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タイトル:『バス畜』(アトリエかぐや/2012年9月28日)
原画:みゃぁん
シナリオ:すまっしゅぱんだ
公式:『バス畜』 OHP
定価:3980円 ※DL版3480円
評価:D(A~E)

関連: 批評空間投稿レビュー (ネタバレ無し) ※外部リンク

関連: 「攻略:『バス畜』」(2012年10月26日)


※具体的な長文感想・内容紹介は、批評空間さまにて投稿しております。



▼評価について
う~ん……。正直言うと意外と面白かった気もするんですが、ゲームとしての本来の楽しみ方とは明らかに違う方向で楽しんでしまったので、何と言って良いか……。展開の唐突さやキャラの言動などでツッコミどころが満載でした。ぶっちゃけ、こういうのが一番困ります。ネタ的にはおいしいけどゲームとしては微妙という。まあ4000円のミドルプライス(ギリギリロープライス扱いでも良いのかな?)にしてはありがちな、ごくごく普通の出来映え。もろもろの要素を含めてトータルとしての完成度を考慮すると、ちょっと普通より劣るという評価が妥当でしょう。ちなみに私の中のD評価というのはギリギリ許容できる範囲(Eになると赤点)。かぐやにしては物足りないにしても、それなりに使えそうなシチュエーションもあり、描写や卑語もそれなりに頑張っていて、CGもそれなりのクオリティです。それなリズム。

▼雑感
催眠もの。乗ると淫らな気分になって車内で淫行に及ぶという都市伝説のバスを発見した主人公・智哉が、その力を使って自分の居場所を守ったり、両親の復讐を遂げたりします。そんなちゃんとした話じゃなかったはずなのに、要約するとこうなる不思議。

シチュエーションは結構バラバラ。衆人環視・輪姦がメインになるかと思いきや、案外少なめ。基本本番は智哉が中心。羞恥プレイ、フェラ、後ろあり、ローター、バイブ2穴挿し、放尿、自慰などなど。場所もバスの中に限定されず、綾乃は部室でもコトに及びます。バス畜とは何だったのか。特殊性癖として先生が臭いフェチ、綾乃がドMなんですが、これ申し訳程度にしか活かされてない設定だよなあ……。

さて、てっきり『最終痴漢電車』シリーズの人気にあやかって(丁度「3」のアニメもリリース中ですし)二匹目のドジョウを狙ったような内容になるかと思いきや、あにはからんや、ストーリーに力を入れた感じになっています。批評空間さんへの感想では「起承転結」だと書きましたが、選択肢次第で「承」と「転」がひっくり返るので、「序破急」のほうが適切だったかも。

 (起)部長失踪の原因を探る
 (承)廃部の危機
 (転)九法院家への復讐
 (結)佐荑山キューピットの真相


ではなくて

 [序] 「佐荑山キューピット」の謎 (部長失踪事件) 
 [破] 「佐荑山キューピット」の利用 (廃部の回避+主人公の復讐)
 [急] 「佐荑山キューピット」の正体 (解決編)


という分類ですね。

うん、こっちのほうがしっくりくる。……誰も抜きゲーの物語構成に興味なんぞ無いのかな。でも「抜きゲーにだってストーリーがある」論者としては、やはりそこはおろそかにできません。

あ、その前にそもそもこれが抜きゲーかどうかっていう話ですが……まあ抜きゲーで良いと思います。一応ジャンル的には伝奇サスペンスとか、そういう部類に入るんでしょうか。ただ、途中経過がすっとばされることや、感情の推移があまりに急なこと、キャラが唐突に増えたりして、最後は後出しじゃんけんのようなご都合主義でそれまでの展開が解決されることなどから、ストーリー性や物語のギミックを最大の魅力として考えるにはちょっと無理があるかなと。一番目を惹くところはどこか、と訊かれたら、やっぱりエロです。

Hシーンの数は20弱とそれほど多くなくて、それだけに中盤ちょっとHの間隔が開くところがあります。何度かスキップに手が伸びそうに。ただ冷静になって思い返すと、最近たたみかけるようにHシーンが続く作品を立て続けにやっていたせいで長く感じただけで、フルプライスの作品とかと比べると、そこまで冗長でも無かった気もしてきました。案外程良いバランスでシーンが挿入されていたと言えなくもないのかな。

選択肢が途中で出ますが、これは攻略? の順番が変わるだけで実質的に内容の差は無し。内容に差がでるのはED直前の選択肢だけです。一応両方やったので長くかかりましたが、特にどうしてもという理由がなかったら、ED直前のセーブで分岐させるだけで良いでしょう。なんでこんな選択肢を作ったのか、あんまり良くわかりません。私が見落としているだけで、是非とも入れたい特別な内容があったのでしょうか……。

「評価について」のところで、トータルで考えたときに「ちょっと普通より劣る」と述べました。それは、やはり作品を貫く明確なコンセプトが無いためです。途中の展開としては、相手を催眠で支配して言いなりにして、隠された性癖を暴いていくようなHがメインとなるのですが、終盤からEDにかけては、純愛か主人公が支配されるような感じにシフトしていきます。

これは私に言わせれば明かなコンセプトミスで、途中まで支配路線で行ったなら最後は「全員思いのままに操る」のような終わり方を用意するほうが良かったでしょう。一応ヒロインたちが隷属しているような描写は一応あるものの、主人公自身が能動的に動いた結果そうなるわけではない(つまり主人公が操っているのではなくて、ヒロインたちが勝手に主人公に従う)ので、何が何だかわからないオチになっていました。逆に、そういうEDを引き立てたいなら途中のHは変に鬼畜モードで押さないほうが良かったんじゃないかなあ。

ともあれアトリエかぐやのかつての栄光を思うと、ちょっと寂しい感じもしないではありませんが、全然駄目という感じでもなくて、今後の展開を期待したいかなと思わされるような作品でした。このくらいのエロクオリティを維持しつつダーク、またはシリアスなシナリオを混ぜることに力を注いでいくなら、これまでとは違った面白いブランドになるかもしれません。

あとウルトラどうでもいい話をちょっとだけ。げっちゅ屋さんDMMさんDLSite.comさんではそれぞれこの作品の紹介文が全く同じ。たぶんメーカー側から提供されたものをそのまま使っているのだと思います。が、「佐瀬山キューピット」が「佐瀬山キューット」になっとる……(笑)。キーワードのはずなのにちょっと可哀相だなと思ったのでした。

てなところで、本日はおしまい。また明日お会いしましょう。

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