだわりの無い人には流行の品を」勧めるのだ、と。そして会話や服装のチェックから、そういうのを見極める方法みたいなのも教育された。

ぶっちゃけもうあんまり覚えていないうえにそれが妥当だったのかはわかりませんが、そう言う私のバイト経験から言えば、今回隣にいたお客は、服装的にはこだわっている感じでもないし、またたぶん、会話をしても特にこだわりは無かったんじゃないかと思う。でも、そういうこだわっていなさそうな人が、こだわりのある人向けのお店に来る時点で、逆にものすご~くこだわっている部分もあるとは思うのです。

その辺、会話しながら引き出していってお客の希望にかなうものを提供する(実際にその品が完全にお客の希望通りでなくても、そう思わせて満足感を与える)のもテクニックなんでしょうけど、なかなか難しいですよね。実際私も難しかった。

その辺を上手くクリアーしているのはユニクロやABCマートみたいな形式でしょう。一点モノを求める人はそもそも想定せず、お客がショップに来た時点である程度方向性は見えている。オーダーメイドの店なんかも逆の意味で同じ分類になると思います。

つまるところ人が何を求めているか、その意識の方向性を読むことでパッケージングというのは成立するわけですが、無理によまずとも逆にパッケージによって意識の方向を決定づけるという転換が行えれば手っ取り早いわけですね。

そしてこれは、服飾に限らず、あらゆる分野(たとえば文章だってそうでしょう)にも通用するのだろうと思います。そんなことばっかり考えて好きなことできなくなったら本末転倒ですが、ある程度パッケージを意識した文章のほうが引き締まるし、私自身は好きなので、そう言うところを目指していきたいですね。

というわけで本日はこの辺で。また明日、お会いしましょう。

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