いくつか01いくつか02
陸乃家鴨『一緒に暮らすための約束をいくつか』(芳文社、2011年~)、全2巻。

オビの文句にある通り、女子中学生と三十路男の二人暮らしが描かれる本作。先日、心待ちにしていた第2巻が発売されたのですが、意外と呆気なく完結してしまいました。2巻で終わりかぁ。・゚・(ノД`)・゚・。

作者は、陸乃家鴨(おかの・あひる)氏。別名義(厦門潤)でエロ漫画描いたり、亜藤潤子名義で少女漫画描いたりとマルチに活躍しておられます。絵柄は成年誌っぽい絵柄といえばそうですが、非常にスッキリしていて表情豊か。表紙の絵も可愛いじゃないですか! 全体的に独自のスタイルが確立されていて、表現に安定感があります。掲載雑誌は『週刊漫画TIMES』。聞くならく、不定期連載だった模様。

大人の男が少女を「拾って」、養い育てるパターンの話というのは、『源氏物語』の昔にはじまり、チャップリンやら、最近だと話題になった宇仁田ゆみ『うさぎドロップ』などなど、映画に小説に漫画にと名作が数々ありますが、そういった作品と本作が異なるのは、少女が大人の男を拾う(捕まえる)側面が強く打ち出されているところでしょうか。

35歳の「ほぼ」フリーター、藤木悟郎(ふじき・ごろう)。彼はひょんないきさつから、高校時代の親友であった三浦久志(みうら・ひさし)と美香(みか)夫婦の忘れ形見、三浦紗那(みうら・さな)と一緒に暮らす決意をします。

「大人になったとき、まだゴローに恋人がいなかったら、私をお嫁さんにして」

その約束を覚えていた紗那は、大喜び。しかし、身寄りが無いわけではない(祖父母はいる)紗那と、まったく関係のない悟郎が一緒に暮らすにはクリアーしなければならない課題がたくさんあるわけで……。悟郎の「恋人」、原由香利(はら・ゆかり)をはじめ周りの人間を巻き込みながらスタートした、2人の共同生活も2年と半年が過ぎ、紗那が中学3年になった時から物語は始まります。一緒に暮らす以上、絶対に守る「約束」をしよう。たとえば、朝ご飯は必ず一緒に食べる。そんな日常を維持するための些細な、けれど絶対に破ってはならない約束を――。21歳離れた2人、悟郎と紗那のラブストーリー。

大筋は、エロのある『うさぎドロップ』ということでだいたいOK。ただ、より複雑な事情や感情を入れようとして、とっちらかった感が強いです。作品のまとまりは、前半は育児に、後半は揺れ動く2人の感情にと狙いを絞ったぶん、『うさぎドロップ』のほうが高いし、2巻完結という短さから見てもわかるとおり、本作は後半かなり駆け足になってしまい、いろいろ描写不足なのは否めません。けれど、育児ものという側面をスパッと見切り、シンプルに恋愛ものと考えた場合、いましがた書いたようなことは必ずしも欠点ばかりとは言い切れないでしょう。

悟郎(作中ではゴローと呼ばれますが、某AVを思い出すのでなんとなく回避)がどうして紗那と一緒に暮らそうと思ったのか。ネットの評判や、私の周辺の感想を聞いていると、身寄りがないわけでもない紗那を悟郎が引き取ることになった事情が強引で説得力がない、中年男と女子中学生を一緒に住まわせるという設定のために無理をしているようにみえた、という意見をちらほら見かけます。

この批判が間違っているとは思いません。たしかに、結構無理している。でも、そうしたことによって描かれているものが変わっている、ということに目を向けないのは、いささか勿体ない気もします。

「身寄りがないからひきとる」というのは、外側の理由付けとしては完璧ですが、裏を返せば引き取る側は単なる偶然で相手を引き取ったにすぎない。でも、悟郎は違います。悟郎は紗那でなければ引き取らなかったし、紗那も悟郎だからついていったということが、ハッキリと示される。そのためには、紗那にも悟郎にも、他に手段はいくらでもあったのに、敢えて一緒に暮らすことを選んだ、という設定が必要だったわけです。ある意味、スタート時点から2人は恋におちていた。その展開として本作のやり方があまり上手くないというのは認めざるをえないところかもしれませんが、単純に他の類似作と比べて、「あっちのほうが理由がちゃんとしてるのにこっちは無理矢理感がするからダメ」というのは、少々乱暴。

ともあれそんなわけで、本作は年の差カップルの同棲ものとしての側面がかなり強くなっています。個人的にはキーとなる台詞が2つあって、1つは「好きだったから、よけいにわからないものなんじゃない?」という紗那の言葉。もう1つは、「どうすればいいかではなくて、どうしたいのか」だ、という由加利の言葉。この作品で描かれる、相手に向けられる「好き」と、自分の気持ちとしての「好き」のあり方がくっきりと出ている。どちらもとても良いシーンです。

また、由加利との恋愛がエロ有り(肉体的)になっていることで、紗那とのプラトニックな恋愛が際立つ仕掛けは上手。もの凄い年の差カップルという特殊な状況を通して、逆にどんな恋人にも共通する、普遍的な恋愛の「こころ」のあり方を描いた、後味の良い作品。ちょっと紗那に対する性欲が薄すぎて、恋愛ファンタジーだなとは思うのですが、若い人にはこのくらいのほうが楽しめるのではないでしょうか。……うん、ちょっと連載する雑誌間違えたかもしれませんね……。

というわけで本日は漫画の紹介でした。段々エロゲーの話が減ってきた気がしますが、もうすぐ月末なのでまた頑張ります。それでは本日はこの辺で。また明日、お会いしましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加