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宮原るり『僕らはみんな河合荘』3巻(少年画報社、平成24年8月30日)

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『河合荘』の3巻が発売されたので早速購入。良かったです! 「コミックナタリー」さんの記事によれば、「ヤングキングアワーズ10月号(少年画報社)では単行本3巻の発売を記念して、巻中カラーページにて「僕らはみんな河合荘」の特別企画を実施。同誌の表紙や単行本のために執筆されたが、使われることのなかったラフイラストを一挙に公開している。」とのこと。人気出てきてるのかな……。気になっている方はこれを期にチェックしてみるのも良いかもしれません。

ぱっと見は何というかもう、ラブコメと言って良いのかどうか微妙な内容になってきました(笑)。宇佐くんと律先輩の仲は一応描かれるものの、進んだような進んでないような、実に微妙な感じ。むしろ、二人を取り巻く人々の日常というか生態が話の中心となっている巻のようにも思われます。特に今回は、河合荘の中でも特に謎おおきあのお方の過去が少し明らかになります。まさかアッチ系の人だったとは……。

あと、前巻でちょっと後腐れの残りそうな別れ方をした宇佐くんのお友達も再度登場し、一応大団円のような形を迎えていました。優しい展開ですね。

ただ、「ぱっと見」と変なことわりを付けたように、どれだけ周りの人々が出てきてもそれはスパイス。やっぱりこの物語の中心は律と宇佐――というか律でしょう。

今のところは、ですけど、律の「一人でいたい」というのは臆病であり甘えであると思います。基本的には寂しがりだし、構って欲しい。けど必要以上には構って欲しくない。彼女が一人でいたいのは、結局そういうの考えるの面倒だから。

でもやっぱり根っこの部分は寂しいから、時々無性に人恋しくなる。それで、自分の都合の良い時だけコミュニケーションとれる(必要以上に踏み込んでこないし、踏み込まなくてもやっていける)宇佐や河合荘の住人が好きなんだけど、それってただのワガママじゃないか、という自覚もあって、そういう自分に自己嫌悪……みたいなめんどくさいメンタリティ。これが外れていないのだとすると、私にはとても良くわかる……気がする。

自分が求めるもの、欲しいものがあるけれど、それを手に入れようとしたときの面倒くささや、自分が傷ついてしまうことを考えて結局求めるのをやめてしまう。律はたぶん、そういう生活を送ってきた。彼女が本を好きなのは、そこに何か求めるものがあるというのも確かなのでしょうが、それ以上に、本は能動的に彼女を傷つけることが無いからだと思います。少なくとも律は、そんな風に本を「利用」している。

対する河合荘の住人たちはどうか。彼らは律と比べるとバカをやっているようにしか見えないけれど、自分が求めるものに正直で、そして傷つくことを恐れない。彼らはノー天気なお馬鹿さんに見えるけれど、でもそれは何も考えていないからではなくて、自分自身に対してバカ正直だからじゃないかなあ。傷ついても傷ついてもまっすぐ向かっていく「かわいそう」な住人たちと、傷つくことを恐れて立ち止まっている「かわいそう」な律と。どちらも「かわいそう」ではあるのだけれど、その意味は微妙に違っている。そんな風にも思います。そして、そんな律の微妙な変化がこの巻でははっきりと描かれていて濃密な内容。

いずれにしても、まったり日常系でありながら俄然面白くなってきた3巻。あんまり密度が高くなりすぎると長期連載は難しいかもしれませんが、ダラダラやって盛り上がる話でもないと思うので、引き続きこの調子で引き締まった展開を期待したいです。

といったところで、本日はこれまで。また明日。

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