なんかこのブログで、革小物とか革財布の話することが増えてきましたね……。他に話のネタが無いわけではないんですが、書きやすさと自分の興味関心のせいで、いろいろ書いてしまう。
過去の記事をリストアップすると、これくらいでしょうか。
▼長財布か折財布か(2014年5月26日)
▼謎の宣伝ブログ(2014年6月7日)
▼ブランドとオシャレと(2014年6月10日)
昨日タイムラインで、財布買おうかなーみたいな話も挙がっていたので、話題に便乗して革財布選びの話とかしてみようと思います。これはあくまで、私が選ぶ際に重要視していることなので、参考になればということで。
凄い長くなりそうだし、できるだけ裏付けとかはとって、有益な情報をまとめたつもりではおりますが、基本的には素人の勝手な解釈と聞きかじりの知識で成り立っておりますので、読む気ねーよっていう人はかっとばしてください。
(1)大事な選定要素は何か
自分が使うにしても、他人にプレゼントするにしても、基本となるのはコレです。
たとえば、「予算」。10000円以内に絶対抑える、という制限があるなら考慮せねばなりません。
「ブランド」や「流行」ということもありえます。プレゼントの場合「ネームバリューのある品を贈る」こと自体に意味が認められることも少なくありませんし、自分で使うにしても人間関係の中で「見栄」(悪い意味ではなく)が求められることも出てくるでしょう。ブランドというのはそういう、「社交」のために存在するといっても過言ではありません。
他にはどんな要素があるでしょうか。多そうなのは「機能」(レシートや小銭がまとめて入る、等)や「形態」(ポケットに入る大きさ、お札が折れ曲がらない長財布、等)あたりではないかと思います。私のように「耐久性」(丈夫さや、5年10年使えること)を相当気にする人もいるし、皮革ファンの中には「革の種類」や「革質」が大事だという人もいますし、中国産はゴメンだ、みたいに「製造国」をチェックする人も多そう。
自分がどの要素をどのくらい気にしているか、というのをリストアップして優先順位をつけると、かなり選ぶときに楽になります。
ちなみに上の要素でいえば、私は次のようになります。
耐久性 > 革質 ≧ 機能 > 形態 > 製造国 > 予算 > ブランド(流行) > 革の種類
基本、「財布は一生モノ」くらいに考えているので(TPOに応じて使い分けますが)、丈夫で長持ちするものを選びます。ただし、この丈夫というのは、どんな乱暴に扱っても平気! みたいな意味ではありません。慎重に使えば、一緒にいられる年数が長いということです。
というわけで、経年で確実にダメになる合皮・ウレタン系素材はNG。本革でいきます。本革の中でも、ホームセンターにおいてあるようなペラペラですぐ破れる革はできれば回避。染色も、顔料染めより染料染めのものを選びます。まあ顔料に関しては染め直しができるし傷に強いから、良いといえば良いんですが……。その辺はどうせなら経年変化を楽しみたい、というこだわりで。
「革財布」という縛りがなければ、布とかナイロンも、あるいは選択肢に入れるかもしれませんが、どうもナイロン・布系の財布がいまいち好きになれず……。多少扱いづらくても、やっぱり革を選ぶかなぁ。
予算は、5万オーバーになると尻込みします。できれば3万前後……。
割りと気にしないのは、ブランドとか革の種類。正直、ゴートだろうがコードバンだろうがブライドルだろうが、どの革もそれぞれに良さがあるわけで、買った革にあわせて扱いを楽しめば良いかなと。ブランドはホント気にしないです。パスケースとか買ってみてファンになったブランドが無いわけではないんですが、絶対そこということもないし。
下は、バッグ選びに関するFAQですが、財布にも通じる良い話だと思います。
▼「バッグマメ知識」八木長ネットショップ
要するに私としては、素材のよさを活かして引き出した財布が好きであって、周囲の評価はあんまり気にしない(し、そもそも分かんない)。いや、素材のよさというのも本当はわからないんですが、そこは話を聞いたり自分で調べたりしながら勉強ですね。そこにこだわりたいから、その部分の情報を得るわけです。流行に敏感な人は、ファッション雑誌なんかをマメにチェックするじゃないですか。それと同じことだと思っています。
(2)どうやって調べるか
さて、品質重視でいくことになりました。問題はリサーチの方法ですが……。基本は、デパート行く、店員さんに訊ねる、ネットで調べる、本を読む、あたりになるだろうと思います。
以前、ある人に「財布買うなら、買う前にまず新宿伊勢丹のメンズ館行け」みたいなことを言われまして(なんかネット検索したら、そんなこと書いてるブログがありました。元ネタがあるんでしょうか)、実際行ってみると「なるほどなぁ」と感心したんですね(メンズ館の1Fに財布コーナーがあります)。
というのも、とにかく大量の財布があって、革の質がいいのからデザイン凝ってるの、容量アホみたいに入るのから極薄なのまで、色んなのが見られる。「さまざまなる意匠」です(違)。お値段はそれなりに張る(安くても1~2万はする)んですけど、実物を見ることで自分の中で基準を作るにはうってつけです。
かつ、そこで見識のある売り子さんにいろいろ話を聞ける。これは大きいです。もちろんセールストーク入ってるんですが、デパートの店員さんは知識もしっかりしているし、実際に自分で使っていたり、お客さんからのクレームや感想を直接聞くことが少なくないので、非常に参考になります。 ブランドのアンテナショップだと、そのブランドの品をゴリ押ししてくることも少なくありませんが、大きなデパートの財布売り場の店員さんは(私の経験上)さまざまなブランドのものをそれなりにフェアに比較してくれます。
ネットは、情報の質が玉石混交で信憑性に最後まで疑問が残るのが玉に瑕ですが、手軽に多くの情報が手には入りますし、ある程度取捨選択もできます。本よりも良いんじゃないかと個人的には思います。皮革関係の本は、一般書だとホントに大したこと書いてないし、ブランド品の回し者になっているものも少なくありませんでした。職人さん用の専門書とか買えば別なのかもしれませんけど、ンなもん下手すれば財布本体より高かったりしますし。
あと、裏技的に、職人さんに直接訊ねる、という手があります。 私はたまたま知り合いが革関係の仕事についているので彼に聞いてみたり、別の製品でファンになった職人さんにメール送って気になることを聞いたり、ということをしています。靴・鞄・修理屋さんで合計3人ほどですが、いろいろ面白い話を聞けたりします。さすがにここでアドレス晒したりはできませんけど、思い切ってお店とかに連絡をとってみると、回答してくださる人はおられます。ダメな人はダメって言ってくれますしね。もちろん忙しい時期にはあんまり細々したことで頻繁にメールしないとか、色々配慮すべきこともありますけど、その辺もうかがいながら。
(3)実際選んでみる Part1
んで、私が選ぶとどうなるかというと……。
まず、ファッション系の有名ブランドは外します。ポール・スミスとか、コムサ系、カルバンクライン、あと有名どころだとタケオキクチ? デパートでよく見るファッションブランドの製品は、質が悪いとは言いませんが、同じ値段を出せばもっと良いものが買えるのに……と思ってしまう。ただ、デザインはやっぱりオリジナリティあっておもしろいですね。タケオキクチのカードケースとかすごい使いやすそうで、今使ってるのに愛着なければ買ってしまいそうでした。
ただ、純粋に品質を追求する場合、よほど高いのでないと満足なのは無いなぁ、というのが実際に見てみた印象。だいたい中国製で縫製がイマイチ(素人目にも分かるくらいハッキリ雑です。糸が浮いていたり歪んでたり)だし、使われている革もペラペラ。外装だけで内装には全然革使われておらず、手触りもイマイチ……という感じ。これはブランドのお店でそのブランドの品だけ見てても分かりにくいと思うんですけど、他の財布置いてあるところで見比べると一発だと思います。もちろん、売り場やモノによっては日本製のもありますけど、そうなるとお高い。
んじゃ、良いのはどんなのかというと、やっぱり皮革系の専門ブランドですね。たとえばGANZO、ホワイトハウス・コックス、エッティンガー、マニウノ、キプリス……とかその辺です。まあこれは、ホントに一目瞭然。百聞は一見にしかずです。
いや、あんまり経験主義的なことはいいたくないんですが……ちょっと出かけて見てみれば実感できることですし、経験をもとに煙に巻こうというわけではありません。マジで手触り違うし、革の張りとかも違うし、香りも違います。香りは種類のせいってのもあるんでしょうけど、そのくらいハッキリわかるということでひとつ。
傍証というわけではありませんが、池袋にある某デパートの店員さんに、「お勧めの革小物はどれ」ってきいたら、迷わずGANZOのとこ連れて行かれて、「コムサとかポールは?」って聞いたら、凄い微妙な返事返ってきました。
この辺はある程度しょうがなくて、ファッションブランド品はブランド料が高い。宣伝費が半端ないし、アンテナショップも出してるから場所代・人件費もかかっている。そういうのが商品に乗っかってきているので、普通よりかなり値段が高くなるんですよね。もちろんアフターケアの充実や、最低限の品質保証もあるわけですが、問屋・仲買・小売と「中抜き」が発生することもあり、ついている値段の中で実際の品質にかけられるコストは1割から、多くても3割程度だと聞きました。2万円の財布であれば、実際には5000円程度、下手すれば2000円クラスかもしれないということですね。きっつい話ですわ。
皮革専門ブランドにしても、デパート等に卸売をしている時点で「中抜き」ラッシュが発生しているので、割りと高めのお値段になっていることは確かです。ただ、卸売りなしの直売メーカーってそんなに多くないですし、ファッションブランドに比べれば、まだ適正価格に近いということで。また、そういう有名皮革ブランドでないと手に入らない素材みたいなのはあって、そういうのが好きな人は選択肢が他にない可能性もあります。
(4)実際選んでみる Part2
さて、ファッションブランドを外して見ていくと、いろんなパターンがあります。細かいパターンは幾つもありますが、大別すると次の3つ。
1.ヨーロッパで革作っててヨーロッパで縫製して、製品が輸入されてきてる、完全インポートパターン。
2.ヨーロッパから革仕入れて、日本で縫製してる、ハンドメイド・イン・ジャパンのパターン。
3.日本で革作って、中国・東南アジアで縫製してるパターン。
この中でお薦めなのは「2」だそうです。これは職人さんの技術やコンセプトの好みもあるから一概には言えませんけど、あくまで基本的に、ですが。
まず、日本の縫製技術は基本的にどこも高い。細かい作業が得意なのと品質管理がしっかりしているので、ミシン使った大量生産品でもかなりきちんとしたのができるそうです。細かい設計もしっかりしていて、トータルで見ると安定している。
「1」は、革の質は良いんだけど職人さんのウデが一定しないんだとか。イタリアとかの職人さんはとくにパッション系の人が多く、「注文した仕様と全然違う商品になってる」ことも少なくないとか。複数のデパートの店員さんが同じことを言っていたので、もしかすると「都市伝説」の類かもしれませんけど、確かに財布の締りが甘かったり、マチがうまくたためなかったりというのは目にします。ただ、時折とんでもなく素晴らしいクオリティのものができたりもするそうで、要は当たり外れが大きい、ということかもしれません。実物をじっくり選ぶことができ、かつ判断する目があるなら(私には無理なので外しています……)、ベストな選択肢になってくるのかもしれません。
「3」は、正直微妙なことが多いみたいです。まず、革の質が違う。日本が必ずしも悪いというわけではないのですが、ヨーロッパの革づくりのほうが技術的には「進んで」いる、とみなされることが多い。日本でも、「栃木レザー」みたいなブランドもあれば、宮内産業のように海外輸出しているタナリーもあります。日本人向けの工夫(色が変化しにくい、鮮やかな色が長持ちする)を凝らした染色技術なども進んでいますが、そもそもやれること・やっていることが違うんですね。その辺の話は、下のサイトに詳しいのでよろしければご覧ください。明快で、興味深い内容です。日本製の革のほうが好み、ということなら、「3」は非常に有力な選択肢になるでしょう。
▼「日本とイタリアの革の違い」(革童巻き)
あと、「3」は「1」や「2」に比べて安いことが多いのがメリットで、たとえば日本国内の宮内産業の革を使い、中国で製造をしている「Flying Horse」の財布は10000円くらいです。リーゾナブル。
しかし、日本の革を使って海外で製造し、その後日本に持ち込むということは、日本→中国への輸送、そして中国→日本への返送、という余計な輸送費がかかっているということでもあります。にもかかわらず値段が抑えられているということは、人件費が非常に安い。基本は非専門職の現地労働者が、工場で大量生産するパターンです。細かいクオリティは期待できないし、「監視・監督」がうまくいっていないと品質もいまいちになるのだと聞きました。
ただ、全部が全部ダメということもなく、マレーシア・フィリピン・中国などに縫製工場が展開されていますが、お国柄や工場監督者の気質によっても全然変わってくるので、どこ製だからいいの悪いのというよりは、作り方そのものが違うと考えたほうが妥当なのかもしれません。最近は、中国国内で革も生産していて、フルメイドinチャイナというのもありますし、それで価格がかなり抑えられるなら全然問題なし、というのもアリですよね。
(5)実際選んでみる Part3
結局私は、あんまり個別の製品の良し悪しを見極める自信がないので、安定度で日本製のを選んでいます。
日本製つっても凄い数ありますけど、メジャーなのはこの辺でしょうか。
▼「【伝統技術】日本の革製品ブランドまとめ」(NAVERまとめ)
ここには載ってないけどブレイリオ、ブリットハウス(は入れていいのかな?)、土屋鞄、吉田鞄、革工房ABALLIなんかも財布あります。カジュアル系ならAgilityとか。Agilityのはデザイン凝ってて凄いお手軽価格ですね。ちょっと癖がありますけど。
あと、忘れてはいけないのが、インターネット世界ではやたら(過剰なほどのコマーシャルで)有名なココマイスター。というか「長財布」で検索かけたらココマイスターばっかりヒットするのはぎょっとします。アフィリエイト率が高いんでしょうか。
ココマイスターはブランディングのものすごい勢いと、それに伴う「悪目立ち」非常に気になっていたんで、銀座一丁目の店舗に行ってナポレオンカーフの小銭いれ買ってみました。
結論としてはなんというか、「悪くはない」という印象です。感動するほどものすごい品質にも思えないけど、同価格帯で比較すればデパートとかで売ってる皮革系ブランド品よりコストパフォーマンスが良い。デザインもシンプル路線でしっかりしたものだな、という。ただし、「質実剛健」みたいなブランドイメージに、この過剰なコマーシャル攻勢はあんまり合致してない気はします。
ネットでは、「ステマうざい」と「検品ちゃんとしてない」というのが二大批判みたいになっていますが、前者はどのメーカー・ブランドも広告に金使ってるんだから目くじら立てることでもないし、後者はどのメーカーでもありえることでしょう。交換してくれないとかいうならサポート体制の問題として文句言えるけど、そういうわけでもないみたいですし(ちなみに、私の買った奴は全然大丈夫でした)。
ただ、あるていど頻繁に製品に問題が起きているのだとすれば、一部製品に関しては「手づくり」ではなく工場生産しているのかもしれません。手縫いじゃなくてミシン縫いなのは構わないんですが、ライン生産してるんだとしたらちょっと問題ありかなぁ? まあ私には現物見てもサッパリ分かりませんけど(駄)。
さっきのリストにあったブランドだと、万双、ココマイスターあたりは卸売をしていないので、流通や中抜きのコストが発生せず、良い品がかなりお安く買えます。ABALLIさんも委託はあっても卸売はしてないような……。ともあれ知名度では劣るけれど質のいいものを狙うなら、その辺をリサーチすると良いかもしれません。
(6)まとめ?
というわけで、日本の革製品ブランドが作っている品をメインに見て、価格と機能が納得いったものを買いました。私は万双とブレイリオ、あとAgilityのを使ってるんですけど、最近エムピウの3つ折財布がいいなぁと思って見ています。立川のデパートに、「店員の私物です」といって使い込まれた品が展示してあったんですけど、凄いいい感じにエイジングしてて、色も綺麗になってたんですよね。さすがにこれ以上財布買っても使えないので買わないけど、プレゼントとかには良さそう。秋葉原のアトレとか、神田の三省堂でも売ってます。
エムピウの3つ折財布【millefoglie】。コンパクトでスタイリッシュ。深い色ならビジネスでも使える。
というわけで、何か参考になる話を書こうとしたんですがどんなもんでしょうね。この記事を読んだからって買う財布が決まるとは思わないけど、判断の材料の1つくらいにはなれば、ということで。誤ったことを書いているかもしれないので、その時はご指摘ください。垂れ流した推測による名誉毀損の可能性については、主に個人の印象ということでご寛恕ください。
過去の記事をリストアップすると、これくらいでしょうか。
▼長財布か折財布か(2014年5月26日)
▼謎の宣伝ブログ(2014年6月7日)
▼ブランドとオシャレと(2014年6月10日)
昨日タイムラインで、財布買おうかなーみたいな話も挙がっていたので、話題に便乗して革財布選びの話とかしてみようと思います。これはあくまで、私が選ぶ際に重要視していることなので、参考になればということで。
凄い長くなりそうだし、できるだけ裏付けとかはとって、有益な情報をまとめたつもりではおりますが、基本的には素人の勝手な解釈と聞きかじりの知識で成り立っておりますので、読む気ねーよっていう人はかっとばしてください。
(1)大事な選定要素は何か
自分が使うにしても、他人にプレゼントするにしても、基本となるのはコレです。
たとえば、「予算」。10000円以内に絶対抑える、という制限があるなら考慮せねばなりません。
「ブランド」や「流行」ということもありえます。プレゼントの場合「ネームバリューのある品を贈る」こと自体に意味が認められることも少なくありませんし、自分で使うにしても人間関係の中で「見栄」(悪い意味ではなく)が求められることも出てくるでしょう。ブランドというのはそういう、「社交」のために存在するといっても過言ではありません。
他にはどんな要素があるでしょうか。多そうなのは「機能」(レシートや小銭がまとめて入る、等)や「形態」(ポケットに入る大きさ、お札が折れ曲がらない長財布、等)あたりではないかと思います。私のように「耐久性」(丈夫さや、5年10年使えること)を相当気にする人もいるし、皮革ファンの中には「革の種類」や「革質」が大事だという人もいますし、中国産はゴメンだ、みたいに「製造国」をチェックする人も多そう。
自分がどの要素をどのくらい気にしているか、というのをリストアップして優先順位をつけると、かなり選ぶときに楽になります。
ちなみに上の要素でいえば、私は次のようになります。
耐久性 > 革質 ≧ 機能 > 形態 > 製造国 > 予算 > ブランド(流行) > 革の種類
基本、「財布は一生モノ」くらいに考えているので(TPOに応じて使い分けますが)、丈夫で長持ちするものを選びます。ただし、この丈夫というのは、どんな乱暴に扱っても平気! みたいな意味ではありません。慎重に使えば、一緒にいられる年数が長いということです。
というわけで、経年で確実にダメになる合皮・ウレタン系素材はNG。本革でいきます。本革の中でも、ホームセンターにおいてあるようなペラペラですぐ破れる革はできれば回避。染色も、顔料染めより染料染めのものを選びます。まあ顔料に関しては染め直しができるし傷に強いから、良いといえば良いんですが……。その辺はどうせなら経年変化を楽しみたい、というこだわりで。
「革財布」という縛りがなければ、布とかナイロンも、あるいは選択肢に入れるかもしれませんが、どうもナイロン・布系の財布がいまいち好きになれず……。多少扱いづらくても、やっぱり革を選ぶかなぁ。
予算は、5万オーバーになると尻込みします。できれば3万前後……。
割りと気にしないのは、ブランドとか革の種類。正直、ゴートだろうがコードバンだろうがブライドルだろうが、どの革もそれぞれに良さがあるわけで、買った革にあわせて扱いを楽しめば良いかなと。ブランドはホント気にしないです。パスケースとか買ってみてファンになったブランドが無いわけではないんですが、絶対そこということもないし。
下は、バッグ選びに関するFAQですが、財布にも通じる良い話だと思います。
▼「バッグマメ知識」八木長ネットショップ
Q.どうしてバッグの値段ってピンキリなの?
A.ブランド品は確かに高すぎますよね。同じ材料で同じように作るだけなら、 半額ぐらいで出来そうです。 でも、広告費やデザインなど多くの人件費や販売経費がかかることもあり、 ステイタスにお金はかかるのでしょうね。 バッグの要は素材です。 有名ブランドやどこの国で作られたかを気にするよりは、良い材料かどうかで割安かそうでないかを判断したいところです。 しっとりとした手触りや、上品なオイルの匂いがする革は有名ブランドでなくとも手に入ります。
要するに私としては、素材のよさを活かして引き出した財布が好きであって、周囲の評価はあんまり気にしない(し、そもそも分かんない)。いや、素材のよさというのも本当はわからないんですが、そこは話を聞いたり自分で調べたりしながら勉強ですね。そこにこだわりたいから、その部分の情報を得るわけです。流行に敏感な人は、ファッション雑誌なんかをマメにチェックするじゃないですか。それと同じことだと思っています。
(2)どうやって調べるか
さて、品質重視でいくことになりました。問題はリサーチの方法ですが……。基本は、デパート行く、店員さんに訊ねる、ネットで調べる、本を読む、あたりになるだろうと思います。
以前、ある人に「財布買うなら、買う前にまず新宿伊勢丹のメンズ館行け」みたいなことを言われまして(なんかネット検索したら、そんなこと書いてるブログがありました。元ネタがあるんでしょうか)、実際行ってみると「なるほどなぁ」と感心したんですね(メンズ館の1Fに財布コーナーがあります)。
というのも、とにかく大量の財布があって、革の質がいいのからデザイン凝ってるの、容量アホみたいに入るのから極薄なのまで、色んなのが見られる。「さまざまなる意匠」です(違)。お値段はそれなりに張る(安くても1~2万はする)んですけど、実物を見ることで自分の中で基準を作るにはうってつけです。
かつ、そこで見識のある売り子さんにいろいろ話を聞ける。これは大きいです。もちろんセールストーク入ってるんですが、デパートの店員さんは知識もしっかりしているし、実際に自分で使っていたり、お客さんからのクレームや感想を直接聞くことが少なくないので、非常に参考になります。 ブランドのアンテナショップだと、そのブランドの品をゴリ押ししてくることも少なくありませんが、大きなデパートの財布売り場の店員さんは(私の経験上)さまざまなブランドのものをそれなりにフェアに比較してくれます。
ネットは、情報の質が玉石混交で信憑性に最後まで疑問が残るのが玉に瑕ですが、手軽に多くの情報が手には入りますし、ある程度取捨選択もできます。本よりも良いんじゃないかと個人的には思います。皮革関係の本は、一般書だとホントに大したこと書いてないし、ブランド品の回し者になっているものも少なくありませんでした。職人さん用の専門書とか買えば別なのかもしれませんけど、ンなもん下手すれば財布本体より高かったりしますし。
あと、裏技的に、職人さんに直接訊ねる、という手があります。 私はたまたま知り合いが革関係の仕事についているので彼に聞いてみたり、別の製品でファンになった職人さんにメール送って気になることを聞いたり、ということをしています。靴・鞄・修理屋さんで合計3人ほどですが、いろいろ面白い話を聞けたりします。さすがにここでアドレス晒したりはできませんけど、思い切ってお店とかに連絡をとってみると、回答してくださる人はおられます。ダメな人はダメって言ってくれますしね。もちろん忙しい時期にはあんまり細々したことで頻繁にメールしないとか、色々配慮すべきこともありますけど、その辺もうかがいながら。
(3)実際選んでみる Part1
んで、私が選ぶとどうなるかというと……。
まず、ファッション系の有名ブランドは外します。ポール・スミスとか、コムサ系、カルバンクライン、あと有名どころだとタケオキクチ? デパートでよく見るファッションブランドの製品は、質が悪いとは言いませんが、同じ値段を出せばもっと良いものが買えるのに……と思ってしまう。ただ、デザインはやっぱりオリジナリティあっておもしろいですね。タケオキクチのカードケースとかすごい使いやすそうで、今使ってるのに愛着なければ買ってしまいそうでした。
ただ、純粋に品質を追求する場合、よほど高いのでないと満足なのは無いなぁ、というのが実際に見てみた印象。だいたい中国製で縫製がイマイチ(素人目にも分かるくらいハッキリ雑です。糸が浮いていたり歪んでたり)だし、使われている革もペラペラ。外装だけで内装には全然革使われておらず、手触りもイマイチ……という感じ。これはブランドのお店でそのブランドの品だけ見てても分かりにくいと思うんですけど、他の財布置いてあるところで見比べると一発だと思います。もちろん、売り場やモノによっては日本製のもありますけど、そうなるとお高い。
んじゃ、良いのはどんなのかというと、やっぱり皮革系の専門ブランドですね。たとえばGANZO、ホワイトハウス・コックス、エッティンガー、マニウノ、キプリス……とかその辺です。まあこれは、ホントに一目瞭然。百聞は一見にしかずです。
いや、あんまり経験主義的なことはいいたくないんですが……ちょっと出かけて見てみれば実感できることですし、経験をもとに煙に巻こうというわけではありません。マジで手触り違うし、革の張りとかも違うし、香りも違います。香りは種類のせいってのもあるんでしょうけど、そのくらいハッキリわかるということでひとつ。
傍証というわけではありませんが、池袋にある某デパートの店員さんに、「お勧めの革小物はどれ」ってきいたら、迷わずGANZOのとこ連れて行かれて、「コムサとかポールは?」って聞いたら、凄い微妙な返事返ってきました。
この辺はある程度しょうがなくて、ファッションブランド品はブランド料が高い。宣伝費が半端ないし、アンテナショップも出してるから場所代・人件費もかかっている。そういうのが商品に乗っかってきているので、普通よりかなり値段が高くなるんですよね。もちろんアフターケアの充実や、最低限の品質保証もあるわけですが、問屋・仲買・小売と「中抜き」が発生することもあり、ついている値段の中で実際の品質にかけられるコストは1割から、多くても3割程度だと聞きました。2万円の財布であれば、実際には5000円程度、下手すれば2000円クラスかもしれないということですね。きっつい話ですわ。
皮革専門ブランドにしても、デパート等に卸売をしている時点で「中抜き」ラッシュが発生しているので、割りと高めのお値段になっていることは確かです。ただ、卸売りなしの直売メーカーってそんなに多くないですし、ファッションブランドに比べれば、まだ適正価格に近いということで。また、そういう有名皮革ブランドでないと手に入らない素材みたいなのはあって、そういうのが好きな人は選択肢が他にない可能性もあります。
(4)実際選んでみる Part2
さて、ファッションブランドを外して見ていくと、いろんなパターンがあります。細かいパターンは幾つもありますが、大別すると次の3つ。
1.ヨーロッパで革作っててヨーロッパで縫製して、製品が輸入されてきてる、完全インポートパターン。
2.ヨーロッパから革仕入れて、日本で縫製してる、ハンドメイド・イン・ジャパンのパターン。
3.日本で革作って、中国・東南アジアで縫製してるパターン。
この中でお薦めなのは「2」だそうです。これは職人さんの技術やコンセプトの好みもあるから一概には言えませんけど、あくまで基本的に、ですが。
まず、日本の縫製技術は基本的にどこも高い。細かい作業が得意なのと品質管理がしっかりしているので、ミシン使った大量生産品でもかなりきちんとしたのができるそうです。細かい設計もしっかりしていて、トータルで見ると安定している。
「1」は、革の質は良いんだけど職人さんのウデが一定しないんだとか。イタリアとかの職人さんはとくにパッション系の人が多く、「注文した仕様と全然違う商品になってる」ことも少なくないとか。複数のデパートの店員さんが同じことを言っていたので、もしかすると「都市伝説」の類かもしれませんけど、確かに財布の締りが甘かったり、マチがうまくたためなかったりというのは目にします。ただ、時折とんでもなく素晴らしいクオリティのものができたりもするそうで、要は当たり外れが大きい、ということかもしれません。実物をじっくり選ぶことができ、かつ判断する目があるなら(私には無理なので外しています……)、ベストな選択肢になってくるのかもしれません。
「3」は、正直微妙なことが多いみたいです。まず、革の質が違う。日本が必ずしも悪いというわけではないのですが、ヨーロッパの革づくりのほうが技術的には「進んで」いる、とみなされることが多い。日本でも、「栃木レザー」みたいなブランドもあれば、宮内産業のように海外輸出しているタナリーもあります。日本人向けの工夫(色が変化しにくい、鮮やかな色が長持ちする)を凝らした染色技術なども進んでいますが、そもそもやれること・やっていることが違うんですね。その辺の話は、下のサイトに詳しいのでよろしければご覧ください。明快で、興味深い内容です。日本製の革のほうが好み、ということなら、「3」は非常に有力な選択肢になるでしょう。
▼「日本とイタリアの革の違い」(革童巻き)
よく「水が違うから」「作る人間の目の色が違うから発色が違う」など、比較されるのがイタリアの革です。 革の商社は色々と薀蓄をつけて販売をしようとしますが、製造者の立場から日本とイタリアに代表されるような世界の革の違いを何点かご紹介したいと思います。
あと、「3」は「1」や「2」に比べて安いことが多いのがメリットで、たとえば日本国内の宮内産業の革を使い、中国で製造をしている「Flying Horse」の財布は10000円くらいです。リーゾナブル。
しかし、日本の革を使って海外で製造し、その後日本に持ち込むということは、日本→中国への輸送、そして中国→日本への返送、という余計な輸送費がかかっているということでもあります。にもかかわらず値段が抑えられているということは、人件費が非常に安い。基本は非専門職の現地労働者が、工場で大量生産するパターンです。細かいクオリティは期待できないし、「監視・監督」がうまくいっていないと品質もいまいちになるのだと聞きました。
ただ、全部が全部ダメということもなく、マレーシア・フィリピン・中国などに縫製工場が展開されていますが、お国柄や工場監督者の気質によっても全然変わってくるので、どこ製だからいいの悪いのというよりは、作り方そのものが違うと考えたほうが妥当なのかもしれません。最近は、中国国内で革も生産していて、フルメイドinチャイナというのもありますし、それで価格がかなり抑えられるなら全然問題なし、というのもアリですよね。
(5)実際選んでみる Part3
結局私は、あんまり個別の製品の良し悪しを見極める自信がないので、安定度で日本製のを選んでいます。
日本製つっても凄い数ありますけど、メジャーなのはこの辺でしょうか。
▼「【伝統技術】日本の革製品ブランドまとめ」(NAVERまとめ)
ここには載ってないけどブレイリオ、ブリットハウス(は入れていいのかな?)、土屋鞄、吉田鞄、革工房ABALLIなんかも財布あります。カジュアル系ならAgilityとか。Agilityのはデザイン凝ってて凄いお手軽価格ですね。ちょっと癖がありますけど。
あと、忘れてはいけないのが、インターネット世界ではやたら(過剰なほどのコマーシャルで)有名なココマイスター。というか「長財布」で検索かけたらココマイスターばっかりヒットするのはぎょっとします。アフィリエイト率が高いんでしょうか。
ココマイスターはブランディングのものすごい勢いと、それに伴う「悪目立ち」非常に気になっていたんで、銀座一丁目の店舗に行ってナポレオンカーフの小銭いれ買ってみました。
結論としてはなんというか、「悪くはない」という印象です。感動するほどものすごい品質にも思えないけど、同価格帯で比較すればデパートとかで売ってる皮革系ブランド品よりコストパフォーマンスが良い。デザインもシンプル路線でしっかりしたものだな、という。ただし、「質実剛健」みたいなブランドイメージに、この過剰なコマーシャル攻勢はあんまり合致してない気はします。
ネットでは、「ステマうざい」と「検品ちゃんとしてない」というのが二大批判みたいになっていますが、前者はどのメーカー・ブランドも広告に金使ってるんだから目くじら立てることでもないし、後者はどのメーカーでもありえることでしょう。交換してくれないとかいうならサポート体制の問題として文句言えるけど、そういうわけでもないみたいですし(ちなみに、私の買った奴は全然大丈夫でした)。
ただ、あるていど頻繁に製品に問題が起きているのだとすれば、一部製品に関しては「手づくり」ではなく工場生産しているのかもしれません。手縫いじゃなくてミシン縫いなのは構わないんですが、ライン生産してるんだとしたらちょっと問題ありかなぁ? まあ私には現物見てもサッパリ分かりませんけど(駄)。
さっきのリストにあったブランドだと、万双、ココマイスターあたりは卸売をしていないので、流通や中抜きのコストが発生せず、良い品がかなりお安く買えます。ABALLIさんも委託はあっても卸売はしてないような……。ともあれ知名度では劣るけれど質のいいものを狙うなら、その辺をリサーチすると良いかもしれません。
(6)まとめ?
というわけで、日本の革製品ブランドが作っている品をメインに見て、価格と機能が納得いったものを買いました。私は万双とブレイリオ、あとAgilityのを使ってるんですけど、最近エムピウの3つ折財布がいいなぁと思って見ています。立川のデパートに、「店員の私物です」といって使い込まれた品が展示してあったんですけど、凄いいい感じにエイジングしてて、色も綺麗になってたんですよね。さすがにこれ以上財布買っても使えないので買わないけど、プレゼントとかには良さそう。秋葉原のアトレとか、神田の三省堂でも売ってます。
エムピウの3つ折財布【millefoglie】。コンパクトでスタイリッシュ。深い色ならビジネスでも使える。
というわけで、何か参考になる話を書こうとしたんですがどんなもんでしょうね。この記事を読んだからって買う財布が決まるとは思わないけど、判断の材料の1つくらいにはなれば、ということで。誤ったことを書いているかもしれないので、その時はご指摘ください。垂れ流した推測による名誉毀損の可能性については、主に個人の印象ということでご寛恕ください。