フリフレ2

タイトル:『フリフレ2』(Noesis/2011年12月22日)
原画:珈琲貴族/シナリオ:神楽坂ナオ
公式:http://www.gungnir.co.jp/noesis/products/frfr2/index.html
批評空間レビュー投稿:無
定価:3000円
評価:D(A~E)

《概要》
湊橋東学園に教育実習生として赴任してきた主人公・汐見海人。彼は煩わしい恋人関係を嫌い、「FreeFriends」(フリフレ)という出会い系サイトで性欲を解消していた。そんな彼が「フリフレ」を通して出会った少女、実習先の学生・篠崎菫。身よりを無くした彼女は、生活の金を稼ぐ為、海人に身体を売る。一度きりの出会いになるはずが、互いに心地よさを感じ、連絡先を教え合う二人。けれど海人と菫は、幼い頃に生き別れた実の兄妹であった。二人の想いの行方は、果たしてどうなるのだろうか。


《感想》
本作のレビューはあまり他の方がプレイしてみたい、と思えるような内容を書けなかったので、投稿を避けました。余り楽しくないかもしれませんが、単純な作品評としてお読みください。

大好評だった低価格帯ソフト『フリフレ』の続編。純愛/凌辱のどちらにもシフトする柔軟性に富んだシナリオと、珈琲貴族氏の描く淡いタッチのイラストが魅力的なシリーズだ。今回も同様のフォーマットは継承。しかし、残念ながら前作比較で明らかにパワーダウンした印象は否めなかった。

前作は家出少女との不倫を描いた作品だったが、互いに家庭内で行き場を失った二人が身体を重ね、心を通わせていく様子が丁寧に描かれていた。底を流れていたのは二人の「寂しさ」である。凌辱ルートも、その寂しさが歪にぶつかった結果として、非常に納得できる、統一感のある内容だったと言える。

本作の場合、菫は金に困っているのが主な事情であり、海人が買春をするのは性欲ゆえ。前作と違って、目に見える形での孤独は存在するものの、本質的にはさほど人に飢えてはいない。本作では「寂しさ」よりもむしろ、「背徳感」が強調されていると言えるだろう。

前作も教え子と教師という背徳感は描かれていたが、本作の場合は兄妹・血縁という葛藤がそれに拍車を掛ける。実際、OHPや各種媒体でもそのように宣伝されていたのだが……。蓋を開けてみると、期待したような葛藤・背徳感はほとんど無かった。

この手の作品において「葛藤」や「背徳感」が成立するには、「社会」がきちんと描かれている必要がある。なぜなら、主人公たちの葛藤というのは自分たちの内面と、それを許さない社会的な通念との間で生じるものだからである。つまり、社会の側、主人公たちを取り巻く「外側」の描写がしっかりしていなければ、それと競り合う主人公たちの内面描写も強度を保てず、心理描写も説得力のあるものになりにくい。

ところが、本作はその「外側」の構築にことごとく失敗した感がある。たとえば、菫が身を売るに至る過程。まず母子家庭で親が急逝したのに、一ヶ月で生活苦に陥るというのはさすがに備えがなさすぎる。保険くらい入っているものだろうし、それすらもできないような苦しい生活であったなら、菫がバイトすらしたことがないというのはどう考えても不自然。趣味と称して抱えている大量の少女漫画も、どうやって買ったのかという話である。

また、安アパートの家賃も払えず今にも追い出されそう、という設定だったはずが、海人のところへ引っ越す際には部屋に入りきらないほどの荷物を引っ越し屋に運ばせている。さすがにちょっとどうかと首を傾げざるをえない。

海人の間抜けぶりもすさまじい。菫を妹と判らなかったのは仕方ないにしても、買春時制服であらわれた彼女を見て、自分の実習先の学生だと気づかない不注意ぶり。いや、グラフィックが制服なだけで、菫はきっと私服で来ていたのだろう、と自分を納得させていたのだが、翌日学校で「ああ、見覚えがあると思ったらうちの制服だったのか」という海人の独白を見て、がっくりと脱力してしまった。実習生なのに相手の制服を見てなにも思わなかったということはつまり、この男、自分が社会的にどう見られるかなどということにほとんど頓着していないのだ。まあそもそも、教育実習期間に制服姿の女学生を買春しようとするのだからそれもむべなるかな、といったところか。

結局、海人と菫にとって葛藤を産み出す原因となるはずの社会的なサンクション(制裁)がほとんどまともに機能していない。加えて海人たち自身の中にさえその意識が希薄なのだから、最早どうしようもない。

きわめつけは、菫が実の妹だと確信した後の海人の行動。事情を打ち明ける為に呼び出すのだが、何故かホテルに行き、躊躇っているうちにムラムラきて、結局打ち明けずに肌を重ねる。そうなったら普通、事実を知りながら二度目の過ちを犯したわけで、逆にハードルがあがって言い出せなくなりそうなもの。ところが海人は、今度はきちんと菫に事実を告げるのだ。

優柔不断さを演出したかったのか何なのか、私には判断がつきかねるが、Hをする前は性欲に負けて言い出せなかったことを、Hしてスッキリしたら言えました、というのは、ちょっとばかりユニーク過ぎではあるまいか。

また、凌辱ルートに突入すると、海人はキャラが豹変。頭の悪いチンピラみたいな態度と思考がだだ漏れになって、情緒もへったくれもございません。まさにやっつけ仕事。

CGは相変わらず綺麗だし、音楽を含めた演出は、チープで無い程度には整っている。けれど以上見てきたように、言い始めるとキリがないくらい背景が雑。スタッフには申し訳ないが、これでは前作ほどの好評は、望むべくもないだろう。

昨今は他ブランドの低価格ソフトの充実ぶりもめざましいものがあるし、一世を風靡した作品を出した底力で、是非次回作は巻き返して頂きたいところである。

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