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定価: ¥8,800 (税込¥9,504)
発売日: 2014/09/26
ジャンル: 涙あり笑いありのホームコメディADV
原画: すめらぎ琥珀
シナリオ: かずきふみ
OHP: なないろリンカネーション STORY 

▼批評空間投稿レビュー(80点): 「なないろリンカネーション」の感想

 《ブログ用評価 S~D》 (S=非常に良い A=良い B=普通 C=やや難あり D=む~り~)
絵: A (すめらぎ琥珀氏の絵が作風にあっている。表情もよく動くし、服装や髪型にバリエーションがもう少しあれば最高だった)
話: A (しっかりしたテーマ、描きたいモチーフがあって作られた骨太の話。ヒロインごとのバランスの悪さと、コンパクト過ぎる内容が玉に瑕)
演: A (派手なギミックは多くないが、丁寧で、こだわるべきところでしっかりこだわっている。CVも、終わってみればこの人選しかなかったと思わせる)
H: A (下品にならないギリギリのラインでエロさを確保しているのが素晴らしい)
他: B (ムーサン・ベリー氏の歌う主題歌が素晴らしい。他は取り立てた特徴もないが、不具合がなかったのは地味に嬉しい)
総合: A (期待通り満足はしたが、期待を突抜ける部分はなかった。また、完成度の高さゆえに、「もっとできたのでは?」と思ってしまう部分もある)



ストーリー(げっちゅ屋さんより)
大学三年生の夏。加賀見真は亡くなった祖父から譲り受けた家に移り住み、かねてからの念願だった一人 暮らしを始める――はずだった。
 
祖父の家にやってきた真を出迎えたのは、座敷わらしの少女と自らを鬼と称する女性。彼女らは鏡に映らず、自分以外の人間の目に映らない不可思議な存在だった。真は知る。 自身が “霊視” という特別な力を持つことと、祖父から受け継いだのは土地と家だけではなかったことを。
 
鬼を従え、町に彷徨う霊魂を現世から解き放ち、常世へと送ること。それが代々受け継がれ、祖父から託された加賀見家の “お役目” であった。あまりに突然すぎて理解が追いつかない真であったが、実際にお役目を果たしていくことで、少しずつ加賀見家当主としての自覚が芽生えていく。

そしてこの小さな町の平和を揺るがす、とある事件に巻き込まれていくのであった。

私の読み取ったテーマ的な部分については批評空間さんのほうに書いたので、こちらでは総括的な話をちらりと。

まず、時間について。すげー短いです。11時間って書いたけど、割とゆっくり目にやってそれなんで、ボイス中断上等で本気でやれば7~8時間で終わりそう。しかも共通ルートがかなり長く、個別分岐後も半分くらい内容がかさなっているので、周回を重ねるほどマンネリ感が高まってくる。そういう意味で言えば、このくらいの長さにして攻略ヒロイン4人というのは、ちょうど良いバランスだったのかもしれません。少し物足りない気もしますが。あるいは、いっそ割り切って1ルート限定にしちゃうとか。……まあそれは批判殺到を免れないから難しいか。

4人の攻略ヒロインは、琴莉、梓、由美、伊予。ただし、琴莉がセンターヒロインでほかは枝分かれ分岐、という感じです。攻略順としては琴莉を最初にやるか最後にやるかだけが問題になるタイプですが、個人的には最初が良いんじゃないかと。モップ先生のオススメも、初手琴莉でしたし。あと、版権イラストにいない梓と由美が可哀想過ぎる気がします。もうちょっとこう、扱いなんとかならんかったのか……。

内容に関して言えば、とにかく、印象に残るシーンがたくさん。

ギャグは鉄板のものから意表をつくものまでさまざまですが、個人的に気に入ったのは、梓が最初に真の家を訪れたとき、伊予にいたずらされる場面。声、表情ともに最高です。あと、伊予がエロゲーしてるシーン。これは伊予ルートなので詳しくは省きますが、「エロゲーかよ!」と思わずツッコミを入れてもた。

シリアス系では琴莉のED。これはぶっちぎりです。琴莉EDは2種類ありますが、リンカネーションEDのほうが好みかな。「琴莉が最初で最後」と主人公が言ったとき、2人の恋愛は確かに成就したのだと思います。もちろん、だからといってもう1つのEDが不要とは言っていません。そちらがあるからこそ「映える」ので片方だけだとパワー半減。両方揃ってナンボでしょう。

他に挙げるとすると、ネタバレぶっちぎりになるので言えませんが、とあるホラーシーン。これは作中の展開である程度覚悟していたのでショックはなかったですが、後々語りぐさになるくらいのインパクト。たぶん数年経っても、「ななリンといえばアレよね」とすぐ思い出せるハズ。

その他のシーンでは、やはり食卓。「家族」の象徴として何度も登場するこのシーンが、本作日常のハイライトですね。

Hシーンは、かなりエロいと思います。ただ、全体の雰囲気も手伝ってガンガン抜けるところまではいかなかったかなぁ。伊予サマがいっちゃん抜けました。ロリコンじゃないのに……。あと、梓さんの青姦。立ちバック最高。

そう、梓さんですよ、梓さん。方向音痴の三浦さんじゃなくてね。この人マジ可愛いです。チョロそうに見せかけて実はちゃんと芯のあるところも見せてくれたり、ゲームを進めるたびに新しい一面が見えてくるんですよね。全ヒロインの中で一番好きです。愛おしい。付き合うなら絶対梓さん!! 

シナリオについては、正直殆どの人が「予想通り」と思うんじゃないでしょうか。ぶっちゃけ「仕掛け」と思われる部分をあまり隠せていないので。ただ、これはかずきふみ氏が失敗したとかじゃなくて、最初からそうやって「予想」させる手法だと思います。みんな、「これも伏線だな、これも伏線だな」と思いながら読むうちに、どんどん話が進んでいくというやつ。ユーザーの「予想」を推進力にするタイプですね。

言い方を変えると、こちらが付かず離れず予想を続けられるように、巧妙に・丁寧に作品が作られています。「おかしい」と感じる部分がほとんどなかった。ただ、どこまでも「予想通り」で終わってしまったのは少し残念。最後にどこか、こちらの予想を突破するような部分があれば、純粋にエンターテインメント的な盛り上がりがあったようにも思われます。

音楽も邪魔にならず聞き飽きない良質なものが揃っています。特に主題歌のムーサン・ベリーさんは、これ何度も言ってますけどホント素晴らしい歌声。感動しました。曲も雰囲気にあっていて良いですね。私は初回予約特典CDゲットできたから良いんですけど、そうでない人の中にはミュージックモードにリピート機能が欲しいと思ってる人も多いのではないでしょうか。

細かい工夫、たとえばタイトル画面がキャラを攻略するたびに変化したら「リンカネーション」っぽさが出るんじゃないかとか(そもそも攻略ヒロイン2人がいないタイトル画面ってどうなのとか)、シーンの頭出しできたらいいなぁとか細かい部分で色々言いたいことはあるんですが、全体としてはこれが処女作とは思えないほどしっかりした作品。まあこの件についてはツッコミはなしで。そういえば、EDクレジットで「あしずり岬」氏をはじめ、某所でお馴染みのお名前がちらほら出てきてるんですけど、elfさんと協力体制が敷かれてるんですかね。こんなぶっちゃけ気味の話(「独立に関するお問い合わせについて」)がOHPに載り、しかも「エルフさんみたいな作品を作ることもある」と言っちゃう辺り、少なくとも関係が悪い・アンタッチャブル、みたいなことは無いと思いますが。

こういう、ユーザーの好みにあわせるのではなく作品自体の自己主張が激しいタイプはきょうびあまり流行らないという話もありますが、個人的には今後も骨太路線で頑張ってほしいなぁと思う次第。次回作も楽しみにしています。楽しい時間をありがとうございました!