よい子わるい子ふつうの子2(仮)

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

懐かしいものを発掘した話

部屋の片づけをしようと押し入れをいじっておりますと、ずいぶんと懐かしいものを発見しました。エウシュリーさんの記念すべき第一作、『戦女神』の初回版紙箱。保存のためにぺったんこに折りたたんでしまったので、金銭的な価値はあんまり無いと思いますが、私の思い出的な価値はプライスレス。いやあ、懐かしいです。
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こんな感じの表裏でした。今とそんなに変わらないですね。

あの当時は全く無名の(そりゃまあ処女作ですから知名度低くて当然ですが、特段有名なスタッフが移籍してつくったわけではなかったということです)ブランドでしたが、箱から独特なオーラを感じて購入を決定。特に目立つパッケージでもないだろうと思われるかもしれませんが、全面黒塗りでキャラ絵が小さめというのは、当時でも結構珍しいパターンでした。ちなみに『WHITE ALBUM』は真っ白な台紙に雪の結晶が描いてあるだけで、キャラ絵一切無しというロックなパッケージ。エロゲーらしからぬ、という言い方をすると物議をかもしそうですが、要はエロゲーにおきまりのパターンを崩してでも主張したい内容がある、または、それに乗っからなくても惹き付ける魅力がある、といった自信(自己主張)のあらわれなのだと思います。後に大ヒットを遂げるNitro+の処女作、『Phantom of Inferno』もコマーシャルで最も力を入れていたのは銃火器の宣伝でしたし。あれは何かいろいろ間違っていた気もしますが、でもまあ同じことが言えると思います。

ついでに、今はもうなくなってしまいましたが、エウシュリーのファンクラブ会員証も発掘。

エウ会員証
厳重にラッピングされていたお陰で、綺麗なまま残っていました。

ユーザーはがきを送ると自動で登録されるシステムでした。ずいぶん若い番号だったので、「ああ、あんまり売れなかったのかなー」と悲しくなって、知人友人に宣伝しまくったのを覚えています。ただ、その時は「RPGとしては微妙だけど、すごく雰囲気がいいゲーム」として紹介しました。まさか、こんなに「ゲーム性のあるブランド」として勇名をはせることになるとは……。

エウの『戦女神』と『幻燐の姫将軍』シリーズについては、結構いろいろ言いたいこともあるので、今回の「発掘」を機にレビューとか書きたい気持ちが高まってきました。時間はかかるかもしれませんが、ぼちぼち案を練ることにします。

他にもパッケージをいろいろ発掘しまして、『Natural2 DUO』とか、『めいどいんばに~』とか、『ロマンスは剣の輝き2』とか……。2000年以前の懐かしいタイトルがざっくざく。なんかもう掃除どころじゃない。嬉しくなってニヤニヤしちゃうの、わかってください。

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我が青春とでも言うべき、懐かしの作品群がいっぱい!ちょっと載せきれないくらいあります。

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こんなのまで。ある意味レアなのですが、個人的には黒歴史……。

ご想像通り、他にも昔のグッズやら何やらが大量に発掘されて、まったく片付けが進んでいないのが大問題。とりあえず思い出はどこかの箱に退避させて、さっさと整理しないと、月末が大変なことになりそう……。

トレカ
トレカも発掘。アリスの銀カードは、1998年、コミケット55の限定版SPだったと思います。多分。

ってなわけで、本日な懐かしいモノを発掘したお話でした。こんなものとっておいて何になるのかと昔は思っていましたが、10年も経つと邪魔だったようなものが意外と懐かしく貴重なものになったりすることって多いですね。何でもかんでも残しておくのは無理かもしれませんが、思い出に残る品はちょくちょく保管しておこうと改めて思った次第。

では、また明日。

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レビュー:『LOVELY×C∧TION APPEND LIFE/APRIL』

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『LOVELY×C∧TION APPEND LIFE/APRIL』
公式サイトリンク
配信:2012年4月14日

『LOVELY CATION』のアペンド、4月号が配信されました。今回は、優希、三朝、瀬良の3人。長かった彼女たちとのお付き合いも、とうとうこれでお終いかと思うと、寂しさがこみ上げます。・゚・(ノД`)・゚・。

優希は修学旅行に行く話。3年進級を前に、主人公と2人の関係をちょっと不安に感じ始めた彼女と、旅行先でこっそり逢瀬。ところがそこにクラスメイト(金田一とか)が帰ってきて、彼らのすぐ側でこっそり隠れてHすることに……。素晴らしいのはなんといっても、優希がブルマです。ブルマです。大事なことなので2回言いました。性に目覚める小学校低学年のころから、同学年女子のブルマ姿を見ると、妙にドキドキして目が離せなかった。あの衣装には、男を惹きつける魔性の力があります。間違いない。今の18歳だともしかすると、実物のブルマみたことない人がいるかもしれないんですよね。早く生まれて良かったと心底思います。ブルーマンデーとかいらないんで、ブルマデーを作ってください。

瀬良はお花見に行く話。夜桜の中でお酒を呑みながら、というのがオツ。そんな中彼女が、友人の結婚をうけて、「ただいま」と言う生活をしたい、と漏らします。キャリアウーマンばりばり、おひとりさま上等みたいに見える普段のイメージとのギャップが良いです。なんか話が進むにつれ、よりかかり系の女性になってる瀬良さんですが、そのぶん主人公が妙に大人っぽくなる恒例のパターン。主人公のくさい台詞で雰囲気がもりあがってそのまま外で……というのもお約束。2人の熱い夜をお楽しみ下さい。

三朝先生もお花見。ただしこちらはお昼のハイキング。周囲の風景は菜の花畑にしか見えないんですが、まあその辺はツッコミ無しで参りましょう。脳みそのほうもお花畑で、ラブラブ全開、いちゃいちゃしてそのまま青姦という何のヒネリもない展開でした。ただ、最後が良かった。「毎年来よう」という彼女との約束は、1年のアペンドを経たあとだととても良い感じ。ああ、アペンドが終わっても『LOVELY CATION』の世界は続いていくんだなという、じわりとした感慨と、楽しい気持ちが広がりました。

そして、全アペンド終了後再度ゲームを起動すると、「立ち絵鑑賞モード」が追加されます。いろいろな表情や衣装の彼女たちを堪能できるこのモード。普段のADVならそんなに気にもしないのですが、本作に関してはキャラとの付き合いも長くなり思い入れも出来たので、いろいろいじってしばらく楽しませてもらいました。

そして、ここでとても嬉しいお知らせが!!

なんと、『LOVELY×C∧TION』の続編制作が決定した模様! やったねお兄ちゃん! ぱうぱう~(テンションがおかしい)。

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コラじゃないです。マジです。公式HP参照。

別れは出会いの始まり。これから新しい生活が始まるんだ、とくり返していた主人公の言葉通り、また新しい出会いが来てくれるのかと思うと、ディ・モールト嬉しいです!

グランドフィナーレを迎えたことと、「2」の制作決定をうけて、スタッフブログも更新。2012年4月14日の記事に、γさん、insiderさん、唯々月たすくさんのお三方が揃ってコメントをよせておられます(スタッフブログはこちら)。

「LOVELY CATION 2」に関する気になる話を抜粋すると、やはりこれ。
新作のヒロインは4人。

1人減りましたが、これによって多大な利点が生じます。例えば――

・立ち絵の衣装バリエーションを増やせる。

・1ルートあたりのシナリオが増量。

・ラブリーコールを制御しやすくなり、呼んでくれる名前や、感情による音声のパターンも増やせる。

等々のメリットを考え、今回はヒロインを4人といたしました。

得た利点をできる限り作品に反映させるべく、たくさんのアイディアを詰め込んで『究極のADV』を目指します。
4人ヒロインにするぶん、密度を高める! ということで期待も高まります。ラブリーコールのバリエーションも増えるのでしょうか。名前呼んでもらえなかった皆さんに救いの手が差しのべられることを祈っております。しかし、シルエットを見た感じ、先生キャラいねーんじゃないのかという不安もあるのですが、ロリ先生というのもこの業界ではありがちなので、続報待ちですね。

私はあんまり「制作秘話」みたいなのを読まない(正確には読んでもそこまで気にしない)タチですが、今回のアペンドに関しては「企画段階で会社から「OK」を貰えた」とか、唯々月さんが「当初自分はアペンドの仕様を聞いた時、結構反対だった」とか、結構面白い話が載っていて興味深く読ませて頂きました。かなり特殊なシステムですから、いろいろあったんだろうなというのはなんとなく想像できます。1ユーザーの立場からすれば、これほどのユーザーサービスは無かった。それは、単にエロパッチを30本配布したからとかそういう即物的なことではなく、スタッフの方がそれだけ本気でこの作品の世界を作り、続けていこうとしていることが伝わってきたからです。

私はロマンチストなので、やっぱり作り手の方が作品を大事にしているとか、そういう精神論的なことに凄く弱い(エウシュリーさんに惚れ込んだのも、『戦女神』の不具合報告とシステムの問題を指摘するという大変失礼なアンケート葉書を送ったところ、丁寧なお返事と改善パッチをあててプレスしなおしたゲームディスクを送付してくださったからでした)。もちろん、ユーザーのことなんて関係なく自分たちが良いと思う作品を作り続けるという態度もありだとおもいます。でも、私なら自分が作った作品を多くの人に愛してもらいたいし、その為に心を砕いているのを見ると、「ああ、スタッフの人がこんなに頑張れる作品なんだ」と、好意的に見てしまいます。実際、それに値する素晴らしい出来映えでしたし。

「あかべぇそふと系列のタイトルとしては、赤箱を除いて初めて『2』を冠することが確定したL×C2」というinsiderさんのお言葉で気づきましたが、そういえばこのブランドの系列で「2」はほとんど無かったんですね。別に他の作品に関しては売上が問題だったとも思えないので、やはり本作は世界を続け、広げていくことを最初から目指していた作品だったということなのでしょう。これからの展開に、いっそう期待したいと思います。

さて、それでは本日はこれまで。楽しい気分で、また明日!

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レビュー:『この大空に、翼をひろげて』(体験版)

この大空に、翼をひろげてカバー
タイトル:『この大空に、翼をひろげて』(体験版)(PULLTOP/2012年5月25日発売予定)
原画:八島タカヒロ、基井あゆむ、田口まこと(SD)/シナリオ:紺野アスタ、七烏未奏、奥田港
公式:http://konosora.jp/
定価:8800円
期待:B(A~E)


以前の記事でお伝えした通り、現在PULLTOPさんの最新作『この大空に、翼をひろげて』の体験版が配布中。レビューコンテストが行われています。この企画、何が太っ腹ってレビュー者への景品より、「レビュー記事内に限り、体験版のキャプ画像掲載可」というところ。権利関係から日頃はどうしても文章に頼らなくてはならないことを思えば、この条項はパラダイスへの切符! というわけで、私も体験版をプレイして感想を書いてみることに。

▼プレイ時間 : 約5時間
まず、体験版に関して気になるであろう所要時間について。私は地の文を読むスピードと会話文を読むスピードを一定にしたいので、音声は時々スキップしました。全部の音声をきちんときけば、6時間くらいかなと思います。一晩で一気にやりきりました。

▼操作性 : そこそこ快適
お次は、コンフィグ関係。これについては画像を見て貰うのが手っ取り早いと思うので、キャプしてみました(楽ちんでいいなー)。

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コンフィグ画面を4つ並べ。

割と細かい部分まで設定できる親切設計。特に、マウスショートカットの調整が可能なのがありがたい。システムの親切さ、カスタマイズの幅では最強の呼び声高い「戯画システム」には及ばないものの、「結構いろいろできるな」というくらいには揃っています。

素晴らしいのは、直観的に調整しやすいということ。細かい設定をいじることができる作品は他にも色々とありますが、そういうのは得てして、とにかくわかりづらい。エロゲー慣れした人ならともかく、初心者は何をどういじれば良いやらわからず、結局デフォルトのまま……という、「親切があだになる」タイプのコンフィグも多い。けれどこの画面であれば、戸惑うことは殆ど無いでしょう。操作画面がMS-DOSプロンプトからWindowsになったくらいのわかりやすさがあります。その意味で、ユーザーフレンドリー。

ただ、最近割と多くのブランドが搭載している「シーンスキップ」や「前の選択肢に戻る」が無いのは残念。周回プレイのお友達ですし、後で日常シーンを見たくなったときやレビューを書く際などには非常に便利な機能なので、この手の長い作品には標準搭載してほしいなあ、などと思います。

画面は、16:9のワイド。この調整はさせてほしかったところですが、まあもう他の作品も軒並みワイドっているので、贅沢は申しますまい。時代の流れということで、ワイドに慣れる方向で行きます。

▼物語 : あらすじ紹介
ロードレース(自転車)の有望な選手だった水瀬碧(みなせ・あおい)。レース中の事故によって選手生命を断たれた彼は、心機一転をはかるべく故郷の風ヶ浦に帰ってきます。5年間離れている間に開発が進み、すっかり様変わりした故郷でしたが、知人や友人は暖かく碧を迎え入れてくれます。

働いていたら余計なことを考えずに済む、という母親の配慮もあって、通学しながら恵風女子寮の寮母(寮父?)として働くことになった碧。紆余曲折を経て碧は、帰ってきたその日に出会った、見た目可憐・中身残念な少女・羽々音小鳥(はばね・ことり)、久しぶりに再会した親友・姫城あげは(ひめぎ・あげは)、学園一の天才でありながら、ある理由のために規定年限を超えて留年し続けている「超」留年生・望月天音(もちづき・あまね)らと共に、廃部寸前だったソアリング部を立て直し、グライダーで「雲の回廊」を見るという目標に向かって、再び走り出したのでした。

体験版で描かれるのは、碧たちがソアリング部に入り、天音が引退するまでの間。「雲の回廊」を目指して駆け抜ける、〈最後の夏〉が舞台です。1つの大きな山場が終わるまで公開してくれるというのは非常に太っ腹。

▼演出(音楽・音声・エフェクト等) : 良好
音楽、音声はどちらも良い感じ。エフェクトも気合い入っています。私は映像や音楽関係を専門的に語れるほどの素養がないのですが、雰囲気を壊すような要素はありませんでした。むしろ概ねプラス要素と考えて問題ないかと。特にCVについては、「読むスピードの為に音声途中でもカットします」と言い持って、あんまりカットしなかったくらい良かったです。いや、良いか悪いかはわからないと言っているのに何だそれはと言われそうですが、要するに私の好みだったということで……。あげはちゃんの声好かったなー。あと、アヒルが茶谷やすらさん! ガァーしか言わないけど、何故か妙な雰囲気というか存在感があります。

演出に関してはそこまでど派手ではないものの、凝ってるな、という感じ。特に、キャラクターの視点の動きが視覚的にわかるよう、丁寧な工夫がしてあって良かった。また、ここぞというシーンにこまめに差し挟まれるちょっとしたムービーは雰囲気を盛り上げてくれています。

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こんな感じで風の動きや空の色など、インパクトが求められる場面で演出がこまめに挿まれます。

▼キャラ : あげはタン(*´Д`)ハァハァ
体験版でのメインヒロインは、同学年の2人と天音の3人。下級生である双子の出番は少なめ。描写が多いのは圧倒的に小鳥ですが、魅力的で奥行きを感じさせたのは、あげはでした。どっちかというと男前に見えるところも含めて、「いい女」。誰よりも気配りができて、他人の痛みに敏感で、それゆえに一歩引いてしまう健気な感じがにじみ出ています。

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マジいい女ッス、あげはさん!

小鳥と天音はキャラが固まってる感じがして、あとは彼女たちをとりまく外側の環境次第で印象が確定されるのを待つしかないでしょうか。特に天音は外的状況にひっぱられている様子が非常に強いので、今後の展開待ち。小鳥はフツーにギャップが可愛い娘でした。

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へっへっ……おねがいされちゃあしょうがねぇな……。

サブキャラも、ウザ系はほとんど無し。某ロボット部顧問教師を除き、主人公たちに好意的だし、大きな波風は立ちそうにありません。サブキャラの中で人気を二分しそうなのは、生徒会副会長の朱莉さんと、あげはの妹、ほたるちゃん。佳奈子さんもイベント次第では人気急騰のポテンシャルを秘めていそうですが、いまのところはちょっと慎みが足りない。

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なぜこの人がメインじゃないのか……。

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ほたるちゃん、お姉ちゃんに遠慮することはないのよ。三角関係発動に(無理だろうけど)期待したい。

近づくだけで正気を失いかねないような、SAN値直葬の名状しがたい萌えキャラ(たとえばこんな娘)は残念なことに見あたりませんでしたが、全体的になかなか高いレベルでまとまっていると思います。

▼感想 : 期待大
体験版をプレイし終え、かなり期待が高まっています。良いところできりやがって畜生! という感じ。『君が望む永遠』の体験版、俗に言う「遙クラッシュ」の衝撃ほどではないにしろ、なかなかインパクトのある劇的な幕切れと、これから先を楽しみにさせる力強いメッセージで締めくくられています。

そもそも5時間もかかる体験版というのは、Hシーンが無いとかそういうことを除いて純粋に量だけで考えれば、その辺の低価格作品一本分くらいのボリュームがあるわけですから、こりゃもう出血大サービス。序章をまるごと無料配布しました、という具合です。雰囲気が合わない人は間違いなく回避可能だし、気に入った人は続きが気になって仕方ない。体験版としては成功しているのではないでしょうか。

全体の雰囲気は、コミカル。明るく楽しい学園生活がテンポ良く展開されていきます。ただし、シリアスな場面も差し挟まれ、物語の軸はシリアスな方を中心にして動きそう。気になるのはバランスですが、目下どちらが浮いちゃうこともなく、メリハリがついている。悪くないと思います。

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田口まこと氏のSD絵も冴えまくり。いやぁ、かわいいですね。

また、1つの事象やキャラを多面的に描くことで、一定の深みを与えています。たとえば、小鳥とあげはの間の確執。小鳥の過去や、あげはが語っていなかった事実によって、滑稽を通り越してやや聞き分けのない子どものように見えていた小鳥の態度が、決して理由なきものでない、ということがきちんと語られる。

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しゅ、修羅場じゃ……! 主人公完全に空気。

しかし直後、きちんとフォローというか、小鳥が単にあげはを突き放したいだけではないという面も語られます。楽しかった。でも、それを態度にだせない。そのことは、単に小鳥が「素直じゃない」という性格を与えられているからではなくて、小鳥のおくってきたこれまでの生き方の、やむを得ざる帰結としてこんな性格になったんだ、という語り方ですね。テンプレの性格設定を用意して、こんな性格だからこういうこと言いますよ、という「キャラ付け」ありきの作品が多い中、きちんと登場人物を作る姿勢が見えて好印象。

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思いがけない、小鳥の内心の吐露。彼女だって、楽しくない訳がなかった。

ただそうなると、内面に沈んでいく暗いキャラの描写が全体の雰囲気にかみあわないのではないか、という心配も出てきます。主人公である碧は、事故によって夢やぶれたという暗い過去を持つわけですが、えてしてこの手の「悲惨な」過去を持つキャラというのは、ことあるごとに過去の話をしては「かわいそうなボク/ワタシ」に閉じこもる。もちろんそういった形で内面を掘り下げるというのはアリだし、その深みによって感動的な物語を紡いだ作品はいくつも思い当たりますが、度が過ぎるとそのあふれ出る悲壮感と自意識が重石になって、作品の雰囲気が沈んでしまう。明るい調子が急激に損なわれる可能性もあるわけです。

と、煽ってみましたが体験版の限り、そちらのほうは心配無さそう。

碧くんは、体験版時点では過去に対して結構きちんと向き合っている。少なくとも向き合おうとしています。必要以上に落ち込んだり自虐的になったりせず、深刻にうけとめつつも前向きに生きる、という好青年。足が動かない小鳥も、ちょっとネガ入っていますが、基本は同じ。登場人物たちは前向きさや芯の強さを発揮して、爽やかな雰囲気を損なわずにいると思われました。

あと、丁寧にキャラを描いていながら、テンポがかなり良い。一晩でやりきったと書きましたが、正直やめどころを見失っていました。不必要なイベントが余り無いんですよね。ボリューム確保のためのひきのばし工作みたいなイベントも無く、情報密度が高い。この後も同様であれば、非常に楽しみです。

▼不安点とか気になったところ
序盤から思わせぶりに謎を配置しすぎるきらいがあり、緊張感が分散してしまっています。特に、関連するのかしないのかよくわからない謎がどんどん新しく出てくるため、ストーリーに関心を絞りきれない。ソアリング部の目標という大目標に向かって進むという芯はズレないものの、小出しにされる伏線が多すぎて、段々意識が薄れていく可能性が……。

また、結構盛大に風呂敷を広げたぶん、オチが尻すぼみになると評価が急転直下の大暴落になる可能性もあります。その辺は怖いかなぁ。

細かいところですが表現というか内容というかでちょっとおや? と感じるところもありました。たとえば冒頭、地元の街並みを見て「それは、過去と未来が同時に姿を現したような光景」と碧が感想を言い直すのですが、言い直したのに抽象的になって余計わかりにくくなるという。もともとこういう文学的な表現を使って説明したなら良いのですが、「ような」と具体的にわかりやすくするための言い換えを用いてこれというのは、ライターさん的には後者のほうがわかりやすいと思って書かれたのでしょう。結構感性重視に文章を書いておられるのかな、と(私も人のことは言えませんが)。ライターさんの感覚についていけるうちは良いのですが、ついていけなくなると厳しくなる可能性はあり。まあこういうのは、普通余り気にしないし私もたまたま目に付いただけなので、物語に没頭するとどうでもよくなるレベル。

あと、一部料理好きの間で物議を醸していたのが次のシーン。

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ナポリタンは思いっきりトマトソース系じゃないか(参考:Wikipedia)、ということでした。これについては、ショウガ焼きと並べていることから、べったりした重たい食べ物ということでニュアンスは非常によくわかるし、Wikipediaにも記載されているように今で言うところのナポリタンはトマトケチャップ、トマトソースを使ったあっさりパスタは一般のナポリタンとは違うという認識が広く通用しているので、このような言い方になっても別に良いんじゃないかなと思います。

▼補足
・本作の略称
「ころげて」になりそうなのでしょうか。個人的にはツイッターでネタ的に言われていた「大空翼」も捨てがたく……まあ、集○社さんが怖いし、無いか。

・気になる伏線
寮の行く末と、飛岡先生の態度。この2つが気になっています。特に飛岡先生は不自然なくらいイヤな奴になっているので、実はこの人がソアリング部OBでした、くらいの仕込みはあるのかなと思っています。そうでないと、他のキャラとのバランスとれないような……。

・「好きになるって、こういうこと。きっと」
キャッチコピーは非常に素敵だと思うのですが、いまのところまだ届いた感じはしません。なんとなく、「与えられるもの」という序盤の一言との繋がりが気になっているのですが、今のままだと一緒の目標に向かって歩いていたらなんとなく好きになっちゃいました、みたいな普通のノリに落ち着くのでしょうか。製品版でどうアプローチされるのか、楽しみです。

・副題「Extend the little wings which fly in this sky highly.」
これが非常に気になります。extendは普通、領土なんかを拡張する時に使うので、「翼をひろげる」のように《閉じたものをひらく》という意味の「展げる」とはかなりニュアンスが違う。英語だと「spread」か「expand」を使うのが一般的です。また、wings which fly...を直訳すると、「空飛ぶ翼」(空を飛ぶための翼ではなく、翼が空を飛んでいる)という意味でしょう。恐らくはグライダーのことを指しているのだと思いますが……。

つまり、英語のタイトルから意味を拾えば、《空飛ぶ翼を大きくしよう!》という意味合いになるのでしょうか。「この大空に、翼をひろげて」という日本語タイトルだと、「自分が」翼を広げる感じしかしませんが、英語タイトルのほうは「みんなで」飛んでいくという感じがして、考え過ぎかもしれませんが、とてもよく練ったもののようにも思われるのです。

という感じで、色々述べてきましたが、以下のあげはちゃんの一言をもって〆にいたします。ほんと、発売が楽しみ! もちろんあう・あわないはあると思いますが、それを判定するには体験版は充分な内容だと思うので、興味のあるかたは是非プレイされることをお薦めします。

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画像をぺたぺたはりまくったせいでかえって見づらくなったかしら。でも、一度やってみたかったんですよね。楽しく感想をかけて、割と満足です。それでは、本日はこれまで。また明日お会いしましょう。

『この大空に、翼をひろげて』たった一つの青春がここに― 姫城あげはVer
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ラノベ:電撃文庫の新刊(2012年4月)を購入した話

というわけで、しばらくぶりにラノベの話。といっても今回は、購入報告と一言感想。

まず、アニメも始まって絶好調、『アクセル・ワールド』の11巻。

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すみません、まだ読んでません……。でも前回いいとこで終わってるので気になる! 休みの間に読み切りたいと思います。

続いて、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の10巻。アニメの二期が決定しましたね。

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京介が両親から桐乃との関係をあやしがられ(その昔、桐乃の所持していた「アレ」に関する泥をかぶったツケがここにきて来てしまい、変態視されます)、受験勉強もかねて一人暮らしをして勉強に集中。成績を上げるようにといわれる話。普通、親の心理としては、成績のことを考えると一人暮らしはありえないと思うのですが、今回は桐乃から遠ざける、というのがメインだったということでしょうか。そして、まさかの「彼女」からの告白――。

正直私は今巻のヒロイン大好きなのですが、もう完全に停車することはないだろうと思って諦めていたので非常に嬉しい展開でした。ヒャッホウ! この調子でいくと終点ではないだろうというのも想像がつくものの、廃駅寸前だったところに新幹線が停まったみたいなもので、大変満足しております。ただ、似たようなパターンを続けたぶん、なんとなく先が見えるのがやはり残念といえば残念でしょうか。この「予想」が良い意味で裏切られることも、秘かに願っています。

そして、『さくら荘のペットな彼女』7巻。

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こちらも一気にクライマックス! ……ではないのかもしれませんが、これまでなぁなぁだった関係が急速に進展し、緊張感がぐいーんと高まってきました。アニメ化も決まったようで、なんか今回買った三冊、全部アニメ絡みじゃないかと我ながらミーハーっぷりに愕然としましたが、全部もともとひいきにしていたシリーズ。とびついただけのにわかというわけではないので良いのです、多分(いやべつに、にわかでも良いんですが)。

ましろも七海もライバル意識丸出しで、恋の鞘当てとしては最高潮の盛り上がり。お互いが空太に告げる台詞が、良い感じにゆがんた対称(変な言葉ですが、読んでもらえれば何となくニュアンスは伝わるかと)になっていて面白い。私としては七海を応援しているのですが、ことラノベに関しては私が応援するキャラはほとんどが負けるのがお約束なので、一踏ん張りしてほしいところ。……というか負けそうなほうを応援している気もします。

今回、ましろから空太に放ったのが心臓をえぐり込むコークスクリューブローだとしたら、七海から空太に放ったのは、何のひねりもない右ストレート。かわされるかもしれないと覚悟して、それでも愚直に放つ一撃に、私は憧れます。ほんま、七海はええ子やで……。あ、七海といえば『明日の君と逢うために』の七海美奈さん(※)を思い出します。彼女も恐ろしく良いキャラ。名字ですが。
(※)…Purple Softwareから発売されたPCアダルトゲームのサブヒロイン。Hなし、ルート無しの完全脇役だったが、人気投票で堂々の一位を獲得するなど余りに良いキャラで、後に彼女をヒロインとした『明日の七海と逢うために』というスピンオフ作品が発売された。
と、電撃新作からは以上三作。最近、ちょっと購入量が減っていますね。

あとは、新紀元社から出ていた「Truth In Fantasy」シリーズ(ファンタジーの資料集みたいなものです)が文庫になっていたので、がっつり買いました。特にお薦めは、須田武郎『中世騎士物語』でしょうか。

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ブルフィンチの『中世騎士物語』とは違います。あちらも名著ですが。ヨーロッパの文化・芸術を理解するうえで欠かせない素養として、まず神話が、次いで騎士物語が重要である、と言ったのが確かこのブルフィンチという人だったと思います。それと奇しくも(というよりはおそらく併せてきたのだと思いますが)同じタイトル。資料集といっても絵と図で埋め尽くされているわけではなく、当時の様子についてきちんと細かな解説が書かれていて、読みものとしても、参考書としても役に立ちます。新紀元社のTIFシリーズには、素人の私からしても「えー、これでいいの?」みたいな本が時々ありますが、本書に関してはかなり良い感じ。

ついでに、新刊ではありませんが気になっていた『桜色の春をこえて』も購入。こちらもまだ読み切れていませんが、表紙を見て結構面白そうなニオイがしたので。ヒットしていたら、また何か感想的なもの(笑)を書くと思います。

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といったところで、本日はこれまで。しかし、雨だのなんだので本当に桜が散ってしまいましたね……。先週お花見しておいて良かった。

それでは、また明日お会いしましょう。

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レビュー:『柊鰯』

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(C)活動漫画屋 画像はDiGiket.com様より転載

タイトル:『柊鰯』(活動漫画屋/2012年1月6日)
原画:なかばやし黎明/シナリオ:夕街昇雪
公式:http://ugainovel.blog112.fc2.com/
批評空間レビュー投稿:済 → ネタバレ有り
定価:1500円
評価:B(A~E)
備考:非18禁(一般)ノベルゲーム/Adobe AIRアプリ(Ver2.6準拠)/音声無し
販売:DiGiket.com(DL販売)。体験版有り
参考:えび様の批評空間感想(ネタバレ無)


批評空間様にレビューを投稿しています。ネタバレ有りにしてありますが、ストーリーに突っ込んだ話はしたものの、致命的なバレは一応防いだつもりです。ただ、本当に興味ある方しかご覧にならないだろうということで楽しみを削ぐといけませんから、念のため「バレ有」にしておきました。気にならない方、プレイ済の方はよろしければご笑覧ください。

本レビューは、主にネタバレを無しにして作品を紹介するとともに、諸事情から上記レビューでは書ききれなかった部分について触れたいと思います。

なお、ネタバレ無しの感想としてえび様の感想へのリンクを上記に記載させていただきました。大変読みやすくまとまっており、魅力が端的に伝わる内容なので、未プレイの方はご参考までに。

▼物語
同人シナリオライター、安治川鰮(あじがわ・いわし)。35歳。童貞どころかキスもしたことありません、という今時奇特な純朴青年……を通り越してオッサンが主人公。明治・大正の文士に憧れていると言えば聞こえは良いですが、要はまだ何者でもない無職。偉大なる魔法使いにして半ニート、小説家ワナビーという素晴らしい青年です。一応、家持ち(遺産)なのが救いでしょうか。しかし、ゴミの山に埋もれてコンビニ弁当で生活する様子には、恐ろしいシンパシーを感じてしまいました。男の一人暮らしって気を抜くとすぐああなります、マジで……。

今日できることは明日やる、が重なりすぎて、結局何もできませんという絵に描いたような自堕落な日々を送る彼の元に、14歳の可愛らしい、けれど無表情な「家政婦さん」がやってきたところから物語は始まります。少女の名は、木津川柊(きづがわ・ひいらぎ)。どうやら同人サークルのリーダーである天保山桜(てんぽうざん・さくら)が、鰮の生活を改善させるために手配した模様。はじめは自分の生活圏を荒らされることを嫌って拒絶していた鰮ですが、東日本大震災で居場所を失ったという話を聞いて、鰮は打算と同情から、彼女の身元を引き受けることを決意します。

鰮を誰よりも昔から、誰よりも深く理解している女性、桜。そして突然やってきた可憐な少女、柊。本作は、この2人を交えて描かれる恋愛模様。震災後の日本を舞台に、そこに暮らす人びとの心の交流を描いた物語です。

▼感想
本作をプレイしたきっかけは、えびさんがツイッターで大絶賛しておられたからというのもありますが、それ以上に、美麗なグラフィックに一発でKOされたから、というのが大きかった。販売サイトさんなどで掲載されているサンプル画像をご覧になればおわかり頂けると思いますが、凄い良い感じだなあ、と。

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押しかけ家政婦こと柊さん。14歳。あなたのほうがきれいです。

いやー、柊ちゃんも桜さんもくぁーわーいーいー! 鰮さんも絵を見る限りめちゃめちゃイケメンですし、なんか畜生っていう感じです。田舎というか、ちょっと都会とは違う「昔ながらの地域」に独特の雰囲気がよく出ている作風で、火鉢とか和服メインなのが、大好物の私にはたまりません。CG枚数は少ないのですが(差分無し8枚ほど)、立ち絵の衣装が豊富で、充分満足でした。

さて、公式の紹介などでは、「ただのんびり暮らすだけのお話し」となっていますが、無邪気にイチャイチャとかほのぼのという感じはあまりありません。どちらかといえばむしろ、序盤から重たさを感じさせる内容のほうが多い。暗澹たる話では決してありませんが、どちらかといえばしっとりとかしんみりとか、そちらのイメージのほうが近いでしょうか。それはやはり、「震災」ということを扱ったため。

本作にどのようなテーマを読むか、というのは人それぞれで良いとしても、このご時世に「震災」を取りあげるというのはやはり問題含みで、どうしても作品にとっての必然性が問われる。そして、批評空間さんのレビューでも同じことを書きましたが、私は本作が震災を取りあげる意味はあったと考えています。

もちろん、震災に関連して行われたさまざまな心ない言説や差別をとりあげることでユーザーにまっとうな対応を呼びかけるという社会的(啓蒙的、と言った方が妥当かもしれません)な意義もありますが(その意味で「常識」的なラインは確保してあります)、それ以上に、「当事者性」という問題を扱う上で震災というのは非常にタイムリーかつ強い力を持っているということが大きいでしょう。

「当事者性」とはどういうことか。端的には、「不謹慎厨」のような事件を思い出して貰えれば良いかと思います。

震災の直後、私たちの周りには「被災者の気持ちもしらないで」とか、「被災者でもないくせに」といった言葉が溢れました。阪神淡路で私が被災したという話はレビューのほうにも書きましたが、実感として今回はそれ以上に勢いが強く、被災していない人が《自主的》に被災者に遠慮することが増えた。背後にはおそらく、私たちの現実が、個々別々の固有の状況に分断されている、という思想が潜んでいます。

被災した人の気持ちは、被災した人にしかわからない。否、被災した人同士であっても、その度合いによって、味わった気持ちは全く異なる。作中、柊は同じように体育館に避難した人びとのことを語ったり、ある被災者と劇的な再会を果たしたりしますが、被災者同士だから心が通じあう――などということは一切描かれません。むしろ逆に、被災者同士でありながら、お互いの気持ちは全く違うところを向いている。まるで、全然別の場所にいて別のものを見てきたかのように。

誰かが、別の誰かについて何かを語ろうとすると、常に「本人でもないくせに」という批判がなされる。当事者のことは、当事者にしかわからない。それが「当事者性」です。それは、ある意味当たり前のこととしてずっと社会にあったわけですが、普段はそんなに気にせずに生きてこられた。「おもしろかったね」とか「つらかったね」といって、何となく「わかるわかる」という空気を作っていれば良かったわけです。ところが震災という現実は、私たちに「当事者性」をつきつけてしまった。「わかるわかる」では済まされない状況が生まれてしまいました。その反動が、「不謹慎」発言が跋扈するような状況へと繋がったのではないかと思います。

少し作品から離れたところに来ましたが、本作はそういう「当事者性」を通して見えてきた、人間の孤独な状況を踏まえた上で、それでも人と人とが繋がって生きていくということを描こうとしています。表面上はそのことは、「恋愛」として描かれますが、そこに終始しないところがこの作品の魅力でしょう。

「柊鰯」というタイトルからもおわかりのように(イワシの頭と柊をひっつけた、節分の時に飾るアレです。一応画像)、作中には日本の伝統文化みたいなことがよく出てきます。もともとシナリオライターの方が民俗学系のテーマを好んで書いておられたという事情もあるのでしょうが、とにかく本作では作中言われているところの「伝える」ということが(伝統、という言い方になるとまたややこしい問題が発生するので、敢えて避けました)問題になります。柊が、祖母から伝えられた料理の味、掃除の方法……。そういったものの中で、鰮や柊は過去から現在、そして未来へと続く、人との繋がりを実感していく。

紹介のところで、鰮が引きこもり気味だという話をしました。これは単に、鰮がコミュ障だったとかそういう話ではありません。彼は常に卑屈な態度をとりますが、それは他人との絶望的な距離に誰よりも敏感だということの裏返しとして描かれています。理解されないこと、理解できないことを、諦めてしまっている。

けれどそれが、柊の登場によって劇的に変化するわけです。鰮は、柊に寄りそいたいと思う。たとえ理解できなくても、それでも柊を支えたい、と。その鰮の想いは、愛と呼ぶなら愛でしょうし、実際問題「好き嫌い」という恋愛沙汰として主には描かれているのですが、たぶんその恋愛の成就が普通と少し異なるのは、それが「伝える」という形で達成されているというところ。

表だってはタイトルの通り、柊と鰯の関係がメインの物語ですが、上のような問題を踏まえると、桜の存在感もにわかに大きくなってきます。

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鰮の最大の理解者・桜さん。可愛いすぎます。

本作の本当の意味でのキーパーソンは、私の個人的な趣味はおいておくとしても、おそらく桜でしょう。柊は、いわばきっかけにすぎない。鰮が桜に告げた、ラストシーンの「お礼」の言葉がそのことを端的に示しています。物語の中で鮮やかに咲き誇る花は柊かもしれませんが、名前とは逆に、物語の地下深く、じっと根を張って最初から最後まで人と寄りそい続けたのは、桜なのですから。その意味で本作は、最後まで柊と桜と鰯の間の恋愛を描いていて、エピローグできちんとカタルシスを与えることに成功しています。

35歳と14歳の清らかな――というかこっぱずかしくなるくらい初々しい恋愛描写は、魅力といえば魅力ですが、2人の恋は好き嫌いとか、肉体関係とか、そういうものとは少しずれています(描写としてはそういう話もでますが)。恋の鞘当てみたいな展開も、「え、それで終わって良いの?」という感じで、そこまで盛り上がらない。逆に桜とはそっち系に走りそうなところもあるのですが、やはり煮え切らずにストップ。恋愛としてはおままごとチックというか、綺麗すぎて浮いている感じもします。

結局鰮の根っこにあるのは、相手の心を自分のものにしたいとか、すべて理解したいとか、そういう感情としては余り描かれません。むしろ、誰にとってもものの見方というのは別々であることを認めた上で、誰よりも深く相手のことを見ていたいという、そういう「自分」の側の感情として最後まで描かれているように思う。それは、普通の意味の「2人関係」としての恋愛とは、少し離れたところに位置づくものでしょう。

「この線路が交わったら脱線してしまうだろう。だけど、行く道は夕陽に明るく照らされている」

2人の道は平行で交わらないかもしれないけれど、それでも構わないのだ、と鰮は言うわけです。それでも自分は手を伸ばし、隣にいる人と歩んでいこう、と。そうやって寄りそって歩く先に、「道」はある。「伝える」ということと重ねて言えば、そうやって「道」を作っていくということが、人の営みであり、この作品で描かれている恋愛なのだと思います。

隣り合う2人の世界では完結しない、むしろ隣り合う2人が本質的には触れあうことができないということの先にある希望を見据えている。それは鰮が言うとおり、楽観的な祈りに似た見通しかもしれないけれど、バラバラになってしまった震災後の生を、明るく照らす光ではないかという気もするのです。

タイムリーに現代日本の問題を扱いつつ、恋愛を絡めて人の生き方の深いところへ届くような内容が描かれていて、これはいい話だなと思います。主張の内容自体はそんなに深くないというか、細かい難しいところはバッサリ捨てた楽観論という気がしないでもないですが、そのぶん与えてくれる心地よさや満足感があって、エンターテインメントとしての質が跳ね上がっています。

プレイ時間はだいたい3~5時間くらいでしょうか。音声無しなので読みのスピードがそのまま反映されます。これで1500円は本当にお得(下手な映画に行くよりは断然こちら)。ちょっとした時間を使って前向きな気持ちになりたい人にお薦めの作品です。
▼蛇足的感想(ちょっと感じた不満など)
予想通り、あるいは予想以上にグラフィックが素晴らしくて、こちらの方面ではもう大満足。ただ、それで誤魔化せていますが、割とアラもあります。特にテキスト面。改行が多すぎなのがシステムにあっておらず(2行くらいの文章が次々に入れ替わるタイプ。普通の恋愛ADVのように横書きで、メッセージボックスが切り替わるなら良いのですが、縦書きで何行かまとめて表示される)、かなり読みにくい。そのうえ、鰮の一人称語りがとても内向的で、自分の話ばっかりウジウジしているので、本気でつきあうと結構しんどいです。文章のタッチ自体は軽いし、時々くすっと笑えるネタも仕込んであるのですが、言っている内容が内容だけに後半になればなるほどズブズブ感が出てくる。この辺は好みの問題ですが、作品自体の爽やかなイメージとひきくらべると、もう少し抑えめでも良かったのかなとか。

また、宮沢賢治や岡本かの子のネタ(岡本かの子はあの場面だと『食魔』のほうが来るかなとか思ったりしましたが)なんかは個人的に面白いと思ったものの、必要だったかは不明。「ものへの罪悪感」に関する民俗学的な西洋比較の考察なども含めて、ちょっとライターさんの趣味でとばしすぎた感じはしました。コミケ等に関するオタク的な作業のほうは、うまいこと抑制を利かせて(つまり、この辺の作業を細かく書けば「リアリティ」を担保した気になれるのですが、物語全体からするとそのリアリティっていらないところなので、自己満足にしかならない)綺麗に捌いていたのですが、こちらはちょっと気合い空回ったかなという。逆に作家視点でのものの見方に対する独白などは真に迫るものがあって、身を乗り出しました。

散りばめられた要素の意図は、何となく考えるに「ものごとをちゃんと見る」、ということかなとは思うのですが、文学や民俗学の予備知識が余り無い私は置いてけぼりにされた感じが。鰮のキャラ付けにとっては、深入り仕切らないところで避けてしまうぶん、かえってそれほど重要なファクターだとはどうしても思われなかったので、鰮よりもライターさんの顔が浮かんでしまうというか。読み進める中で入り込んでいた物語から、時々追い出されてしまう気分。まあそこまで大げさでもないのですが、細かいところは気になり出すと気になるかもしれません。ただ、どれも全体の雰囲気にとって致命的ではないと思います。


というわけで、本日は同人ゲーム『柊鰯』の紹介でした。言いたいことを言うつもりが、上手く言えないどころか批評空間さんの感想と大きく変わったことは書いてない気がしますが……うーん、しかもあんまりネタバレ抑えられてもいないのかな。まあ、致命的に魅力を損なうことを書いたつもりはないので、ちょっと切なくて暖かくなれる話が好きな方には、是非お試しいただければ。

それでは、また明日お会いしましょう。お疲れさまでした。

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エロゲーマーです。「ErogameScape -エロゲー批評空間-」様でレビューを投稿中。新着レビューのページは以下。
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