よい子わるい子ふつうの子2(仮)

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

書評:『風の白猿神―神々の砂漠』

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滝川羊『風の白猿神―神々の砂漠』
(1995年 富士見ファンタジア文庫 イラスト:いのまたむつみ)

▼イントロ
再び、古いファンタジー小説です。ジャンルとしてはSFに分類されていますが、ファンタジーとSFの中間くらいでしょうか。先日紹介した『カイルロッド』がメジャーな中でもマイナーな部類だとすれば、こちらはおそらく、マイナーな中でメジャーなタイトル、という感じ。滝川羊『風のハヌマーン』です。白猿神と書いて、ハヌマーンと読みます。今だと「厨二」と言われるかも知れませんが、当時はカッコイイ! と憧れたもの。イラストのいのまたむつみ氏もまた、凄く良い絵を描いておられます。

第六回ファンタジア長編小説大賞受賞作なのですが、どうもこの作品の受賞に対して、物言いがついたそうです。

実はこの物語、きちんと完結しておりません。一応「オチ」はついているものの、いろいろと消化不良の部分が残る。もちろん、それを含めての見事なヒキなのですが、「読み切り一本勝負」の原則に沿わない、「完結していない作品に大賞を与えていいものか?」という問題が起きた。それは、この作品を読めば、なるほどと思うはずです。

読者からすれば、面白ければ何でも良い。それはそうでしょう。けれど、選考委員からすればそうはいかない。なぜなら、募集してきた他の作品に対する公平性が問題になるからです。そのことを巡って議論をした当時のファンタジア文庫編集部は、非常に良心的で立派だと(今がそうでないという意味はまったくありません)思います。そして、最終的にこの作品に大賞を与えた英断は、もっと素晴らしいと思います。

この作品以降、第14回の『12月のベロニカ』まで8年間、ファンタジアの大賞を受賞した作品は無かったというのですから、編集部が決して生半可な気持ちで(ありていに言えば、セールス目的で)選んだのではない、ということはおわかり頂けるはず。

巻末に掲載されている、火浦功氏の紹介文の冒頭を引用しておきましょう。
ページをめくらせる力。
続きを知りたいと渇望させる力。
小説の戦闘力とは、つまり、そういうことだ。
断言しよう。
この『神々の砂漠』こそは、まさに、そういった意味での、正しい戦闘力に、満ちあふれた作品である!

言葉の一つ一つ、読点の一つ一つに、もの凄い力強さを感じる解説文。これだけで、この小説がどれだけ面白いのか、具体的には全く解りませんが、気持ちがひしひしと伝わってきます。私は、火浦氏のこの文章を読んで、購入を決意しました。そして、とても幸せな出会いを果たすことができました。

作者の滝川氏は学校の国語の先生で、本作が完全な処女作だったということですが、そうとは思えない構成と、しっかりした文章で、私たちを物語へひきずりこんでくれる。結局、この後続刊が発売されることは、諸々の事情により無かったのですが(本当に残念です)、90年代ファンタジー小説の傑作のひとつだと思います。

▼あらすじ
人類と〈機械知性〉とが死闘をくりひろげた〈聖戦〉から百年。壊滅した東京シティの数少ない生き残りである少年・古城宴(こじょう・えん)は「大槻キャラバン」の一員として、戦闘空母・箱船の搭乗員となっていた。メカニック見習いとして活動する宴は、ある日仲間と行っていた発掘作業で、「神格匡体」を掘り当てる。人間の想像力を現実化し、神話の神々を顕現させる究極の兵器・「神格匡体」。それを掘り出した興奮さめやらぬうちに、宴は更に驚くべき発見をする。なんと、その匡体の中には、記憶を失った少女・シータが眠っていたのだった。宴は、少女を助けるため匡体を操る。すると匡体は、美しい白猿神(ハヌマーン)のシルエットを形作り、驚くべき力で敵を打ち倒したのだった。この匡体は何なのか。そして「発掘」された少女は何者なのか。二つの謎との出会いが、宴と大槻キャラバンを、大きな戦いの渦の中へ巻き込もうとしていた。

▼紹介
「シータ」という名前から察しが付く人もおられるでしょうか。滝川氏本人が「ガンダム」と「ラピュタ」を基本路線とした、と言っておられる通り、巨大ロボを操る主人公が、地中から発掘した少女を守りながら、彼女と彼女の秘密をつけねらう謎の組織と戦う話。ただし、ムスカ大佐役はもうちょっと物わかりが良くて、しかも美人のおねーちゃん・焔光院香澄さんです。

この作品、とにかく「謎」が多いのですが、その出し方がまた巧い。次から次へと謎が積み重なっていくにもかかわらず、全然混乱することなく読めるし、その謎同士が繋がっているにおいがプンプンして、進めば進むほどに興味がわいてきます。

そして、宴が操る美しい匡体、ハヌマーン。宴をヒーローたらしめている切り札なわけですが、どうもコイツが一筋縄ではいかない。何か重大な秘密がある様子。しかも、シータとセットになって、宴に禍をもたらすのではないか――そういう暗い雰囲気が漂っています。

作品自体が未完成で、それらが一体何だったのか、明かされることはついに無かったわけですが、そのことを補ってあまりある――あるいはその未消化の部分をも魅力にしてしまうほどの――迫ってくるような勢いを感じます。

文章が洗練されているかといわれれば、そんなことは無い。構成だって、先ほどは褒めたのに何だと思われそうですが、一流のプロと比べれば、そりゃあ粗が目立ちます。

けれど、この作品にはそういう技術的なことを超えた、何か熱い魂のようなものがある。少なくとも当時これを読んでいた多くの読者は、それを感じることができたのだと思います。

素敵な作品と出会ったとき、ワケもなく興奮して、あたりを歩き回ったり、叫びたくなったり、いてもたってもいられなくて、何だか身体を動かしたりものを握りしめたりしてしまう。そんな経験が、誰しも一度や二度はあるのではないでしょうか。滝川氏自身は、そういった経験を次のように述べておられました。
良質のお話を読んでいると、ときどき震えが来ることがあります。肋骨の内側から背中を通って脳髄のあたりまで、つめたいもんがピーンと疾るんですな。症状が凄いときには両腕にまで感染します。すっげえやあ、という感動の震えと、十年経っても追いつけないやあ、という悔しさの震えが背筋を何度も往復します。で、ベッドの中で一晩中、身悶えすることになるんですな。バカだから

このような感情に、理屈をつけようと思えばたぶん、つけることができるのでしょう。面白さはここにあるのだ、と鮮やかに分析してみせることができれば、多くの人にこの本の魅力が伝わるのでしょう。けれど、残念ながら私はそのような分析をする力も無いし、また滝川氏のように悔し涙を流しながら、何かを創作しようという意気込みを持つこともできない人間です。

ただ震えが来たところで喜んで止まってしまう私としては、だから、こうして拙いながらも「面白かったと思った」ことを書きつらねるしかない。それが私にできる表現であり、この作品に対する感想の、ひとつの形です。

もし興味を持たれた方がおられたら、是非何かの機会に読んでみて欲しい。もしかすると全然面白くないかもしれないけれど、ラノベ一冊ですから、コストは1000円ほどのお金と、2、3時間程度。うまくいけばそれで、もの凄く魅力的な物語の世界と出会うことができるかも知れません。

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アニメ:『黒獣 ~気高き聖女は白濁に染まる~ オリガ×クロエ 黒の城、崩落編』

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『黒獣 ~気高き聖女は白濁に染まる~ オリガ×クロエ 黒の城、崩落編』
レーベル:魔人
紹介ページ:こちら
原作:Liquid 『黒獣 ~気高き聖女は白濁に染まる~』

昨日購入したエロアニメ、『黒獣』が割と面白かったのでちょっとだけ紹介を。

登場人物、今回は魔軍を統べるダークエルフの女王オリガと、その側近の女騎士・クロエ。原作通り魔軍に対して人間が「七盾同盟」を結成し、主人公の傭兵団長ヴォルトがその前衛を務めるという展開。物語は、ヴォルトがオリガの居城を陥落させ、凌辱の限りを尽くすところからスタート。

魔人というレーベル、私は聞いたことが無かったのですが、パッケ絵が余りに良かったので衝動買いです。帰ってから検索してみると、げっちゅ屋さんやDMMさんの紹介には、こう書いてありました。
年間30本近くのハイクオリティー激エロアニメを世に放ってきたあの『株式会社エイ・ワン・シー』が、満を持して新レーベルを発足!その名も『魔人』!!

ほー、『淫妖蟲』とかをアニメ化してたところですよね、確か。普段エロアニメを買わないのであんまり知識が無いのです。最近は特にご無沙汰でしたし。ぶっちゃけ好きな作品を挙げろと言われると、『ロマンスは剣の輝き2』、『WORDS WORTH』、『魔法少女アイ』くらいしか思いつきません。あ、『残酷な魔法の天使シオン』も良かったかな……。まあ、片手で数えられる程度しか好きな作品が思いつかないくらいの素人。

そのせいで、演出とか手法とかにはとんと疎いのですが、本作はなかなか良くできてるなと思いました。まず、大事なことですが絵が綺麗。かなりクオリティ高いと思います。絵柄も好みだし。キャラデザのk.z.k.i.さんは良い仕事されますね。パッケ詐欺とかの作品も多いですが、本作についてはパッケより動いてる絵のほうが魅力的に感じました。

あと、これは好みにもよりますが、結構ストーリーテリングに力を入れています。一応、原作知らなくても何が起こったか解るように物語をちゃんと挟んでいる。問題は、それがエロシーンの合間というかエロいことしながらバックグラウンドでナレーション流したりしていたので、エロアニメとしてはどうなのよ? という気がしますが、作品としての完成度みたいなところには結構気をつかっているのが伝わってきました。

延々同じシーンをくり返して丈を稼ぐようなことはせず、視点をこまめに入れ替えたり、カットインで工夫をしていたのも個人的には良かったですね。とくにクロエがガンガンやられている間、牢にいるオリガの脳にその映像が流されているシーンなどは、キャラの入れ替えを自然に繋ぎつつ、お互いの立場と心理を描く、地味ながらも巧い演出だったと思います。

ただ、何というかどぎもを抜かれたのが、射精シーン。クロエがオークに犯られまくった後、オークどもが白濁液をぶっ放すのですが、この場面で、精液が爆発しました

  |l、{   j} /,,ィ//|     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ     | あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ
  |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |     < 「精液が爆発した」
  fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人.    | 何を言ってるのかわからねーと思うが
 ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ   | おれも何があったかわからなかった
  ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉.   | 頭がどうにかなりそうだった…
   ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ. │ 恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
  /:::丶'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ \____________________

なんか、汁気が多いとか、そういうレベルじゃなかったです。爆発しました。ボンって。

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爆発シーン。生クリームみたい。アップシーンでよく見ると、ちゃんと鼻からも出ています。

オーク種族ならではの演出かとも思ったのですが、後半、オリガさんがヴォルトにやられる場面でも、同じように爆発しました。むしろこっちのほうが大爆発(ビッグバン)。スタッフロールで確認をしたところ、演出は白濁王子さんだったようで、なるほど、芸術は爆発ならぬ、白濁は爆発だというわけかと妙に納得してしまいました。

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超新星爆発をカメラに収めた映像。周辺に少し汁が飛び散っています。

果たしてマジ演出なのか、それとも大笑いするシーンだったのか、いまだに判断がつかないのですが、基本的にダークな話で映像も綺麗なのに、これは予想外。なんかエロさとかいろんなものが一気に吹き飛んで、とにかく笑っているうちに、第一話は終了。

真面目にHシーンについて触れると、クロエが無茶苦茶にされるというのは結構丁寧に描かれているんですが、いかんせんシーンがほぼ1シーン(長いけど)なので、やや単調。ヴォルトとの交わりも無いし、凌辱が終わるとあっという間に堕ちて淫乱になっていたのもどうかと思います。

オリガのほうも、クロエとの精神的・肉体的な絡みがほとんど無く、原作ではかなりの抵抗をみせた「子宮の封印」が、ヴォルトの側近・キーンの魔術であっさりと攻略されたのは残念。第一話ということで展開にこだわるなら、スピードを遅くしてもいいからもう少し精神的な描写に力をいれてほしかったし、その辺をすっ飛ばして映像的なエロさを求めるなら、もっとシチュエーションを増やしてほしかったと思います。なんかどちらも中途半端で、結局精液がぼーんといくシーンが一番目立ったという(笑)。

ただ、全体としての質は悪くなかったし(個人的にはちょっとクロエの普段の台詞がいまいちだったんですが、エロシーンは上手でした)、次回以降も期待したいですね。Liquidさんの作品の中では、『魔将の贄』シリーズをアニメ化してほしいなと思いますが、こちらも見どころが多そうです。

魔人ブランドさんは、『euphoria』のアニメ化もしておられるようで、そちらもちょっと興味が出てきました。そういえば、原作版だとオリガの声は葵時緒さん。『黒獣』、『euphoria』ともに、ライターのお一人が和泉万夜さんということもあり、このまま行けば接点が多い『無限煉姦』のアニメ化もあったりするのかなーと、ひそかに期待しています。

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書評:『〈卵王子〉カイルロッドの苦難』

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冴木忍『〈卵王子〉カイルロッドの苦難』シリーズ
(1992年~ 富士見ファンタジア文庫 全9巻 イラスト:田中久仁彦)

▼イントロ
私は最古参ではないにしろ、そこそこ古い時代からライトノベルを読んでいる世代だと思います。『ロードス島戦記』の流行がありましたし、中学・高校くらいの時に『スレイヤーズ』や『魔術師オーフェン』が爆発的に流行って、ラノベブーム(そういう名前はありませんでしたが)がおきました。

ファンタジーに憧れる青少年の大きな受け皿となっていたのが、富士見ファンタジア文庫。角川スニーカー文庫と勢力を二分する業界の雄。スニーカーにくらべて分厚い本が多く、コアユーザー向けのファンタジーをたくさん出していました。今ではファンタジー自体が敬遠され気味となり(実際、学園恋愛ものなどに比べて極端に売り上げが低いそうです。いまの「ラノベ」の傾向を見ると、確かにファンタジーは少ないし打ち切り率も高いですね)、レーベル自体がすっかり微妙なポジションというか、新人賞の賞金が高いだけみたいなイメージになってしまいましたが、当時は素晴らしい作品が次々と刊行され、私たちは楽しみに本屋に通ったものでした。

そんなファンタジーの全盛期、一部の熱狂的なファンがついた作家さんがいます。それが、今回紹介する『カイルロッド』シリーズの作者である冴木忍さん。「スレイヤーズ」や「オーフェン」をはじめ、当時人気のあった作家さんにはたとえば、あかほりさとるさんなどもいらっしゃいました。基本的に明るく楽しく主人公が活躍するタイプの作品が流行る中、冴木さんは「不幸な主人公」が毎度出てくるという、時代に逆行した作品を書いておられました。

それゆえ、時代の主流にはなりきれなかった感があるのですが、明るいファンタジーに満足しきれなかった層が強く惹かれることが多かったのでしょう。とにかく根強いファンを獲得して行きます。長期連載となった『風の歌、星の道』、後半竹井正樹氏によるイラストで注目を集めた『メルヴィ&カシム』など数多くの名作があるのですが、何と言っても有名なのは『カイルロッドの苦難』シリーズでしょう。田中久仁彦さんのすばらしいイラストも手伝って、当時の作品群では屈指の人気を誇った、本格ファンタジー。

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田中氏のイラスト。綺麗です。

オーフェンも、スレイヤーズも読んだ。でも、好きなのはカイルロッド――。そんな声も決して少なくはなく、私の周囲では爆発的な感染力を発揮して学年の垣根を越え、中学全体に及ぶ一大ブームを巻き起こしました。私自身も、読んで20年近くを経てなお、一番好きなファンタジー小説といえば、迷うことなくこの作品を挙げます。

それは思い出補正かもしれない。また、今主流の「ラノベ」を好む人からすれば、求めているものが違いすぎて物足りなく思うかもしれません。ただ、私は今のラノベも楽しくて、「はがない」や「俺妹」を読んでブヒブヒ言ってるシアワセな人間ですが、それでも『カイルロッド』は読み返すたびにいいなぁと思えます。今回は、そんな『カイルロッド』の紹介です。

▼あらすじ
カイルロッドは、城塞都市ルナンの王子。母親から卵で生まれたと言われる彼は、〈卵王子〉と呼ばれていた。母は出産時のショックで死亡。しかし、父王サイードと、周囲の人びとの愛情に包まれ、カイルロッドは心優しい青年に育っていった。そんな彼の悩みは、生まれ故に「嫁が来ない」こと。いい年になったのにいまだに結婚相手が決まらない。その日も、婚約者に逃げられたカイルロッドは酔いつぶれるまで酒を飲んでいた。ところが翌朝目覚めると、父も含めたルナンの人びとが石となっていたのだった。恐らくは、魔道士ムルトの仕業であると推測したカイルロッドは、たまたま石になっていなかった酒場の少女・ミランシャと共に、ルナンを救うため旅に出るのだった。

▼紹介
さて、ベタベタのギャグファンタジーのような始まりですが、段々とシリアスモードに入り、三巻で一度炸裂します。ギャグ話のつもりで読んでいた多くの読者は、度肝を抜かれるはめに。詳しくは触れませんが、本作の山場は三巻、六巻、九巻にそれぞれ訪れるので、読み始めたらとりあえず三巻まで、できれば六巻までは読んでみて欲しいところ。担当編集者の心をもボッキリ折ったという、美しくも悲しい物語が待っておりますぞ。

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最初の山場を向かえる三巻。カイルロッドの腕にだかれた幼女パメラは、私の最大のお気に入りキャラです。

本作には何人か、カイルロッドたちと対立する「敵」が出てきます。ただ、彼らは単純には「悪」ではない。この辺は、当時流行っていた「悪には悪の論理がある」、「正義の反対は別の正義」みたいな善悪相対化の影響を色濃く受けているようにも見えます。ただ、そんな時代背景的なものを解釈したって作品の魅力とは何の関係もないわけで、問題はその相対化が、作品の中でどういう役割を果たしているか、というところにあります。

では、その役割とは何か。あるいは、「敵」たちがそのように描かれていることの意味は、何か。それは恐らく、人間のどうしようもなさがそこに表れている、ということではないかと思います。この「どうしようもなさ」というのは、とても広い意味で。

この作品の基調となるモチーフは、人間の悲しみです。もう少し違う言い方をすれば、「人間とは悲しい存在である」ということを描こうとしている。人間には、理屈ではわかっていても抑えられない想いが溢れるときがあります。エロゲーだと主に「恋愛」が典型ですが、人が抱くのはそういう美しい感情ばかりではない。嫉妬や憎しみや絶望も、どうしようもない感情として人が引き受けなければならないものです。この作品は、そちら側をクローズアップしていく。

1992年という時代柄もあって、本作には割とポピュラーな小説の手法がとられています。いわゆる、主人公と読者を一体化させ、物語に感情移入させ、興奮と満足を与えるという手法。いまのライトノベルは、西尾維新さんなどを筆頭に、メタ的というか作品と読者との距離を敢えてつくってその距離感で演出する作品が増えたので、もしかすると今の読者層にはちょっとあわないかもしれませんね。

ともあれそんなわけですから、作中人物にとって許し難いことというのが、読者にとっても許し難いことと一致していくような作品なわけです。ということは裏返せば、読者が本気でショックをうけたり怒ったりするようなことが描かれなければ、作品としての説得力が欠ける。そして本作は、かなりの程度そのあたりをやってのけます。だから、「敵」に対してかなり激しい感情を抱くことになります。

そんな「敵」の中には、完全にダークサイドに堕ちて同情の余地など一切感じられない奴もいれば、人間らしい心を失っておらず共感せずにはいられないような人物もいます。けれど、彼らの行為が納得できるかできないかは、この際問題ではありません。肝心なのは、その辺に転がっている作品のように、中途半端な偽善が入り込む余地が本作には無いということ。

「敵」たちはとても些細なことをきっかけに、けれど決して他には選べなかったであろう選択肢をたどりながら、必然の結果として「敵」になってしまっています。人が生まれる時代や場所を選べないように、彼らはたまたまそう在るしかなかったのです。それが、ひどく醜くい在り方であったとしても。だからこそ、私たち読者は激しい感情のやり場を、ある意味で失ってしまう。怒りを向ける対象は、「敵」自体ではなく、「敵」をそのようにした運命に向けるしかないのですが、でもそれは余りにも不毛な怒りです。そしてその不毛さこそ、人間の抱える根源的な「悲しみ」であり、本作が描いているものだと思われるのです。

だからこそ、なのでしょう。この物語は最初から一貫して問い続けるのです。そうした「醜さ」から離れた王子――〈卵〉から生まれたといわれるカイルロッドは、果たして人間なのか、と。そして終盤の怒濤の展開の中で「悲しい」人間がどうやって生きていけば良いのか、あるいは本当に人間はただ「悲しい」だけの存在なのか、と改めて問い直していきます。

これは、冴木さんが意図したものかどうかは解りませんが、少なくとも私には、そんな風にしか読めませんでした。六巻で訪れる本作最大の山場の後、カイルロッドを奮い起こし、「敵」へと立ち向かわせたものが何だったか。それが、悲しいだけの人間に残された、最後の、けれど最も強い力です。悲しみと苦しみと絶望の果てに、それでも残った希望を手に立ち上がる。それが、今の私なりのこの作品に対する解釈です。

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今更ですが、タイトルも良いなと思います。物語を想像したくなるタイトルですね。

最後に時代考証的なことを少しだけ。Amazonのレビューに、「まだ豊かさが当たり前な時代、「悲劇を買ってでも読みたかった」頃のライトノベル」という評がありましたが、さすがにこれは(書かれた方がまさかうちのブログなぞ読まれないと信じてちょっと強気で言いますが)色々ハズしすぎているでしょう。

92年といえば、バブル崩壊が既に実感されはじめていた時期。データ的にバブルが崩壊したと言われる89年には、岩波新書からかの有名な『豊かさとは何か』という本が発売されていました。ですから事実としては、「悲劇を買ってでも読みたかった」のとむしろ逆で、豊かさが当たり前でなくなりつつあり、経済成長や贅沢といった単純な指標でものごとを量ることに懐疑的な時代が始まっていたのだと思います。先ほど述べた、「悪には悪なりの理屈」という話が勢いよく増えだしたのも、(いい加減な推測ですが)このくらいの頃からだったのかな、とか。

価値の揺らぎをうけて、一方では勇者や英雄のように、強い価値観をそのまますんなりと表現できる造形がもてはやされました。ただ『カイルロッド』はその路線にはのらず、価値の崩壊を受けいれたうえでどう進むか、ということに向き合う方向に向かった。それが時代のある雰囲気を共有していた層に、ぴったりと当てはまったのではないでしょうか。ここに描かれている人間の「悲劇」は、上から見て楽しめるものではなくて、その「どうしようもなさ」にどこかで共感できなければ受け容れられない類のものに思われるからです。

最後まで書き上げてはみたものの、ネタバレないままではなかなか踏み込んだ話ができませんでした(笑)。文章も乱れ気味で反省しきり。

しかし、この作品については、絶対ネタバレを見たら後悔します。読もうかと考えている方は、何が何でもネタバレだけは回避推奨。古典的名作のようになってしまいましたが、個人的には今でも通じると思っているので、未読の方は是非一度、試してみて欲しいなあと思います。それで実際どうだったかとか、聞かせて頂けると更にありがたい。もし微妙なようならさっさとやめないと、若い人に「カイルロッド良いよ」って勧めるウザい勘違いオッサンになってしまいますゆえ。

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レビュー:『淫薬依存学園』

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タイトル:『淫薬依存学園』(トルピード/2012年1月20日)
原画:あきのしん/シナリオ:水澄順
公式:http://www.torpedo-game.com/trp_004.html
批評空間レビュー投稿:済→ネタバレ無
定価:2500円
評価:D(A~E)

批評空間様への感想を投稿しております。詳しい内容に興味がある方は、上記リンクから拙文をお読みください。こちらでは主に、難解な攻略手順等の話をします。

さて、本作最大のネックは攻略でした。とにかくめんどくさい。純粋なボリュームだけで言ったら一時間ちょいで(運動しなければ)終わりそうなのですが、調教パートの投薬システムのお陰で、異様に手間取るはめになりました。これ、BADエンドばっかり見た人いっぱいいるんじゃないかなあ。

簡単に説明しておくと、調教シーンでは使う薬が3種類と、その「投与量」の選択があります。たとえば、「麻痺型ステロイドS」を「約50%」のように棒グラフをいじって決定します。更に、各調教ごとに「感度増強剤Z」を注入するかどうかの選択があります。この辺は体験版で実際にやれるので、気になる人はやってみてください。

調教は途中ゲームオーバーにならなければ4回あるので、薬の投与だけでも3の4乗で……81通りですか?パーセンテージや増強剤の使用も含めると、気が遠くなるような試行が求められるわけです。

が、実際にはもうすこし気が楽で、投薬量はだいたい「0~30%」、「30~60%」、「60%以上」の三つで判定がわかれています。それぞれ、Hシーンでのセリフがマイナーチェンジするので、スキップでもしていない限りすぐに分かるでしょうか。

淫薬グラフ
調整はこのグラフで。目分量です。

「感度増強剤Z」のほうは3回打つとBAD直行、打たなすぎてもBAD。用法・用量を守ってお使いください。回想シーンで増強剤を打ったときのHシーンは回収できるので、本編で無理に打たなくても大丈夫です。打つ場面は気楽に選んで問題なし。あとは、一種類の薬で徹底的に調教することでBADを回避できる、ということが分かっていれば、クリアできるはず。

作中のセリフがヒントになっていたりしたので、推理やパズル的な面白さが無かったとは言わないのですが、投薬量はボーダーラインで色分けするとか、せめてもう少し分かりやすく選べる工夫が欲しかったところです。レビューのほうにも書きましたが、まとめると大体以下の3点にご注意ください、ということで。
(1)感度増強剤Zは、三回使うとBAD直行。使わなくても調教不足でBAD逝き。
(2)使う薬の種類は統一しないとBAD。
(3)投薬量はだいたい、0~30%、30~60%、60~100%の三パターンで分岐。それぞれHシーンがマイナーチェンジ。投薬が少ないとBAD。

もっとぶっちゃけて書けば、MAX投薬x4、増強剤Zは2回使うで、各薬品ごとの完堕ちEDが見られます。(見えにくくしてあります。文字を反転させてご覧ください)

ともあれ、なんか結構盛り上がっちゃったので感想書きましたが、落ち着いて考えるとあんまり胸張って薦められるような内容じゃなかったかなー。まあ、たまにはこんなのもアリですよね、……ね?

ちなみに、手書きで下書きして推敲の後に投稿したので、今まで投稿したレビューの中でも比較的文章が整っているんじゃないかと思います。内容的に誰も気にしないと思いますが……。

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魔法使いの夜の軌跡

エロゲーではないのですが、TYPE MOONさんの『魔法使いの夜』のコマーシャルが活溌になってきました。しばらく前から、体験版も公開されていますね。公式サイトよりダウンロード可能。

発売予定日は昨年末に決定された通り、2012年4月12日のまま。2013年に変更されてるんじゃないかと思って何度も確かめましたので、間違いありません。秋葉原のソフマップ前でもムービーがガンガン流されており、早くも(というか、ようやくと言うべきでしょうか)今年の目玉の一つとして、期待度が上がっているように思われます。

ご存じないかたは余りおられないかもしれませんが、一応説明しておくと、『魔法使いの夜』はこれまで何度も発売延期を繰り返してきた作品。製作が発表されたのが、2008年の4月4日。当初の発売予定は「2009年初頭」だったのですが、それが延びてのびて、とうとう2012年の4月となったわけです。まる4年経ったことになりますね。こちらのページ(「春が大好きっ」様。リンクフリー)で、当時の流れが詳しく分かります。

幸い、昨年冬のアニメ「Fate/Zero」も大ヒットし、ブランドへの興味・感心もアップしているはず。一般向け作品であるということも追い風になるのではないでしょうか。

このまま順調に発売されてくれたら良いな、とは思うものの、体験版のボリュームはやや少なめで、ちょっと心配。それでも、具体的な内容が明らかになったぶん、これまでよりは希望をもっています。今年の4月ということは、エウシュリーの新作「創刻のアテリアル」と時期が重なるだけに、嬉しい悲鳴があがりそう。「まほ夜」のほうが2週間以上早いので、その間に終わらせて、返す刀でエウに行ければ理想的なのですが、果たしてどうなることやら……。

何はともあれ、クオリティはかなり高そう。楽しみに待たせて頂きましょう。

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《自己紹介》

エロゲーマーです。「ErogameScape -エロゲー批評空間-」様でレビューを投稿中。新着レビューのページは以下。
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