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タイトル:『獄城の跪姫リーナ~お前には白濁のドレスがよく似合う~』(Shelf/2012年1月27日)
原画:しt/シナリオ:H、関町台風、柴田@ねこ
公式:http://www.a1c.jp/~shelf/prod/ri/ri_data.html
批評空間レビュー投稿:無
定価:6000円
評価:C(A~E)


▼あらすじ
騎士の国、グランラフィーネス。主人公・オリアスは宮廷魔術師の最高位であるグランマギカに就任した。だが彼の正体は、数十年前グランラフィーネスによって滅ぼされた魔術王国サターニアの王子・サレオスであった。オリアスは文字通り悪魔に魂を売り、王国の主要人物を辱め、国を滅ぼすことを決意する。対象は、仇であるグランフィーネス王に嫁いだかつての恋人・王妃シルヴィアと、その娘で勝ち気な姫騎士リーナ、リーナの妹で内気な王女サラの三人。オリアスによる復讐劇が始まろうとしていた。

▼攻略
攻略はほぼ問題ないと思いますが一応説明。
リーナルート : リーナだけ選び続ける。
サラルート : サラだけ選び続ける。
シルヴィアルート : シルヴィアだけ選び続ける。
ハーレム(?)ルート : それぞれ順番に1回ずつ選択を3ターン。
(例:リーナ→サラ→シルヴィア→リーナ……

と、単純明快。ハーレムといってもHシーンを2つ見て終わりですが。

リーナが15シーンCG17枚(差分無)、サラが14シーン16枚、シルヴィアが14シーン15枚、その他Hが3シーン5枚で、合計46シーン53枚。H以外のシーン・CGは皆無。

1シーン内で別々のキャラが登場するなど絡みも多め。丈も結構長く、シーン中にCGが変わる場合もあり。その他Hではメイン3キャラ以外のキャラのシーン(回想ですが)も用意されており、バラエティ豊富。この価格帯の作品としてはかなりボリューム頑張っています。基本は主人公との1:1ですが、一応触手やスライム、リンカーンもフォロー。お薦めはタイトル通りのリーナさんで、「思っていることと逆のことを言ってしまう魔法」や、「本心を喋る鏡」によって精神をねちっこくせめられるのが良かった。実質嫌がってるのこの娘だけなので、堕ちを楽しむなら彼女押し。ただ、着衣H少なめです。鎧が2、下着1、ドレス4で後はほぼ全裸。サラは逆に全裸が4、5シーンでした。シチュエーションは全キャラ一通り揃っています。一番バランスが良かったのは、幼児化でロリ姿まで披露してくれるシルヴィア様。タイトルキャラなのにリーナはいまいちメインヒロインという感じがしなかったなあ(笑)。

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姫騎士リーナ。着衣Hがエロいのですが、少なくて残念。

▼評価
タイトルからしてもお手軽な抜きゲーかなと思いましたが、ストーリーテリングにかなりの力を注いでいたと思います。前半は、ひたすらオリアスが策謀を巡らせ、ヒロインたちを罠にかけていく様子の描写。Hシーンも、王妃様の自慰と、各ヒロインに一回ずつくらいで、それ以外はひたすら「下準備」によってキャラ描写と設定の掘り下げが行われていました。エロまでの助走が長いタイプ。

ただ、これは少々意外。というのも、体験版ではオープニング後すぐ調教場面だったんですよね。それに加え、そのオープニングのテキストが少々凄かったので、語りにこれほど力を入れてくるとは思っていませんでした。どんなテキストだったかって? ……うーん、まとめるのが難しいので、全文引用。
誇り高き騎士の国、グランラフィーネス王国―。

長年の宿敵であった魔法国家サターニア王国を打ち破り、その屈強な騎士団の威によって今や周辺諸国を従え、覇権を確立しつつある。

そのグランラフィーネスにおいて、間もなく新たな宮廷魔術師が選ばれることになっていた。

他国と同様に宮廷魔術師という役職はあるものの、代々グランラフィーネス王は騎士の出身であり、武を貴ぶ国風の中で魔術師の存在は軽んじられている。

もちろん、魔術を駆使するサターニア軍によって苦しめられた記憶のせいもあるだろう。

そして、その長きにわたる戦争―

第5次にまで及ぶ、ゲッシュランド大戦の200年によって生みだされたのが、対魔術装備アルス・ノヴァだ。

アルス・ノヴァにより戦力の中核である魔術を封じられたサターニアは、グランラフィーネス騎士団の野蛮な武力の前に屈した。

そしてサターニアの国も王家も滅んだ―それはもう、何十年も前の話である

グランラフィーネス王国内においては、その勝利の余韻すら忘却の彼方だ。

しかし、サターニアの敗北を、騎士団に受けた屈辱を、グランラフィーネスへの怨念を……まだ忘れていない者もいる。

イントロのはずなのにぱっと読んでも意味が良くわかりませんでした。私の読解力不足のせいではないはずだ! というわけで、ちょっと整理してみましょう。

①グランラフィーネス王国は誇り高い騎士の国である。
②宿敵魔法国家サターニアを倒し、周辺諸国を従え、覇権を確立しつつある。
③グランラフィーネスで新たな宮廷魔術師が選ばれそう。
④グランラフィーネスでは魔術師の存在は軽んじられている。
⑤騎士を尊ぶ国風だけでなく、魔術王国とドンパチしてた感情的もつれもあって冷遇。
⑥200年もドンパチやってたらしい。
⑦対魔術装備のアルス・ノヴァとかいう兵器を作って勝ったらしい。
⑧グランラフィーネス騎士団は野蛮な奴ららしい。
(あれ、誇り高いんじゃ……?)
⑨いままでの話は何十年も前のことらしい。
(Ω<な、なんだってー!?)
⑩グランラフィーネスでは忘却の彼方だけど、滅ぼされたほうは忘れてない。

情報としてはこうかな? しかし、配置が雑すぎやしませんか?

⑨の情報とか、最初に言って欲しい。②を読んだ限り、ついさっきサターニアを倒して覇権を握ろうとしているのかと思いましたが、どうやらサターニアを倒したのはだいぶ前。その後一気に周辺に勢力を拡げたということのようです。200年ドンパチやらかした後でもそれだけ頑張れる国力に驚きですが、そんな超大国が周りにあったのに何もしなかった周辺諸国も大概。

また、①と⑧で視点が変わっているのもちょっと困る。何となく分かりますが、統一感が無いというか……。事実の記述なら「誇り高い」とか「野蛮な」とか価値判断を挟まないほうが良いし、挟むならどっちかに揃えてほしい。

そして、唐突にでてくる「何十年」という話。だいたい20年くらいだということが作中明らかになりますが、それ、何十年じゃないじゃん! そもそも、200年戦争していた勝利の余韻が、20年そこらでなくなるってどういうことなの、と思わずツッコミを入れたくなります。

他にも、「代々、グランマギカは王族の教師を務めるのが習わしです。」と女王陛下が仰るのですが、「( ゚д゚)ぇっ……?」という感じ。だって、もの凄く魔術師の地位が低いという話をしていたのに、王族の教師になれるってそれ普通に考えたら滅茶苦茶良い待遇ですよ。洗脳やりほうだいですよ? さすがに雑な感じを受けます。

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主人公の元恋人にして現未亡人のシルヴィア。淫乱担当。彼女が一番ヒロインぽかった。

まあそんなこんなで、つっこみどころ満載の体験版だったのでそっち方面ほとんど期待していなかったのですが、意外にも(といっては失礼でしょうか)本編は面白く展開。

オリアスは、「悪魔の力」のお陰でほぼ何でもアリの無敵ング。基本失敗しないので、『凌姫』的な陰謀の連鎖による緊張感ある展開を期待すると微妙。見所は、ヒロインたちの性格が結構細かく描かれるところでしょう。

気が強く、頭もキレるけれど潔癖性で性的な刺激に弱いリーナ。大人しく夢見がちだけれど、思い込みが激しく狂気の片鱗を覗かせるサラ。そして主人公への愛情と罪悪感、娘や夫への愛と義理の間で肉欲をもてあますシルヴィア。きちんとヒロインを描写したおかげで、Hシーンでの反応や堕ちて行く過程に説得力が出ていました。これは、単に描写に分量を割いたからといってできるわけではなく、描写のツボを押さえていたからだと思います。ストーリーとしても、復讐劇という筋が一本通っていたし、動くキャラも多かったので飽きずに読めました。ただHシーンを並べただけの作品と違い、Hシーンが意味づけられて繋がるので、次の場面を見る楽しみもありましたし。

終わりは割と後味が悪いというか、あまりハッピーなものはありません。そのこと自体は不満も無いのですが、どうせこういう展開にするならもうちょっとEDでカタルシスがあれば良かったなと思います。救いのない終わりにするにしても、「ああ、復讐とは空しいものだ」とユーザーに余韻を持たせる。その為にはストーリーで助走をつけないといけないのですが、漫画の打ち切りよろしく、予告もなしにいきなりプツンと終わるので、少しもの足りませんでした。

あと、リーナルートの最後、「たった一人の恨みの怨念が世界を飲み込むように……。」というのは真面目な締めだったのでしょうが、「恨みの怨念」でちょっと笑ってしまいました。くり返しますが、テキスト的には最後まで結構難あり……。展開自体はそんなに悪くもなかったので、それさえ何とかなっていればもうちょっと雰囲気が出たでしょうか。

もちろん本作に関してその辺は、エロゲーとしての魅力を本質的に損なうものではありません。ミドルプライスでは十分過ぎるくらいのクオリティだったと思います。ただ、印象としては「抜きゲーの量が増えた」という印象。2000円の作品を3本買うのとどっちが得? と聞かれたら、はっきりとこちら、とは言えません。もう一歩差別化を図る為に、テキストやストーリーに厚みを付けるという選択肢はあるように思われました。

音楽やCGは結構良かったです。ってか、前作『かぎろひ ~勺景~』の時も思ったことなのですが、やっぱり構成とかテキスト面がちょっと弱いんですよね……。このままテキスト関連を伸ばせば化ける気配はびしびしします。しかし、第2弾と銘打っていた『クオリアフォーダンス』のほうはどうなっているのでしょうか……。

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